こんな写真集フランスで出ていたんだ!!という驚きの一冊。

昭和三十年時代、殺人事件を捜査する刑事たちの日常を追いかけた「張込み日記」(新刊/2916円)のフランス版です。装幀、ブックデザインは、フランス版の方が良い出来だと思いました。表紙に使ってある写真なんて、まるでフランス映画のワンカットみたいです。写真の構成もフランス版独自の編集みたいで、(7000円/出品・マヤルカ古書店)お値段は高いですけど、これは部屋に飾っておきたいクールな一冊です。

根強いファンの多い詩人、天野忠も二冊出ています。一冊は「掌の上の灰」(2800円/出品・徒然舎)で、表紙の絵は、滝田ゆうです。最後に載っている「世間へ」という詩は、仔猫の独立を描いた作品ですが、平易なことばで、希望や哀しみや切なさが立ち上がってきます。天野忠の詩は、京都言葉の巧みな扱いで、人生の機微をヒョイと描くところに良さがあるのだと思います。「私有地 天野忠詩集」(1600円/出品・徒然舎)にこんな詩があります。

「どっちが先か わしか おまえか そら わしが早いのがえぇ わしがすんでから 来てくれたらええ いそがんでもええ

ゆっくりしてからでええ それまでは たのみます ・・・・・ なあ ばあさんや」

「彼岸」という作品です。ホッとさせてもらえます。彼の詩集ってあんまり古本市に出ないので、お早めにどうぞ。

お次は、ガラリと変わります。「谷崎万華鏡」(300円/出品・橘史館)です。これ、谷崎作品を個性的な漫画家がコミック化したものです。今日マチ子「知人の愛」、高野文子「陰翳礼賛」、古屋兎丸は永井荷風が絶賛した「少年」を、とコミックで谷崎の世界を表現しています。とりわけ面白いのは、しりあがり寿が「瘋癲日記」とヘミングウェイの「老人と海」を掛け合わせた作品でした。彼のハチャメチャさが見事にブレンドされています。ラストカットが秀逸ですね。

「ある街の本屋の棚で、まだ真新しい一冊の本を見つけた。箱は銀箔をはりつけたように輝き、ショッキングピンクの帯には変体文字で薔薇十字社と書いてあった。私は吸いつけられるように指を伸ばし、その挑発的な本を引きずりおろした。『アップルパイの午後』尾崎翠作品集。」

薔薇十字舎、尾崎翠という名前だけで、本好きにはたまらんのが加藤幸子「尾崎翠の感覚世界」(600円/出品・1003)です。著者が尾崎に魅かれてゆく様が描きこまれた評論です。

★murren最新号「岩波少年文庫」特集号(520円)入荷中です。朝日新聞書評で取り上げたために、な、なんと重版決定です。岩波少年文庫で育った方には必携の一冊です。