先日、格差を描いた映画「パラサイト」のことを書きました。今、格差の問題は韓国だけでなく、中国、アメリカ、日本でも大きな問題です。 EUを離脱した英国も、それは一緒です。

「二軒先に警察のブラックリストに載っている幼児愛好者は住んどるわ、斜め前の家の息子はドラッグ・ディーラーやわ」という貧困階級の危ない人たちが住むブライトン。そこで暮らすフレディみかこさんが見つめたイギリス社会をまとめた「花の命はノー・フューチャー」(ちくま文庫/古書400円)は、ルポルタージュなのに、笑わせ、涙させて、怒らせてくれる一冊です。

当ブログで彼女の「ぼくはイエローで、ホワイトで、ちょっとブルー」(売切)を紹介しました。あの本に溢れていた著者の逞しさとどんなことも笑いに変えてしまう力強さは健在です。実はこちらの本が先に発売されていて、長らく絶版になっていたけれど、「ぼくはイエロー〜」人気で再発され、未収録原稿を多数加えられた文庫ということになります。

LGBT、移民問題、広がってゆく貧困社会、荒れる青少年達とドラッグ等々、地べたから見据えたイギリスの今を、共にこの地で生きる一人の女性の思いを、パンク精神と笑いで吹っ飛ばした内容なので、あっという間に、ドハハハと笑いながら、いや実は笑っている場合ではないのかもしれませんが、読み切ってしまいました。そして、彼女の人生哲学に納得します。未来がないから生きる甲斐がないという言説に対してこう言い切ります。

「生きる甲斐がなくても生きているからこそ、人間ってのは偉いんじゃないだろうか。最後には各人が自業自得の十字架にかかって惨死するだけの人生。それを知っていながら、そこに一日一日近づくのを知っていながら、それでも酒を飲んだり、エルヴィスで腰を振ったりしながら生きようとするからこそ、人間の生には意味がある。」

彼女の中には、上品で貴族趣味的なイギリス的風土は全くありません、醜く蠢く負の部分をさらけ出しているのですが、逆にその負の部分が輝く出すところが曲者ですね。

「大人が一番物事を知らないのに。知ったかぶりのたれかぶり。いつまでもたれかぶり続けろ、あなた様のようなおワイン階級の腐れ塗り壁中年は。貧乏人を蔑視するな。外国人を軽視するな。たわけるのもいい加減になさらないと自爆してやるぞ。」

とブルジョワ階級への暴言、下品な言葉の数々。私、こういうの大好きです。

その一方で悟りを開いた僧侶のように、「厭世とはポジティヴィテイの始まりである。だいたい、すぐ激情したり主人公になったりする人たちってのは、自分の人生の責任の一端は他人、またはなんらかの外部からの力にある、と信じているからドラマになるのであって、結局全ては自分のバカから発したことであるとわかれば、人生というもののアホらしさが突如として浮き彫りとなり、後は冷静になるしか無くなるもんな」と語っています。

なかなかに、奥の深い読み物です…….。

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★古本市準備のため2/3(月)〜4 (火)連休いたします。