一箱古本市の発起人として有名な南陀楼綾繁さんが、日本全国の本に関わる人達や、イベントを取材した「ほんほん本の旅あるき」(SHC/古書1000円)が、面白いです。

岩手県盛岡、秋田、宮城県の石巻・仙台、新潟、富山県高岡、三重県津、鳥取県松崎、島根県松江・隠岐、広島県呉・江田島、高知、徳島県阿波池田、北九州、大分県別府、鹿児島、そして、都電荒川線沿線の東京と、ほぼ日本全国が網羅されています。

盛岡編では、当店でも開店以来販売を続けているミニプレス「てくり」が登場します。

「『てくり』がブックイベントを始めるというので、参加するのを楽しみにしていた。この年は仙台、盛岡、秋田、会津でブックイベントがあり、その四か所に『東北ブックコンテナ』という地域の本と物産を販売するイベントが巡回するという。なんだか、東北の本の動きが盛り上がっているのを感じた。」

しかしその矢先、あの大地震が起こり、状況が変わりました。無理かもしれないと著者は思いますが、予定通り実施されます。どんな思いでスタッフは開催にゴーサインを出したのか。けれどこのブックイベントがスタートしたことが、東北だけでなく各地の本好きを勇気づけたと著者は確信しています。

そして、やはりミニプレス「Kalas」でお世話になっている三重県津編。「Kalas」を発行する西屋さんが企画したブックイベント「ホンツヅキ」で、著者は、古書店「徒然舎」オーナー深谷さん(当店の古本市でも毎度お世話になっています)と、西屋さんでブックトークをしています。

そして、「津にはカラス=西屋さんがやるなら一緒にやろうという人がたくさんいるんだなと判る。雑誌や店という『場所』を持ち、それを続けていくうちに出来ていく人間関係。それは『ネットワーク』という言葉が軽々しく響くほどの、貴重なつながりなのだ。」と考えます。

「続けていくうちに出来ていく人間関係」とは大事な言葉です。我々も、同業の書店さん、ギャラリーを利用していただいた作家さん達、当店を面白いと思って通っていただいているお客様とのゆるやかな関係に支えられています。顔の見えるお付き合いを重ね、好きな本で一緒に盛り上がる。そういうところにこそ、書店業界の未来はあるのではないかと思います。

この本は、本に関わる人達と彼らのイベントを追いかけたものですが、その土地土地で見たもの、食べたものなどが随所に散りばめられ、一度は行ってみたくなるように仕上がっています。昨年の夏休み、女房と行った別府編は興味深く読みました。また、「ガケ書房」店主の山下さんが登場して、オカマバーに行って、ふっくらした体系が好きなママに惚れられたと書いてありにやりとしました。

同業の方、ミニプレスの方たちが各地でがんばってることが心に残る本でした。

 

 

★町田尚子さんのCharity Calendar2019入荷しました。540円

(売上の一部は動物愛護活動の一貫として寄付されます)昨年も早々に完売しました。お早めにどうぞ!

 

 

 

 

 

★釧路ヒッコリーハウスオーナー安藤誠氏の「ネイチャートーク」が決定しました。

10月27日(土)19時スタートです。参加費は2000円です(要予約)

 

盛岡発のミニプレス「てくり26号」は、「文学の杜にて」(648円)という特集です。盛岡で俳人、歌人として活躍する工藤玲音さんが、市内の高校の文芸部に所属している学生たちと語り合います。

各校とも文芸誌を出していて、17年の全国高校文芸コンクールでは、発行している文芸誌が盛岡第三高校が最優秀賞を、盛岡第四高校が優秀賞を受賞しています。石川啄木や宮沢賢治が若き日々を過ごした盛岡ならではですね。

盛岡には「さわや書店」という有名な書店があります。手書きPOPやパネル展示、果ては本全体を手書きのカバーで覆って中身をわからなくして販売した”文庫X”まで様々なアプローチでベストセラーを生み出した書店です。

「最近、世の中じゃあ軽い言葉しか聞かれなくなった。これはハードボイルド小説が読まれなくなったことと無関係ではないだろう……….。真に重い言葉は沈黙のなかにあるべしと識るべし」

こんな店長の作ったポップがズラリ並んだ楽しい書店です。この書店に勤務する方々5人が集まって、文学をテーマにした座談会が掲載されています。「よくわからないものが、文学なんだ!」なんていう意見も飛び出す楽しい座談会。全国的に文芸書の売上げ不振で、各書店の文芸書の在庫比率が下がっている中で、さわや書店は「うちも文芸書の比率は低いですが、文芸書は『顔』、花形だと思っていますから、しっかり棚をつくっているつもりです」と頼もしい。

