京都の現役大学生たちが、様々な世界で活躍する職人さん達へのインタビューをまとめた「想いのしおり」(1000円)を創刊しました。念珠職人、陶芸家、金箔職人、西陣織、竹屋さん、畳屋さんなど総勢16名が登場します。

不器用な私なんかと、最も縁遠い所にいる職人さんたちの話は、どれも興味津々でした。「引彫」、「染匠」、「綴織」など、どんな仕事をするのか知らない世界に生きる人たちの、日常を垣間みることができました。

また「職人」=「堅苦しい」というイメーですが、そんな常識に違和感を唱える念珠職人。片岡正光さんは、どちらかと言えば、オープンに楽しくやりたいというスタンスです。

「一生懸命仕事しながら楽しく仕事したいと思っています。話していて『えっ、職人さんですか?こんな仕事しているんですか、嘘でしょ?本当に職人さんですか?」と言われるほうがいいと。職人さんが無口だというのは、こちらの思い込みですよね。

また、初心者のために技術説明という項目も設置してあって、助かります。例えば、引彫職人の伊藤肇さんのコーナーでは、「私の工場では、昔は突彫(つきぼり)をやっていました。でも、今は、引彫(ひきぼり)をやっています。引彫は、ビニールを敷いた上に地紙を置き、手前に向かって掘ってゆく方法です」と伊藤さんは説明されています。

そして「技術説明」コーナーでは「和紙を柿渋で貼り合わせた『地紙』と呼ばれる紙に様々な図柄を彫刻し、布地の染色に使われるのが型紙。江戸小紋や型友禅につかわれてきた。」とフォローしてあります。

この本はインタビューの読みやすさもさることながら、職人さんたちの現場を捉えた写真がいいです。彼らの生命線でもある手先の表情が上手く捉えられています。華やかさはないですが、当たり障りのない京都紹介本よりは、はるかに優れた雑誌です。

因みの個人的にベストショットは「戸田畳店」店主戸田和雄さんが畳を縫うところを捉えた一枚です。あ、職人さんの躰だ!という写真です。

 

当店には、様々なDMを置くスペースがあります。その中にはフリーペーパーも結構あって、中には、え?これタダ!?と思われるものも少なく有ありません。

以前にもご紹介した、岐阜県高山市の飛騨産業(株)が出している「飛騨」は、最新16号が入ってきましたが、残り僅かになりました。

京都からは、「想いのしおり」が、がんばっていて、11号まで出ています。こちらは、「京都の伝統産業に携わる職人さんの思いを発信し、紡いでゆく」ことを目的に、月1回の職人さんへのインタビュー記事が中心に発行です。今回取り上げられているのは、漆の上塗師三代目西村圭功さん。主に茶道具の仕事をされているのですが、最近では、一般家庭用食器のブランドを立ち上げられています。10号のインタビューは、老舗のカバン、袋物メーカー「一澤三郎帆布」の製作部長、北川信一さんでしたが、元々料理人として働いていたという変わり種です。様々な分野で活躍する人々の働き方を知る、という意味でこの小冊子は貴重です。5号からのバックナンバーは揃っています。

最近、高知県の牧野植物園の発行する「まきの手帖」が入りました。牧野富太郎の業績を顕彰するために、1958年に開業した植物園が発行する小冊子です。牧野の「植物一日一題」、「植物記」(どちらもちくま学芸文庫950円)は、当店でも人気がありますが、この小冊子で、彼の描いた素描を楽しむことができます。彼の著作「牧野式植物図」の下絵として描かれたものや、フィールドワーク先で書いた記録が載っています。ところで、この冊子の表紙で、絵の上に並んでいる鉛筆は、牧野博士がスケッチに使用していたものなのでしょうか? 気になります。

毎回、ユニークなアプローチで、本好きの好奇心を盛り上げている「BOOKMARK」も、最新6号がきました。今回の特集は「明日が語る今日の世界」です。タイトルから分かる通り、未来を描いた作品を集めてあります。カズオ・イシグロ「わたしを離さないで」、映画化されたアンディ・ウィアー「火星の人」、やはり映画化されたティムール・ブェルメシュの「帰ってきたヒトラー」等々、個性的な作品が並びます。

スペシャルゲストとして星野智幸が登場して、SF小説は政治を描いていると言い切っています。つまり、どんな突拍子もない世界を描いても、何らかの事情で、個人が公の権力に振り回されるのがパターンになっていて、「今、私たちが生きている現実を、誇張したりグロテスクにしたりして反映させている。だから、どんなに突飛な世界に見えても、リアルな感じがするのだ。」と。

いずれもパワーのある面白い小冊子です。私もこんなもの製作しているという方おられましたら、お持ちいただくか、或はお送りいただければ、また店頭に設置しますよ。そういえば、「たまひろい」という横浜ベイスターズのフリーペーパーを何回か持って来てくれた彼女は、シーズンオフかな?