こんな小さな店にも関わらず、新刊出版社の営業の方々が自社の本の営業にお越しになります。その中に、地元京都の出版社の法蔵館があります。ある日の新刊案内を見てびっくり。えっ?競馬の本??オタクは、仏教書、歴史書の出版社ですよね??

で、出来上がってきた本が「競馬にみる日本文化」(新刊2200円)でした。著者は石川肇。「競馬ってギャンブル」という固定観念を打破すべく、「文学の力を最大限に活かして行なっている。」と著者は書いています。

目次を見ると、舟橋聖一に始まり、吉屋信子、北杜夫、岡本太郎、寺山修司、水木しげる、遠藤周作、織田作之助、赤塚不二夫、沢木光太郎といった面々が並んでいます。ここに登場する皆さん、何らかで競馬に関係しています。

舟橋は、競馬小説の先駆者であり、東京馬主協会理事を務めるほどの競馬好きでもありましたし、吉屋信子も馬主文士として知られていました。北杜夫は、晩年兄の娘でエッセイストの斎藤由香に「もう女の人にももてないし、強いお酒も飲めないなら、人生最後のギャンブル人生というのも悪くないんじゃない」とそそのかされて、競馬場に向かっています。これは彼の「マンボウ 最後の大バクチ」で読むことができます。

岡本太郎が描いたエッセイ「競馬の想い出」の挿し絵について、「馬や騎手が多分こんな気持ちで走っているのだろうと、素人ながら想像したのを戯画化したものです」と書かれてます。この絵がユーモラスで、馬同士が競り合っている感じも出ていて、思わぬ拾い物をしたという感じです。

私が、この本で思わず一所懸命読んだのは、沢木耕太郎の「馬のルポルタージュ」についてです。昭和47年の菊花賞と、有馬記念の優勝馬イシノヒカルについて沢木が「敗れざる者たち」で書いているのです。沢木が競馬のルポを?この本は前に読んでいるのに覚えていませんでした。さらに、昭和59年に出た「バーボン・ストリート」でも、イシノヒカルについて言及していたのです。もちろん、この本も読みましが、これまた記憶にありません。もう一度読んでみようと読書欲をそそられました。

余談ながら、この章で沢木耕太郎原作「深夜特急」に主演した大沢たかおについて、鋭い指摘がされていて、この役者に対するイメージがぐんと上がりました。

とにかく、面白い文壇の話がいっぱいの一冊です。