子供の本専門店メリーゴーランド京都の店長鈴木潤さんの、二冊目の著書が出ました。「物語を売る小さな本屋の物語」(晶文社/新刊1815円)です。

「私が生まれた四日市の少し郊外の松本という町にメリーゴーランドができたのが1976年。私が4歳の頃のことだ。当時周りは田んぼだらけでそこにポツンと三階建てのビルが建った。その一階が子ども本専門店メリーゴーランドだった。」

彼女はこの店に入り浸りになり、絵本や児童文学の世界にはまっていきます。そして青春時代、世界を見たいという欲求に動かされていきます。当時、憧れの存在だった筑紫哲也(高校生にしては渋い趣味)がポスターに出ていたピースボートを見た瞬間、東京へ飛び出します。広い世界を見て、今度は就職活動もせずにアメリカへと旅立っていきます。絵本好きの少女は、ストレートに絵本専門店で働き出したのではないのです。この、彼女の疾風怒濤の時代が本の前半に描かれています。

動き出したら一気にいくという資質は、この時代にできたものなのか、先天的に当たって砕けろ精神があったのかは知りませんが、その後の絵本屋人生で大きな力となっていきます。

1996年、彼女は四日市のメリーゴーランドでアルバイトとして働き出します。私が、ここを立ち上げた増田社長の声を初めて聞いた時、どこのヤクザや?と思ったほどドスのある声でした。とても、絵本専門店の社長には見えませんでした。個性的な社長と鈴木さんが、お互いの言い分をぶつけて喧嘩をしながら、絵本書店の運営の面白さにのめり込んでいきます。この二人のやり取りが方々に出てきますが、似た者同士のように思います。

「ある日増田さんが『京都に店出すぞ。潤、京都に行くやろ」と言い出しました。」

そして、京都へ。物件探し、住まい探し、開店準備と慌ただしく時間は過ぎていきます。後半は、京都出店までのスリルに満ちた日々、そして結婚、出産を通じて彼女が考えていることが綴られています。

「ムーミンママの『誰だって秘密の一つや二つ持つ権利があるものよ』というセリフは本当にその通りだと思う。子どもだからといって何でもかんでも親に話す必要なんてないのだ。私は子供が秘密を持ったとき、そのことをそれとなく感じながら見守れたらいいなと思っている。秘密が人を成長させることだってあると思うから。」

二人目の男の子を出産して、子どもを抱きかかえて店に出ておられた時の彼女の姿を覚えています。鈴木さんとは、当店の開店以来仲良くさせてもらっています。

「本が『さあ、面白いから手に取って』と本棚を眺める人たち語りかけてくるような場所でありたい」と本書で書かれていますが、メリーゴーランドはいつ行ってもそんな場所になっていると、私は思っています。