一方、2017年オープンのセレクトショップ「BOOKNERD」、本とコーヒーとワークスペースのある古書店「ponobooks&time」も紹介されています。どちらも盛岡へ行ったら、お邪魔したい居心地の良さそうなお店です。

現在の「盛岡の文学」を語る上で、欠かせない二人が、沼田真祐と木村紅美です。盛岡在住の沼田は「影裏」で第158回芥川賞を受賞、盛岡に実家のある木村は「雪子さんの足音」で第155回芥川賞候補に選ばれた若き文学者です。

二人が、それぞれターニングポイントになったという作家の話から、興味深い文学論へと突入していきます。オーソリティのある文学者の対談よりも、若手のスリリングなトークの方が格段に面白いと思いました。

ところで、昨年の総務省の統計で、盛岡の書籍購入額は全国の県庁所在地・政令指定都市の中で第一位でした。読書への意識の高い都市なのですね。毎回読み応えのあるミニプレス「てくり」が26号も続いて来たのも土地柄と無関係ではないのかもしれません。

★レティシア書房恒例「夏の古本市」は、8月8日(水)〜19日(日)開催です。

岩手発のミニプレス「てくり」最新22号(648円)の特集は、『「なおす』を選ぶ』です。

岩手県立図書館は、児童書を中心に、月80冊程、修理の必要な本が出てくるとか。それを、ボランティアの皆さんが、黙々と、でも和気あいあいと作業に打ち込んでおられる写真は、おもわずニンマリしてしまいます。ところで、気になる発言がありました。「宮沢賢治の初版本のような希少本など、深い修理知識が必要な案件は、外部職人へと以来する」とか。この図書館では賢治の初版本を手に取ることができるのでしょうか?興味あるところです。

図書館の次に登場するのが、椅子の修理を一手に引き受ける小林椅子工業さん。新品のオーダーから、脚や背もたれも含めて、素材を選ばずトータルで引き受ける業者は、あまり見当たらないそうです。だから、盛岡市内の、病院、美容院、三陸鉄道の座席シート等々、巷のあちこちにこの小さな会社が関わった椅子が点在しているのです。「雑な直しはしない」ことを信条とする会社が地域から信頼されていることの証しです。

開発で様変わりする町の一角で、ひっそりと店を続けているのが、「塩釜馬具店」。創業は大正12年。当初は、騎馬軍隊用の馬具店として始めた馬具の専門店です。使いこなされた修理道具、ミシンなどの写真を見るのは、なんとなく集めた古本に見入っている時の気分に似ています。

時代と共に馬具製造の需要は減りましたが、素材を巧みにいかした同店の革製品は人気があり、剪定用ハサミケース、犬の首輪、ベルトなどは、今も根強い人気があるそうです。「生業」という言葉がそのまま当てはまる職場の雰囲気もいいですね。

ところで、山に囲まれた盛岡で最も重宝されているのは、クマ避け鈴「南部熊鈴」だそうです。

 

★毎年恒例になりました『ネイチャーガイド安藤誠さんの自然トーク「安藤塾」』は、10月28日(金)7時30分より開催が決定しました。(要・予約 レティシア書房までお願いします) 

盛岡発のミニプレス「てくり」は、最新20号(648円)で10周年を迎えました。おめでとうございます!!

「てくり」は、レティシア書房開店時からお世話になっているミニプレスで、バックナンバーも人気のある雑誌です。盛岡の「ふだん」を綴る、をコンセプトにして、この街で生きる様々な人々を紹介しています。10周年記念号は「続けるひと」という、自身10年続けてきた気持ちが込もった特集です。

「続けるひと」では、3人が取り上げられています。

かつて市内にたくさんあった料亭も、今や残るは3軒で、その貴重な一軒「駒龍」の若女将岩舘早苗さん。そして地元で50年以上、ありとあらゆるデザインの仕事を手掛けるデザイナー田中文子さん。もう一人は、30年もの間トライアスロン競技選手として活躍するアスリート佐野智子さん。各人各様の「続ける女の続ける理由」が語られています。

この雑誌がいかに創刊され、続いてきたのかを俯瞰できる、「てくり」10年の記録は貴重です。2001年夏、「何か仕事以外に主張できる冊子をつくろうと」集まった人達。それから紆余曲折の末2005年春、創刊に至りました。その創刊号を作る際に、手本になったのが大橋あゆみ編集、発行の「アルネ」だったというのは興味深いことです。そして月日は流れ10年。その歩みが、世間での出来事と対比しながら見ることができます。例えば2011年の東日本大震災。すべての仕事が止まります。

