先日、マクドナルドの創業から、全米トップのバーガー店になるまでの描いた「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」という映画を観ました。マクドナルドの創業の話なんて面白い??と、これが今のアメリカを知る上でも役立つ、極めて面白い映画でした。

1950年代、ミルクシェイカーのセールスマンだったレイは、ディック&マック兄弟が経営するハンバーガー店<マクドナルド>に出会います。流れ作業の“スピード・サービス・システム”や、コスト削減・高品質という革新的なコンセプトにビジネスチャンスを見つけたレイは、壮大なフランチャイズビジネスを思いつき、兄弟を説得し、契約を交わします。アメリカのどんな町にも裁判所と教会はあるが、ここにマクドナルドも加えるという野望を達成すべく、全米へと進出していきます。

ここで、注目しなけらればならないのは、創業者のディック&マック兄弟は、地元で品質の良いバーガーが提供できれば満足で、会社を大きくする気などさらさらなかったことです。当然、低コストで利潤追求に突き進むレイとは、衝突してしまいます。そして遂にレイは、この兄弟を駆逐して、自らの帝国を築き上げるのです。これが、今日、全世界に広がるマクドナルドの原点です。

レイが、劇中で何度も、ビジネスで勝ち残る方法を語る男のレコードを聞いていました。ノーマン・ヴィンセント・ピールという元牧師が吹き込んだレコードで、『積極的思考の力(Power of Positive Thinking)』というものです。。今で言う自己啓発もの。ビジネスの勝者が人生の勝者だ!絶対に成功すると信じろ!みたいなことを力説します。ところで、このノーマンは、トランプ大統領が唯一尊敬している人物だと、映画評論家の町山智浩が指摘しています。弱肉強食のビジネス界をくぐり抜けて、アメリカンドリームを掴んだ!オレは強い!という正にトランプ的資質ですね。

「だからいま、この映画が作られたんですよ。ドナルド・トランプ的なアメリカというものは、もともとこのマクドナルドなんだということなんですよ」と町田は言います。

この映画は、トランプ的勝者を賞賛する映画ではありません。マクドナルドの全米進出と共に、同じようなスーパー、同じようなホテルがチェーン展開しようとする時代であり、まさにアメリカの均一化、それはやがて世界の均一化へと向かう切っ掛けが、マクドナルドにあったことを描いています。主人公レイを演じるのは、マイケル・キートン。最近「『バードマン」「スポットライト」といった傑作で優れた演技を残していますが、今回の野心丸だしの男も実にハマってました。

因みに、この映画、本家マクドナルド社の協力は一切受けていませんが、もうバンバン、マクドナルドのロゴや店舗を使っています。アメリカでは、表現活動のために著作権のあるもの(ここではロゴ等)を使用するのは構わないという法律があって、表現者は守られているのだそうです。日本では考えられないですね。

久しぶりにマクドナルドに行って、バーガーを齧りながらトランプ的なるものをかみしめてみるかな。

 

8月21日(月)〜25日(金)は、夏期休業いたします。よろしくお願いします。


 

京都シネマにて上映中の「ドリームホーム」を観ていると、ここに登場するアメリカ人たちが、あのトランプ氏を応援するんだろうな、と気がしてきました。

映画は、住宅ローンを払えなくなり、銀行の差押え物件にされてしまうブルーワーカーの人々と、差し押さえる不動産屋を軸に展開していきます。離婚して、子どもと母親と三人で生活をしていた主人公は、建築業界の不況で職をなくし、家を差し押えられます。しかし、ひょんなきっかけで、彼は差し押さえた側の独裁者的不動産屋社長の元で働くことになります。搾取されていた人間が、搾取する側に回った時、どうなるかは想像がつきます。

罵声を浴びながら、自分の友人でさえも、その家から追い出す日々。手元には大金が集まり、豪邸を手に入れるのですが………..。

映画の中で、社長がこんな台詞を口にします。

「アメリカは勝利者の、勝利者による、勝利者のための国だ」

1%の勝利者と99%の敗者。政府も、銀行も、裁判所もすべて勝利者の御用機関になっていることに敗者

たちは怒りを限り無い怒りを持っています。多分、それは映画だけでなく、現在のアメリカの状況がそうなのでしょう。そこに、巧みにトランプ氏は食いついたのでしょう。日本では考えられない彼の人気ですが、ヒステリックに怒りとばす口調に敗者たちは心酔している、というのが現状なのではないでしょうか。彼なら、金持ちの味方ばかりする政府をぶちのめしてくれる、その希望が高い支持率になっているのかもしれません。

映画は、果てしなき欲望の泥沼と、個人のモラリティーが交錯するサスペンス。脚本はイラン出身のアミール・ナデリ、監督はやはり両親がイランからの移民のラミン・バラーニ、という外様だからこそ描ける世界かもしれません。蛇足ながら、主人公を演じた(上の写真)アンドリュー・ガーフィールドは、現在製作されている遠藤周作の「沈黙」のアメリカ版の主演に抜擢されたそうです。