ジョージアという国が何処にあるかご存知だろうか。古くはグルジアと呼ばれた国です。あぁ〜、旧ソビエト連邦の国か、ぐらいはわかるでしょうか。

コーカサス山脈の南麓、黒海の東岸に位置し、北側にロシア、南側にトルコ、アルメニア、アゼルバイジャンと隣接しています。昔から多種多様な民族が行き来する交通の要衝であり、幾たびも他民族支配にさらされてきた土地でありながら、キリスト教文化を守ってきた国です。2015年「在外公館名称を変更する為の法案」成立以降、ジョージアと表記されています。

グルジアの映画といえば、ギオルギ・シェンゲラヤ監督「放浪の画家ピロスマニ」(1987)ですが、今回、この国を代表するテンギス・アブラゼ監督の「祈り三部作」の、「祈り」「希望の樹」「懺悔」が順次公開されることになりました。先日、第一作目日本初公開「祈り」(1967年)を観に行きました。90分足らずの白黒スタンダード作品でしたが、感想は?と言うと、さっぱりわからんが、とても面白い。

19世紀ジョージアの国民的作家V・ブシャベラの叙事詩をベースにして、ジョージア北東部の山岳地帯に住むキリスト教徒とイスラム教徒の因縁の対決を描いているらしいのですが、そうなの、そうだったの?と頭の中がグラグラしたまま劇場を出ました。「パンフレットはすべて売切れです」という劇場係員の声が肩越しに聞こえてきました。見終わった他の方々も、わからんからパンフ読んで勉強しようと思われたのか。

しかし、「わからん』=「つまらん』にならない、そして最後まで画面から目を離させない力を持っているところが凄い映画です。例えば、キューブリックの古典的名作「2001年宇宙への旅」を初めてみた時に感じた、何だかよくわからんが凄い!という映像の圧倒的な迫力に近いものがあります。もちろん、白黒スタンダードサイズの画面で、おそらく撮影機材もハリウッドが持っているような最新式のものではなかったはずですから、「2001年」と同じというわけにはいきません。しかし、雪の彼方に消えてゆく家族を延々捉えていたシーンや、峻厳な山を登ってくる人々の黒いシルエットを捉えたシーン、朽ちかけた墓石が乱立する墓場等々、映像の力に釘付けになります。物語を追いかけてゆく映画ではありません。叙事詩をシンボリックに映像化したとでも言ったら良いでしょうか。黒いベールをかぶった女性が、深い闇の中で、マッチに火をつけるシーンの神秘的な美しさ、その光の奥の闇に吸い込まれていきそうになりました。

日本的でも、ハリウッド的でも、ヨーロッパ的でもない映画に接して、頭の中をフレッシュアップするのも良いものです。