「震災で紙が手に入らず、印刷会社もストップ。季節を夏に押したが、当初予定していた『本特集』を切り替え、『伝えるしごと』がテーマ。やや悶々とした号」

と当時を振り返っています。また、毎号楽しみしている「もりおかわんこ」は、11号からスタートしたことも初めて知りました。

オール女性の編集部。よく続きますね、と聞かれるそうですが、メンバーにこだわりがないことがいいのかもと仰っています。

「『どうでもいい』ということではない。『こうでなくては許されない』という事が少ないのだ。『こうでもいいけど、それもありね』という感じ」

そんなしなやかさが素敵な雑誌を作り続けているのですね。毎号「あなたはなぜ、ここにいるのですか」という連載が掲載されていて、この街で慎ましく暮らす人が取り上げられています。撮る人も、撮られる人も、この街の暮しを愛していることが伝わってきます。また、不定期に発行される「てくりブックレット」も隅々まで丁寧に作られています。自分たちの暮らす街や人を愛しく思っているから、成せる技なのかも知れません。この記念号の表紙モデルさんが、創刊号と同じ方の10年後というのも、「てくり」らしいと思います。

流行の先端をゆく東京から、はるか離れた地方都市で、オフビートな感性で取材を続ける「てくり」をレティシア書房は、ここ京都から、これからも応援します。今後共よろしくお付き合い下さい。

 

Tagged with:
 

盛岡発のミニプレス「てくり」19号(648円)が入荷しました。特集は「一菓一話」。この街のお菓子あれこれです。

先ず取り上げられているのは、「馬っこ最中」。馬のお祭りにヒントを得て、「馬っこ本舗みやざわ」の先代が昭和34年に発売を開始した最中です。馬の形が素朴で可愛く、もちろんお餅が入ってます。

次に登場する洋菓子店を開いて50年という大橋三郎さんは、10年前からロールケーキと焼き菓子だけを売っています。秋から冬の繁忙期には1日50本のロールケーキを作るとか。表紙は、大橋さんの「ドルチェマルセイユ菓子店」の写真。御年78歳には見えません。甘党ならこのロールケーキは外せません。

その他、盛岡で愛されるおやつ「きりせんしょ」なるものやら、60年以上前に修道女が作り始めた「ニックナック」(形はベルギーワッフルみたい)、ご当地老舗の和菓子へと続きます。

ところで、「がんづき」というお菓子ご存知ですか。楽しいエッセイで人気の木村衣有子さんが、こう書いています。

「蒸しパンみたいな岩手の郷土菓子だ。甘じょつぱくて、ざっくりと大きくて、食べごたえがある。」

このお菓子、実はあまり人気はないそうです。彼女はこう分析します「お菓子には必要不可欠なはずのときめきを見出しにくいのだ。色も地味だし、どかっと大きくて、いまひとつ可愛げがないことは事実だ」

そう言われたら、こちらとしては一度食べてみたくなります。

今号もう一つの特集は、昭和35年に建てられた「盛岡バスセンター」。大都会にある殺風景なバスセンターではなく、旅愁を誘ってくれます。中に入居しているお店が紹介されていますが、この待合室に似合うのは、「男はつらいよ」の寅さんかな。「姉さん、どっち行くんだい?」なんていう調子のいい声が聞こえてきそう。この建物は、東日本大震災で、一部に被害があったものの、大丈夫だったらしいです。ここから、未だ見ぬ土地へ向かって旅立ちたいものです。(来年は盛岡に行くぞ)

なお、てくりbooklet「盛岡の喫茶店おかわり」(1080円)、てくり別冊「光原社*北の美意識」(2052円)は在庫が少なくなってきました。

 

Tagged with:
 

岩手発のミニプレス「てくり」を発行している「まちに編集室」から、センスの良さの光る本が二点到着しました。

1冊目は「てくり別冊光原社*北の美意識」(2052円)です。「光原社」は、宮沢賢治の学友、及川四郎が、大正13年「注文の多い料理店」発行に際して設立した出版社です。その後、南部鉄器、漆器の製造販売に取り組み、昭和初期に柳宗悦の知遇を得て、全国各地の美しい民芸の販売を始めました。その会社を丸ごと取材したのが、この本です。

実は、これは二年程前の「てくり11号」で特集された記事です。発売当時から圧倒的人気で品切れになり、今回違う形で復活となりました。持っているだけで、幸せな気分になれそうな本です。高度な美意識で選ばれた優れた職人技の作品もさることながら、今の光原社の、日常を捉えたポートレイトと文章がたまらなく美しい本です。

