政治家の名前は、オードリー・タン。35歳という史上最年少の若さで台湾のデジタル担当大臣に就任した天才です。でも、それ以上に、2020年台湾の新型コロナ対策で、自国の薬局などで販売されているマスク在庫がリアルタイムで確認できるアプリを導入し、瞬く間に全国民にマスクを配布したことで有名です。

そのオードリーがインタビューの形で、若い世代に向けて、これからの社会に通用する考え方を書いたのが「自由への手紙」(講談社/新刊1540円)です。本書は「格差から自由になる」「不安から自由になる」「ジェンダーから自由になる」「デフォルトから自由になる」「仕事から自由になる」という4章からなっています。各章ごとに、具体的な対応、考え方が述べられています。一読して、この人の頭の柔らかさには脱帽します。そして、キャパシティーの広さに驚かされます。

こんな文章があります。「私には、思春期が2回ありました。」どういうことか?

「2度目の思春期は、24歳のとき。ホルモン剤を服用し、女性として思春期入りすることを自分で決めた時で、それは2年ほど続きました。

こうして2回目の思春期を経験したのち、『男か女か』という二者択一的な考え方が、私の中から消えました。」

この人物がコロナ対策を仕切るのです。台湾における感染予防対策の成功要因を問われた時に、オードリーはこう答えています。

「速やかに、オープンに、公平に楽しくやることが大切です。」

「楽しく」??つまりこういうことです。全国民にマスクを配布した時、白色のマスクが不足して、ピンク色のマスクを配りました。それを付けて登校すれば、ピンクのマスクでは学校でいじめられると男の子の親から連絡がありました。その時に、オードリーが取った政策は、というと、担当各部署の官僚や政治家がTVに出るときは、全員ピンクのマスク着用に切り替えたのです。大臣以下全員ピンクのマスクで登場したので、全くいじめられることなく、クラスで一番クールな少年へとなったのです。

これ、日本でできます? そんな事を提案する官僚もいなければ、OKと即断する大臣もいないでしょう。過去から続いてきた、あるいはお上が決めた「正しさ」なんかに合わす必要など全くない、というオードリーの哲学が、随所に出てきます。オードリーの速射砲的な実行力もさることながら、その施策を実現させる台湾政界の柔軟さを羨ましく思いました。

思春期を二回体験した人物を政策のトップに据えるなんて、頭の枯れたジイさんが集まっている国では想像さえできませんね。