「星影の小径」は、1950年、小畑実の歌で発売された歌謡曲です。

ロマンチックなメロディーと、”I love you”と英語を用いたセンスの良さが功を奏して大ヒットしました。85年、ちあきなおみがそれをカバーしました。CMでも何度か使用されていたので、お馴染みだと思います。この曲を含むアルバム「星影の小径」のCD(2300円)、LP(貴重!4800円)を入荷しました。

47年、東京生まれのちあきは、10代の頃から米軍キャンプや、ジャズ喫茶、キャバレーで歌っていました。長い下積み生活で、実力を磨き、やがて72年「喝采」でレコード大賞を受賞しました。どちらかというと、演歌、歌謡曲のジャンルに入る歌手ですが、アルバム「星影の小径」は、センスのいいポップスで、余韻に浸れる傑作です。演歌でも、歌謡曲でもなく、中途半端なジャズテイストのアルバムでもなく、豊かな表現力を持ったちあきの歌唱力が聴かせます。

「静かに 静かに 手をとり 手をとり あなたの囁きは アカシアの香りよ」という「星影の小径」の出だしでそっと忍び寄る彼女の色気に、くすぐられてしまいます。多重録音っぽいボーカルアレンジとシンセサイザーの音が、どこか異郷の香りを運んできて、さらにマンドリンのような音が流れてくると、ほのかな海風が吹いて来ます。

そして、「星影の小径」シングル盤発売当時の、B面に入っていた「港の見える丘」も収録してあります。

「船の汽笛 むせび泣けば チラリホラリと 花弁 あなたと私に 降りかかる 春の午後でした」という歌詞に込められた、アンニュイな感情がすばらしい。ほとんど盛り上がらない曲調の歌なのに、ちあきが歌うと男と女の様々な恋物語が浮かんでくるから不思議です。

その次に登場するは、「上海帰りのリル」です。私が最初にこの曲を聴いたのは、根津甚八がカバーしたものだったと記憶しています。シブい哀愁のある歌い方が、かっこ良かった一曲でした。一方ちあきは、イタリアのファド、あるいはアルゼンチンタンゴ風のアレンジをバックに、感情を大きく表現することなく、ストイックに終わりまで歌いきります。余韻のある終り方も抜群です。アルバムを編曲したアレンジャーは、彼女が世界のあらゆる音楽に対応できると、確信していたのではないでしょうか。

ご承知のように、彼女は92年、夫だった俳優郷鍈治との死別をきっかけに一切の芸能活動を休止し、表舞台から姿を消して今日に至っています。95年公開の映画「GONIN」で、本木雅弘が、やくざの事務所に突っ込む、カッッコよすぎるシーンで、彼女の歌う「赤い花」が流れますが、これが最後のシングル盤となってしまいました。

勝手ながらレティシア書房は、5月7日(月)〜10日(木)連休させていただきます。

よろしくお願いします。

 

 

 

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★「かっこいい〜」と思わず叫んでしまった女性が、下の写真です。

アメリカに「アラバマシェイクス」というロックバンドがあります。リードボーカルは、Youtubeで映像を見た時、え・・・と、この人、男性?女性?どっちかわからない風貌で、めちゃくちゃパワフル。ダイエットなぞ、どこ吹く風といわんばかりの巨体から、絞り出すように歌うブルース。有無を言わせないパワーにただただ圧倒されました。

自らの正しさを声高に主張せず、相手の愚かさを糾弾せず、そんな人間同士が戦うことの無意味さを歌う“Don’t Gonna Fight”を一度見て下さい。アメリカのマツコデラックスなんて言わずに、性別や人種の境界線を越えてゆく姿を堪能して下さい。(ちなみに彼女は白人の母親と黒人の父親を持っています。)CDは店に置いてます(US盤1600円)。女性ロッカーというレッテルを吹き飛ばすブリトニー・ハワードは、ひれ伏したいくらいカッコイイ人でした。

★復活を!

日本で悪役やらせたらベスト5の俳優といえば、成田三樹夫、金子信夫、佐藤慶、石橋蓮司、そして郷鍈治だというのが私のセレクションです。その郷鍈治の連れ合い、ちあきなおみには、これはもう見果てぬ夢なのかもわかりませんが、復活して欲しいと切に思っています。切れ味、凄みとも独特だった郷鍈治亡き後、彼女は、ぷっつりと歌謡界から消えました。石井隆監督作品「GONIN」で、ちあきの「赤い花」が挿入歌として巧みに使われていましたが、男と女の暗い情念を歌い上げた絶品でした。そんな彼女が古いスタンダードや、ポピュラーナンバーを取り上げて、グッド?オールドアメリカンの世界を歌った「Three Hundreds Club」(1200円)が入荷しました。ノスタルジックを込めて歌う、彼女の魅力を発見できる作品です。

★マニア必読の本入荷

大手CDショップのディスクユニオンが出版社を設立。「DU BOOKS」という名前で、音楽マニア必読の本を出版しています。その中の一冊、鈴木惣一郎「細野晴臣 録音術」(2000円)が入荷しました。フォーク、ロック、歌謡曲、ニューウェイブ、テクノ、ワールドミュージックとあらゆるジャンルの音楽を自分のものとして、刺激的な音楽をクリエイトしている細野晴臣が、彼の創作現場を支えたレコーディングエンジニアへのインタビューを通して、日本のポップスがどう作られて来たのかを見せてくれる労作です。もちろん、細野自身のインタビューも満載です。近年の傑作「ホソノバ」に谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」のほの暗さが充満しているなんて話は興味津々です。

彼がサントラを担当したますむらひろし版「銀河鉄道の夜」(1400円)も再入荷しました。