1925年生まれのアメリカの作家、フラナリー・オコナーの「フラナリー・オコナー全短篇(上)(下)」(筑摩書房4800円/単行本絶版)が入荷しました。その中のいくつかを読みました。アメリカ南部を舞台とした短編の名手です。日常の生活の隙間に、ふっと現れる暴力、あるいは血なまぐさい殺人が頻繁に登場します。

「善人はなかなかいない」は、おばあちゃんが、脱走犯の3人に拉致されてしまう物語です。家族と一緒に車で旅行中に道に迷ってしまい、そこで、つい最近新聞で読んだ脱獄犯たちに遭遇し、拘束されてしまいます。脱獄犯たちは、、家族を一人、一人森に連れ込み、殺害してきます。ところが、このおばあちゃん、貴方達は悪い人なんかじゃないと最後まで言い続けたのですが、胸に三発の銃弾を受けて死にます。なんとも、奇妙な感覚の小説です。

この小説が思わぬ所で注目されました。映画「スリービルボード」で、警察所長が読んでいるのが「善人はなかなかいない」なのです。未来への展望が殆ど無いような、南部の小さな町に渦まく鬱屈した感情と暴力を描いた映画の、重要なキャラである警察所長の愛読書がフラナリー・オコナーだったのです。それでずっと、絶版だったこの短篇集が、文庫版で再発されたのも、映画との関係があったのでしょうね。

「田舎の善人」は、南部の田舎暮らしの日々を描きながら、後半、おぞましい暴力描写が登場します。聖書を売り歩く善人風の青年が、義足を付けた女性ハルガを誘惑してもて遊び、あげくに、その義足を取り上げ、自分のカバンに放り込みます。

「いろんなめずらしいものを集めているんだ。このやりかたで、女の義眼を手に入れたことがある。」とうそぶいて消えていきます。

登場人物たちの心情にじっくり迫りながら、後半、グロテスクな暴力で引っくり返してしまうオコナーの世界。唐突に読者を予測不可能な展開に持ち込み、困惑させてしまうという点では、「スリービルボード」の世界と似通っています。

★レティシア書房「夏の一箱古本市」は、8月8日(水)〜19日(日)開催

ただ今ギャラリーで開催中「災害で消えた小さな命」(複製画)展の主宰者うささんが、代表をつとめる劇団Sol.星の花による「Voice in the Wind その声がきこえますか」が、京都府民ホールアルティ(上京区烏丸一条下る)で上演中。お問い合わせは劇団Sol.星の花京都公演実行委員会まで。7月10日(火)〜12日(木)