トラピスチヌ修道院は、函館市郊外にあるトラピスト会系の女子修道院「天使の聖母トラピスチヌ修道院」の通称で、通称天使園とも呼ばれる日本最初の女子修道院です。

この修道院は周囲を高い堀で囲っていて、家族であっても立ち入りは許されません。中では、厳しい戒律を守りながら、隠遁修道生活が営まれています。

この修道院の設立100年を迎えるに当たって記念の写真集を発行することになりました。それが、野呂希一の写真集「天使の聖母 トラピスチヌ修道院」(菁菁社1400円)です。修道院の写真集?と思われるかもしれませんが、素敵な写真集です。

農作業をする修道女達の背後に広がる夏の青空、緑色の畑の眩しさ、稲作業を包み込むような冬の陽射し、修道院の中に射し込む柔らかい光、朝の祈りの後、廊下を静かに進む修道女達の清らかさ、等々心休まる作品が次々と登場します。図書室や、個室で一心に読書に励む彼女たちの後ろ姿には、「学ぶ」という事のプリミティブな姿が捉えられている気がします。

写真家が修道院の内部撮影をすることになったきっかけは、あるシスターが、野呂希一の作品集「WOODS」に共感し、自分たちの考えが「WOODS」の視点と共通するということでした。そして、「生命の織物」というコピーを野呂さんに渡されたことで、お互いを理解できたのです。

それは、1854年、アメリカの先住民達の土地を時の大統領が買い上げたいという申し出に対して、ネイティブアメリカンの首長が大統領に送った手紙でした。

「我々の住む土地も空気も聖なるもの。それらは人間の所有物ではなく、人間も大地の一部で、大地は自分自身、あらゆるものはつながっていて、人間が生命の織物を織ったものではなく、織物の中の一本の糸にすぎないのに、それをどうして売買などできようか」

というもので、「環境問題の旧約聖書」と呼ばれています。

この修道院では、自然のうちに生かされていることを最も大事に考えています。だからなのでしょうか、この写真集は、野外で自然とともに生き、働く姿が数多く収められています。所有しないことの美しさ、働くことの喜び、移り行く自然の姿が崇高に、見事に捉えられています。

蛇足ながらここで作っているクッキーが美味しくてお土産として人気とか。函館で買えるのかなあ?