「なnD7」(972円)は、「なんとなく、クリティック」、「nu」、「DU 」の編集者三人が集まって作ったミニプレスです。それぞれの雑誌の頭文字を取って作った雑誌です。最後の「7」は7号の意味です。

本好き、ギャラリー好き、音楽好きには刺激的な記事、インタビューが満載です。最近話題のケイト・ザンプレス著「ヒロインズ」を翻訳して、自らが主宰する翻訳・出版プロジェクトC.I.P.Booksから出版した西山敦子さんの元へ、近代ナリコさんがインタビューにゆく記事が巻頭にあります。

近代さんはこの本を、文学の本質、作家という職業の意味、ジェンダーなど、多くの問題を詰め込みながら、「書くことから疎外された女の人たちの歴史を追っている評伝でもある。しかも、そのスタイルを壊すような評論家という客観的な立場から対象化して何かを評論する方法も、ひっくり返して書いていますよね」と評価しています。ザンプレスと一歳違いの翻訳者の西山さんと、熱っぽい対談が始まります。

暫くページをめくっていると、夏葉社代表島田潤一郎さんが登場。島田さんは、夏葉社としての出版活動とは別にインディーズレーベル「岬書店」を立ち上げ、その第1作として本人が執筆した「90年代の若者たち」(1404円)を刊行しました。なぜ、インディーズレーベルを立ち上げたのかを語っています。インタビューの場所が、書店「title」さんに納品にゆく道すがらというのが島田さんらしくていい感じです。「綺麗な本を作る、美しい出版社」という夏葉社のイメージに対して、島田さんは「くすぐったいところはあるんですよ」と話し始め、こう続けます。

「綺麗な装丁の美しい本って、洗練されているようで非常に保守的だし、排他的なんです。綺麗な本作りって、雑味のようなものをどんどん省いていけばできるし、そんなに難しいものではなくて、少なくとも僕以外の人でもできる仕事で、そこにあまり未来はない」

だから自由な雰囲気で表現できる場として、岬書店を立ち上げたということです。私は90年代の若者ではありませんが、この本は面白かった。以前ブログで紹介しましたので、ぜひお読みください。

さらに読み進めてゆくと、神戸元町の古書店「1003」のオーナー奥村千織さんが登場します。元司書の彼女が、何故、古書店を立ち上げようとした のか、その後押しをしたのが岡本太郎の著書「自分の中に毒を持て」だったことなど、興味あるお話ばかりです。こんな風に、様々な場所でユニークなコンセプトでお店を始めた人たちの話が満載です。文庫サイズなので、持ち運びも便利ですよ。

★イベントのお知らせ

6月5日(水)より「世界ひとめぐり旅路録」展をされる小幡明さんが、14日(金)19時半より、FMひらかたパーソナリティー久保有美さんと一緒に「小幡明の旅の話アレコレ」と題したトークショーを当店にて開催します。(参加費1000円/要予約

 

連休のお知ら

 

6月3日(月))4日(火)連休いたします 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏葉社の代表島田潤一郎さんが、「90年代の若者たち」(岬出版/1404円)を発行しました。

「一九九五年の冬に、日本大学商学部の文芸研究会というサークルに入部した。大学一年生で、まだ十九歳のころ。焦燥感と向上心があった。文学が好き、というひとたちから、なにかを学びたかった。」

という書き出しでわかる通り、これは島田さんの大学時代、そしてその後、やりたい事を見つけるまでの人生の彷徨です。読み終わって、これサリンジャーの世界だなと思いました。サリンジャーが描くのは、極端に言えば何をしていいのかわからない青年が、ブツブツ呟きながら、トボトボ歩く世界です。この本の中で、島田青年は未来のことが見えてこず、作家になりたいという思いだけが先行し、虚しい日々を送っています。

「ぼくが青春時代を送った90年代は、音楽の時代だった。もっといえば、CDの時代だった。アナログからデジタルに移行した時代。通信カラオケの普及によって、みながカラオケボックスへと通った時代。若者たちはみな、驚くぐらいにCDを買った。」

そんな時代、彼も浴びるほどの音楽漬けの生活を送ります。小沢健二、スピッツ、サニーディ・サービス等々、世代的に差がある私には縁遠いミュージシャンですが、「カラオケでよくうたったのは、小沢健二の『愛し愛されて生きるのさ』。それだけがただ僕らを、悩める時にも、未来の世界へ連れてゆく、と。九十五年も、九十六年も、九十七年も、九十八年も、大声でうたった。」という気持ちは、よくわかります。私だって、ジャズ喫茶にこもり、ロックイベントに通っていましたし。

島田青年は、就職活動に全敗しあてのない日々を送るのですが、音楽に常に支えられていました。九十年代を「ぼくにとって、重たい時代だったのである。バブルを知らないうちにバブルが弾け、楽しみに見ていたトレンディドラマの空気も、どんどん重たくなっていった。」と括っています。

1999年、彼は家を出て安アパートで一人暮らしを始めます。大量の本とCDを持ち込み、作家になるべく、ワープロに向かう日々が始まります。しかし、そう簡単に道は開きません。アルバイトに明け暮れる毎日、かけない文章、青春の出口でもがく日々が描かれます。早くに死に別れた友人への思い、仕事に価値を見出せない毎日、そして心を病んでいきました。

その後、彼が夏葉社を立ち上げるまでのことは、「あしたから出版社」(晶文社/古書950円)をお読みください。「90年代の若者たち」の最後の方で彼はこんなことを書いています。

「本というのは、人間に強さをもたらしたり、ポジティブな価値を与えるというより、人間の弱い部分を支え、暗部を抱擁するようなものだと思う。だから、ぼくたちは本が好きなのだし、本を信頼していたし、それを友だちのように思っていた。それは本だけでなく、音楽もそうだった。」

同感です。

レティシア書房はゴールデンウイーク中も通常営業しております。(4月29日は定休日)

 5月6日(月)〜8日(水)は連休いたします。