1930年、京都生まれの評論家渡辺京二さんは、熊本に住んでいます。その彼が、熊本在住の「近くにいて『気になる人』、昔から知っているけどもっと知りたい『気になる人』」とのインタビューをまとめたのが、「気になる人」(晶文社1300円)です。ちなみに本の装幀は、京都在住の矢萩多聞さん。

本好きなら、ここに登場する二軒の本屋さんを知っておられる方も多いと思います。新刊書店を扱う「長崎書店」(熊本市内のお店)と、カフェと雑貨と新刊書を扱う「橙書店」です。熊本に行く機会があれば、私も是非訪ねたい本屋さんです。

「橙書店」は村上春樹が訪れて朗読会をした小さな書店。店主の田尻久子さんは、それまでの会社員生活にピリオドを打って、2001年カフェをオープン。その6年後カフェの隣りに6坪程の小さな書店を開きました。海外文学、詩集等をメインに取り扱っています。彼女は本屋さんで仕事はしていませんが、本好きを唸らせるセレクトらしいのです。(見てみたい!)

最近オープンしている個性的書店は、古書メインが主流ですが、彼女は新刊を選びました。その理由が明快です。

「みんながみんな古本屋ばかりしちゃったら、今、現存している作家で食べていこうという人たちはどうやって暮すんですかって思うんですよ。」

大手新刊書店がつまらなくなっていく現状で、これはとれも重い発言です。

なお、橙書店は熊本を襲った地震で被災しましたが、多くの人達の協力で再開。看板猫のしらたまも戻ってきたとの事です

もう一軒の「長崎書店」は創業125年を迎える老舗書店です。2009年、4代目社長に就任された長崎健一さんが、個性派書店に大きく舵を切りました。そして、書店経営の思いをこう語っています。

「やはり、書店は自主的な仕入れの割合を高めて棚を作り、棚を通して読者と対話していかなけらばならない」と。

そうなんです。私が在籍していたチェーン店も商品部主導に傾いて、何度も衝突しました。書店の力を削ぐことになると進言したこともあったんですが、力不足でした。

その長崎書店で、「売りにくい」人文書を担当している児玉信也さんが著者と話し合います。書店の棚割から、人文書は店舗の奥に配置されるのが常識です。しかし、この書店は一番前に持ってきています。「ほかの書店にない本から置く」というポリシーからです。一冊の本を通して、客とのコミュニケーションをどう深めてゆくかを探っていくのですが、これは本屋だけでなく、物を売り買いするすべての人にとって、最も大事なことです。

あまりの忙しさに、お客さんと話をすることが煩わしかった私は、書店員時代を反省しています。

この本には、他にも建築家坂口恭平さんなど、個性的な方々が登場されます。「小さいが、まぎれもなくその人の場所を持っている人々」と帯に書かれています。人生で、自分の場所を持つってこんなにステキな事なんですね。

 

 

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