村上春樹の本の装幀を担当したイラストレーター、佐々木マキ、大橋歩、和田誠、安西水丸の作品を集めた文庫本サイズの「村上春樹とイラストレーター」(新刊書・ナナロク社1944円)が入荷しました。

「ここに取り上げるイラストレーションは、単に文章や物語を後から追いかけて説明しているものではなく、絵そのものが物語るひとつの世界を有しながら、文章と分ちがたく響き合ってひとつのイメージをつくりあげていることがわかります」

と、書かれていますが、ほんとに絵と文章がセッションしている感じです。私が、最も春樹を真剣に読んでいた頃の「風の歌を聴け」「1973年のピンボール」「羊をめぐる冒険」などの佐々木マキが担当した挿画は、全く新しい感性で、春樹の文章と共に、ロマンチックで、センチメンタルで、しかもアイロニーに満ちた世界へと連れて行ってくれました。

そして和田誠。「ポートレイト・イン・ジャズ」を初めて読んだ、いや眺めた時、この作家の心にジャズの香りが一杯染み込んでいるのがわかりました。和田は、春樹の文章を引用してこう書いています。

「そもそも、音楽を聴くというのは文章を書くにもいいことなんですよ。要素は大体同じですから。リズム、ハーモニー、トーン。にプラスしてインプロヴィゼーション。(中略)いい音楽を聴くように、文章を書けばいいんだという発想。これが僕の基本だったの。」

この頃は、小説こそ追っかけなくなりましたが、春樹の音楽本だけは、すぐに買ってしまいます。

最後に登場するのは、安西水丸です。春樹の「中国行きのスロウボート」の表紙で安西が描いたブルーの青さに魅かれて買ってしまったことを思いだしました。巻末には安西と和田の対談も掲載されていて、二人が春樹の魅力を語ってくれます。

資料として「村上春樹とイラストレーター略年譜」が載っています。見ていると、79年、「風の歌を聴け」で群像新人文学賞を受賞して単行本が発売された年に、自らが経営するジャズ・バー「ピーターキャット」で、春樹と安西は出会ってます。長い付き合いの始まりは、この場所だったのですね。