みやこしあきこの絵本「よるのかえりみち」(偕成社/古書/1050円)を読んだとき、不覚にも泣けてきました。人間の幸福を、こんなに温かく描いてみせたことに対して深く心動かされたためです。

とある商店街。そこには多くの生活があります。夕闇迫る頃、遊び疲れた兎の子どもが、お母さんに抱かれて帰る道すがら、家々には灯りがついて、電話をかけている山羊さんや、オーブンで料理中の羊さん、一人でいるものもいれば、楽しそうなパーティの真っ最中のものもいます。迎えにきたお父さん兎に抱かれてベットに入る子兎。

夜も更けて、パーティに来ていた熊さんや、鹿さんが帰るところ、歯磨きをする洗面所の山羊さん、お風呂で今日の疲れを取る馬さんや、うたた寝しているカモシカさん、灯りを消してお休みタイムに入った熊さん等々の様子が、描かれていきます。

その頃には、子兎はぐっすり寝ています。どこかで足音が聞こえてくるのは、人気のない夜の街を抜け、最終列車に乗るネズミさんです。誰もいないホームに佇むネズミさん。遠い町へ向かう列車の窓からは家々の灯りが見えてきます。静かに深けてゆく街を走る列車を俯瞰でみて、絵本は終わります。

やわらかな灯りに包まれた家のぬくもりを、あますことなく描きだしています。表紙と裏表紙の見返しには、夜のしじまに浮き上がるアパートの窓が描かれています。部屋に灯った温かな光の中に、慎ましい生活が見えます。幸福って、こういうところにあるんじゃないの?と、この街の動物達は教えてくれます。これ以上、素敵な絵本はないと、今は思っています。

因みに本書は2016年ボローニャ・ラガッツ賞フィクション部門優秀賞、2017年 ニューヨークタイムズ・ニューヨーク公共図書館絵本賞を受賞しています。