「言いわけのように明るく、ぽってりとした夜中の満月は、菓子パンのなかのクリームの練り上げたような黄色をしていると思った」

これ、石田千の「月と菓子パン」(晶文社500円)の最後の文章です。全く彼女のことを知らない時、書店で何気なくページを開いた瞬間に飛び込んできました。思わず、クリームパンが欲しくなってきました。そして、このエッセイ以上にパン屋に走りたくなる本が入ってきました。

池田浩明著「パンラボ」(白夜書房800円)です。帯にこう書かれています「バターのような、ジャムのような、そばにあるとパンがおししくなる、パンの図鑑」と。

パンの原材料の小麦の話に始まり、パンの作り方、そして様々な種類のパンの解説へと広がっていきます。日本のパンの王道、「あんぱん」については、5ページを使って詳細の書かれています。名物店13種類の名物あんぱんを見ているだけで、豊かな気分になります。「ハムレッット」に「さ、さ、尼寺へ」という台詞がありますが、さしずめ「さ、さ、パン屋へ」ですね。「こしあん及びつぶあんの一般理論」というエッセイまであり、いつも店先で迷う中身(粒あんかこしあんか)についての考察が述べられています。(他のパンについてもちゃんと書いてあります。個人的嗜好でつい読みました。)

もちろん、「全国お取り寄せ」もちゃんとあります。でも、それ以上にお読みいただきたいのが、「パンを配る」です。これは、東北大震災で被害に遭った人達の元へ、パンを届けた15店のパン屋さんんの奮闘記です。

本の最後に書かれているパン屋さんの言葉、

「よりよいパン」というのは皆を平和に導くパンのことである。まず健康になって平和になろうという考えを起こさせるパンでなくてはならない。そういうパンを作っていこう・・・

あの、あんぱんまんも言ってます。

「さあ、僕の顔を食べなさい。いつもおなかのすいた人を助けるのだ」

 

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