創始者の四郎さんの最後の言葉は、「ああ、楽しい人生だったなあ」です。こんな言葉を残して天国へ旅立った彼の人生は極上だったことでしょう。

後半に宮沢賢治の「注文の多い料理店」出版に関する記事が二本載っていますが、ファンには見逃せません。

2冊目は、「てくりbooklet森岡の喫茶店おかわり」(1080円)です。喫茶店の紹介本なのですが、情報誌がよく作るカフェ情報だけの薄っぺらい本ではありません。柔らかい光線に包まれて、美味しい珈琲や紅茶を飲む時間の幸せを伝えてくれる本だと思います。「ふかくさ」の女主人と愛犬チャメ子のショットは、この店に流れる貴重な時間まで写っています。

隅々まで編集者の気持ちの行き届いた本は、持った瞬間、あるいはページを開いた瞬間に、何かが伝わるものなのかもしれません。

 

★お知らせ 勝手ながら7月1日(火)は休業いたします 。

Tagged with:
 

盛岡発の人気ミニプレス「てくり」の最新号(630円)の特集は南部鉄瓶です。南部鉄器は、江戸時代、茶道を学んだ藩主が京都から釜師を招き、茶の湯釜を作らせたのが始まりとか。京都から来た小泉家と、甲州から来た鈴木家は、それぞれ「御釜屋」と「鈴木盛久工房」という屋号で、今日までその技を伝えています。

小泉家十代目と、鈴木家十五代目へのインタビューを交えながら、工房の様子、作品が掲載されています。また、「うちの鉄瓶、紹介します」というコーナーでは、どれも使い込まれた鉄瓶の良い表情が紹介されています。

特集はさらに続きます。

「鉄は、一見剛健でありながら柔軟だ。冷たいようで、触れた手の体温をやさしく受け取っていく。なんだが、強面にみえて実は温かい東北人のようでもある。そんな鉄をこよなく愛する職人たち」と、鉄に関わっている人達のいい顔が並んでいます。どっしりとしていて、暖かい感じの作品を見ていると。盛岡に行きたくなります。「てくり」は毎号、毎号面白い企画で読者を唸らせていますが、この号もお薦めです。好評連載中の「もりおかわんこ」は、散髪屋さんのわんこです。

ところで、最近3号が出たばかりの「ぽかん」の別冊「昨日の眺め」(700円)が入荷しました。恵文社店長の堀部さんの「昨日もそう思った」をはじめ、エッセイ12本のどれも、本のこと、映画のこと、音楽のことを巧みに織り交ぜてあって、新しい本を読んだり、映画を見たくなる気分にさせてくれます。 

 

福田和美さんの「ノンデイリーライフ」の出だし

「暗くて文字が見えにくいな、と思って本から顔を上げると、もう空がブルーグレイだ。まだ、17時前なのに、冬の太陽はすぐ隠れてしまう。電灯をつけると部屋が薄闇に浮かび上がり、急に夜になる。谷町筋のオレンジの街灯が灯るのが窓から見えた」

なぜだがとても魅かれます。

 

 

Tagged with:
 

盛岡発のミニプレス「てくり」の最新号(630円)が入荷しました。特集は「山は、待ってくれる」です。

 

 

岩手県を代表する姫神山(1123.8m)へ、版画家であり、登山家である阿部陽子さんと編集部登山ビギナーが登ります。山頂からの写真を見ていると、暑さが吹っ飛んでいきそうです。阿部さんは「山の楽しみっていろいろだけど、まず頂上で何を食べるかは大きな楽しみ」とおっしゃる。なるほど、確かに山頂でいただく梅干しのおにぎりとか、卵焼きって特別美味しいです。さらに「魅惑の山おやつ」コーナーはどに紹介されているのはどれも美味しそう!

宮沢賢治の詩も登場する岩手山(2038m)八合目の避難小屋には、小屋のご主人手づくりの薪ストーブが備えてあります。なんとも渋いストーブです。疲れた登山者を温かく迎える小屋のもう一人の主かもしれませんね。美しい姿で「南部富士」とよばれるこの山の全景写真を見ると、ぜひとも行ってみたい気になります。ご主人のこんな言葉が身にしみます

「自然を守ろうというけれど、ふれてみないと、何が自然か、どこに守る価値があるかわからないでしょう。だから、まずは山で本当の自然にふれてもらいたいよね」

特集・山で神楽を演じる「篠木神楽のお山かけ」、山で働く「山守人たちのしごと」と、充実した記事が続きます。

ところで、「てくり」が届くと、先ず読むのが連載「keep workin’ and keep livin’ 」。盛岡に住む人達のポートレイト集です。皆フツーの人達ですが、とても魅力的なお顔なんです。

そして、最後のページを飾る「もりおかわんこ」。こちらもなかなかのワンコが毎回登場します。きっと素敵な町なんですね、ここは。

●「一箱古本市」は日曜日までです。次週19(月)〜22(木)まではお休みいたします。23日(金)からは「暮らしがちょこっと楽しくなる本&雑貨」のフェア開催です。

Tagged with: