「己」の下に「心」って書いて「いまわしい」なんて、深い漢字だなぁ〜と思っていました。歳と共に、自分の心ほど「忌まわしい」ものはないことを実感します。

ところが、「たとえば、『忌野』の『忌』は、己の心と書いて『いまわしい』と読むのが素晴らしい、と何かのインタビューで言っているのを思いだした。」という文章に出会いました。

これは、RCサクセションの元マネージャーで、忌野清志郎を40年見つめてきた片岡たまきの「あの頃、忌野清志郎と」(宝島社1300円)に出てきます。(写真も素敵です)

話は彼女の中学時代に戻ります。地方ローカルTVで初めて見た清志郎に魅せられて、彼と一緒に仕事をしたいという強い欲望が生まれました。しかし、そう簡単にそんな職などあるわけがない。ライブに通い、事務所に通い、ひたすら行動するうち、ファンクラブ会報誌の仕事をゲットし、やがて彼等の衣装係に抜擢されて、全国を駆け巡り、ついにバンドのマネージャーとなり、夢をかなえます。

「忌野日記」(新潮文庫300円)の構成に参加し、RCの活動休止以降は一旦、清志郎から離れますが、2004年以降、ソロ活動の彼の衣装係に復帰し、2009年の彼の最期まで見つめます。

思春期から、青春全開の時代を経て、大人の階段を登ってゆく著者を支え、引っ張り上げた清志郎という存在を見つめたエッセイです。何の疑いもなく、彼の音楽にすべてを注ぎ込めるなんて、素晴らしい人生としか言いようがありません。

彼の死後、多くの本が出ましたが、さすがにこの本ほど、涙溢れる本はありませんでした。帯で竹中直人がこう書いています

「ひとつひとつの言葉が心に染み込んでくる。清志郎の音楽が何度もリフレーンしやがる」

見事にこの本の素晴らしさを表現しています。

「清志郎のバランスのとれた強靭な精神力と、自分を信じる力と、差別のないやさしい力」

そこに著者が憧れると書いていますが、私もそう思います。

この本と一緒に「sings soul ballads」(1700円)という彼の歌ったバラード集が入荷しました。何度も聴いた曲ばかりですが、ほんとうに力強さと優しさの満ちています。

このCDで初めて知ったのですが、「あいつの口笛」というソロアルバムに入っている曲って、作曲は細野晴臣だったんですね。名曲です。