イランを代表する映画監督アッバス・キアロスタミ。「友だちのうちはどこ?」「そして人生はつづく」「オリーブの林を抜けて」などの傑作をご覧になった方も多いと思います。癌のため、2016年に療養先のパリで76歳の生涯を閉じました。

1970年に詩人のアフマド=レザー・アフマディーが文章を書き、キアロスタミが絵を描いた「ぼくは話があるんだ、きみたち、子どもたちだけが信じる話が」(新刊2310円)と、絵本「いろたち」(新刊1650円)が発売されました。

「ぼくは話があるんだ、きみたち、子どもたちだけが信じる話が」は、幻想的でとても美しい文章と、センスの良いコラージュで出来上がっています。

ぼくは、兄へ宛てた手紙を書きます。しかし、ぼくは手紙をそのままにして、友達に誘われて遊びに出かけます。季節は夏から秋へと変わり、テラスに置いたままの手紙も色が変わってしまっています。ぼくは変化してゆく季節の姿に驚き、その季節のひとつひとつを部屋へ取り込もうと窓を作るのですが……..。シュールな情景がアフマディーの魅力的な筆さばきで立ち上がってきます。同時に、キアロスタミは写真のコラージュに色をつけるという手法で、物語に広がりを持たせています。特に、窓のコラージュ作品は、独特の色彩感覚が溢れています。

もともと、新しい絵本を作ろうとしていた出版社の企画から、全く絵本とは縁のない詩人と映画監督がコラボした一冊だけに、子供向けというよりは、アート作品の趣があります。

「いろたち」は「友だちのうちはどこ?」発表の3年前に絵と文を描きおろした イランではベストセラーになった絵本です。
みどり、きいろ、だいだいいろ、あか、みずいろ、むらさき、くろ、しろ、という色から連想する、風景や食べ物、植物や生きもの、道具などを、子どもと一緒に歌を唄うように描いた本です。キアロスタミは、子どもを主役にして、彼らの視点で映画を作ってきました。同じように絵本にも、子どもたちへの優しい眼差しが溢れています。

「いろのついてないところは、いろえんぴつやマジックでぬっていいんだよ。」最後のページで、キアロスタミが子どもたちへ声をかけています。やさしい美しい絵本です。

 

☆お知らせ

北海道のネイチャーガイド・安藤誠さんのトークショーを、今年も開催します。

 10/29(土)18時より (参加費2000円) 要予約!

 

 

 

 

休業に入り三日目。

イランを代表する映画監督アッバス・キアロスタミが、1987年に発表した「  友だちのうちはどこ?」。彼の作品は、なるだけ見るようにしていたのですが、これはチャンスを逃していて、家で観ることができました。

舞台はイラン北部のコケールという村。小学校に通う少年が友達のノートを間違って持って帰ってしまいます。ノートがないと友達は宿題が出来ないので、彼の家からは遠いところに住んでいる友達の家に返しにゆく。たったそれだけの物語で、登場する少年達も大人達も皆素人。上映時間90分。そんな映画面白いの? ところが、これが結構面白く、ラストの緊張感の盛り上げ方なんか映画の教科書のようなのですが、感動的です。

映画評論家の淀川長治さんは「ところでこの友人の家探しが見るも素晴らしい。行けど探せどその家、見つからぬのだ。村の人に聞くと「あちらじゃ」「こちらじゃ」、少年はぐったり。その道、その家、その人がいいのだ。“人”が生きている。本物なのだ。 」と、この作品の面白さをズバリ書いています。

滅多に見ることのないイランの村々の風景が、目に染み込んできます。ワンカット、ワンカットがそのまま写真になるように美しい。ドキュメンタリーのような、ドラマのような境界線を行きつ戻りつしながら、私たちはこの少年と一緒に、知らない村の路地を駆けます。リアルな少年の家の描写から、だんだんと児童文学や、絵本のような不思議な世界が広がります。そして、ラスト、再び小学校にカメラは戻ってきます。う、うまい!と唸る幕切れです。

3年後、キアロスタミ監督は、地震で崩れたこの村の家を、父親の運転で子供があちこち探し回るという作品「そして人生はつづく」を製作します。淀川さんは「崩れた石の塊の下の家の屋根を「友はどこ」「知人はどこ」と探すパパと子。途中疲れてコークを買う。店の人はいない。ゼニをそこに置いてゆく。イランの太陽が目にしみ、風がほほをなでる。映画とは本当、これなんだ。まだ汚れないこの撮影。そして人間がここに生きている。涙がこぼれた。」と、見事な論評を残しています。

2012年、キアロスタミ監督は日本人俳優を使い、日本で撮影した「ライク・サムワン・イン・ラブ」を完成し、その4年後76歳で死去しました。

 

お知らせ コロナウィルス感染拡大の緊急事態下、これ以上感染者を出さないために、4月23日(木)より当面休業中です。予定しておりましたギャラリーの個展もしばらくの間お休みいたします。この「店長日誌」は毎日更新していきますので、読んでいただけたら嬉しいです。ご希望の本があれば、お取り置き、または通販も対応させていただきます。(メールにてご連絡ください。)

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