2007 年に創刊された小冊子『mürren(ミューレン)』は、 「街と山のあいだ」をコンセプトに、独自の視点で山と自然に関する内容をさまざまに企画したミニプレスです。

「創刊 13年目、25号を数える本年 2019 年は、小冊子と は別に、叢書『MURREN BOOKS』シリーズを創刊いたします。 著者のもつ多様な自然観に触れていただくことで、いつしか 読者の方の人生に山と自然の世界が広がっている本シリーズ がそんなきっかけになればと考えております。」そして、その創刊第 1巻は、イラストレーター安西水丸さんの低山歩き の イラストエッセイ集 「てくてく青空登山」が届きました。(1296円)

「味わい深いイラストと、飄々とした穏やかな文章 で知られる安西水丸さんは、多彩な分野に通じ、数多くの作品 を生み出し、交友も広く多くの人に親しまれましたが、一方で ひ と り 静 か に て く て く と 、小 さ な 山 歩 き を 好 む 方 で も あ り ま し た 。 本書は、生前安西さんが各雑誌や小冊子にかかれた、山歩 きに 関 するイラストとエッセイをまとめたもので す。 幼少期に遊んだ裏山を訪ね、戦国武将を慕って城跡に上り、 雨に降られ雷に追われ、山頂でお手製のおむすびをほおばり、 帰 り 道 にド ン グ リ を 拾 って は ポ ケ ット に 入 れ る 水 丸 さ ん 。 没後早 5年が経ちますが、水丸さんは今もなお生き生きと、 私たちに山登りの楽しさを語りかけてくれます。」

本書の宣伝文句をそのまま掲載しました。各地をてくてく歩かれたという安西さんですが、その中に、京都鞍馬山が載っています。夏の暑い一日、彼は鞍馬山から貴船に出るハイキングコースを歩きます。

「本殿金堂までは今まで何度か来たことはあるが、ここから奥の院に出て貴船に下るコースは、歩いたことがなかった。おそらく京都に住んでいる人でもあまり歩いていないだろう」

いえいえ、安西さん、京都人も歩いてますよ。私も何度か歩きました。「マムシ注意」の看板にはドキリとしますが。この山は牛若丸が少年時代過ごした場所だけあって、様々な牛若伝説に満ちています。安西さんは、面白いことを言います。

「ぼくはこの牛若を昔から怒れる若者と考えてきた。つまり、今の時代であるなら、家庭愛に恵まれない暴走族であり、ロックンローラーと見ていいだろう。」

騎馬軍団を率いて疾走する姿は、バイクを暴走させる若者に置き換えられるというイメージなんですね。そんなことを考えながら、杉の木が地面を這い廻っている木の根道を通り、貴船へと向かいます。貴船の川床でビールを飲む著者を描いたイラストが可愛らしい。

この本には1990年「新刊展望」という小冊子に載せた「登山少年だった頃」から、2012年雑誌「BE-PAL」に収録されたインタビュー「山に登って 話をしよう」まで全15本が集められています。中には、初出年不明のものや、どこに出したか不明のものまであります。今や、読めないもののオンパレード。ファンならずとも持っておきたい一冊です。

これからの叢書『MURREN BOOKS』シリーズ、期待度大です。なお最新号「mürren24号ー葉で包む」は、あと数部のみとなりました。お早めにどうぞ。