世界を変える美しい本」(売切)、「フェルメール」(2160円)、「はじめまして、ルート・ブリュック」(2160円)などアート系の良質の本を出しているブルーシープが、新刊を出しました。なんと、スヌーピーです。正式のタイトルは「スヌーピーミュージアム展図録」(3024円)。

これは、2016年から18年まで期間限定でオープンしたスヌーピーミュージアムで、5回にわたって開催された企画展を凝縮した一冊と、「THE BEST OF PEANUTS」と題されたスヌーピーコミックのベストを二冊組みにしたものです。世界一有名なビーグル犬スヌーピーは、50年も連載を続けていました。

スヌーピーにたいして興味のない私でも、この図録は、思わず読んでしまいました。コミックはもちろん、グッズ、本、ペナント、おもちゃなどあらゆるものが集められています。登場人物の詳細な紹介に、かなりのページを使っていて、著者はここまで描き分けていたのかと、驚きました。最後に作者チャールズ・ M・シュルツの未亡人ジーン・シュルツ(シュルツ美術館理事長)と、日本で翻訳を担当してきた谷川俊太郎の対談まで用意されています。その中で、谷川が、スヌーピーのコミックについて「まずは品がいい。露骨な笑いではないのです。」と語り、そのユーモアのセンスは井伏鱒二に通じるものがあると話しています。資料としても価値があります。

さて、独特の文章と、モノクローム線画でユニークな作品を発表してきたエドワード・ゴーリー。柴田元幸によって数多くの作品が翻訳されて日本でも人気の作家になり、2016年には大規模な巡回展がありました。そのゴーリーの「ぼくたちが越してきた日から そいつはそこにいた』(河出書房新社/古書1150円)は、従来のゴーリーのイメージと違い、モノクロームではなくカラーです。

とある一家が、新居に引っ越してきた時、庭に大きな犬がいたのです、そのセントバーナードみたいなムク犬は、家族が近づこうが、雨が降ろうが、ただ黙ってそこにいるだけなのです。柴田曰く「はじめから終わりまで名前さえない そもそもこの犬の正しい名前は何なのか?が物語のテーマなのだ」

「ゴーリー自身、ほろっと泣かせるような物語なんて間違っても書かない」という柴田の指摘通り、子供と犬の涙の感動物語ではありません。しかし、ゴーリーと組んだことのある作者ローダ・レヴィーンの、じっと止まる大きな犬と、それに名前をつけようとする少年の物語は、少しだけ感傷的な味わいがあり、ゴーリーの中では珍しいと思います。

「いつかはきっと、正しい名前が見つかるとぼくは思う。ぼくはいまもしっかり取り組んでいる。犬は待っている。ぼくは考えている。ぼくたちはどちらも、がんばっている。」という少年のセリフで物語は幕を閉じます。二人、いや一人と一匹に、頑張れと声をかけたくなるラスト。ゴーリーファン必読です!

 

エドワード・ゴーリーの本が数冊入荷しました。ゴーリーは、1925年シカゴ生まれの作家で、独特の文章と独自のモノクローム線画で多くの作品を発表しました。ベケット等の戯曲作家の作品の挿画や、劇場の舞台美術などにも参加しています。日本版の翻訳は柴田元幸。

「不幸な子供」(河出書房新社/古本1050円)は、陰鬱で暗い救いのない作品です。裕福な家に生まれた女の子が、父親の戦死が原因で、どんどん不幸になっていき、あげくに失明し、道路に飛び出したところを、実は生きていた父親の運転する車に跳ねられて死んでしまうという物語です。車にひかれた娘の姿が、あまりにも変わり果てていたので、父親は気がつかないというところで終ります。200%救いのないお話です。そして、よぉ〜く見ると、各ページに目立たぬように不気味な小さな動物が、不幸な物語の道案内か、観客のように描かれています。これが怖い。

「キャシークラムのちびっ子たち」(河出書房新社/古本750円)は、AからZまでの名前の頭文字についた子どもたちが、数え歌のように次々と怪我や死に遭う。ただそれだけの、悲惨な絵本。左ページに英語の原文、右ページに白黒のペン画、画の下にキャプションのような邦訳がついています。韻を含んだ原文がリズミカルで、声に出して読みたくなりますが、恐ろしいことがさらりと書かれています。

“A is for Amy who fell down the stairs       B is for Basil assaulted by bears      C is for Clara who wasted away”

「Aはエイミー かいだんおちた Bはベイジル くまにやられた Cはクララ やつれおとろえ」

こんな具合にZまで続きます。そして、その文章に沿った絵が展開していきます。26人の子どもたちが、26通りの事故や犯罪に遭遇します。不幸の重箱みたいな絵本なのですが、何度も読みたくなるのは何故なのでしょう?

「うろんな客」(河出書房新社/古本800円)は、かなりシュールな展開なのですが、どこか笑える風変わりな物語です。冬の晩、館に妙な奴が闖入します。ペンギンのよう形態の動物ですが、声をかけても無視。明くる朝から、何でも食べる大喰らいの本性を表し、家にあった蓄音機の喇叭の部分を取り去るし、眠りながら夜中に徘徊、本を破る、もう滅茶苦茶です。しかし、不思議なことに一家はその客を追い出すこともせず、気づけば17年も同居しているというお話。

不気味ですが、滑稽。不思議なゴーリー世界を覗いて下さい。案外、ハマるかも………。

 

 

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