アイヌ民族に伝わる「イオマンテ」という儀式をご存知でしょうか。

彼らは冬の終わりに、ヒグマを狩る猟を行います。冬ごもりの間に生まれた小熊がいた時は集落に連れ帰って育てます。やがて、成長して(大体3年間)大きくなったら、集落をあげての盛大な送り儀礼を行い、そのヒグマを屠殺し、解体してその肉を人々にふるまう。この儀式は、ヒグマの姿を借りて人間の世界にやってきたカムイ(神)を一定期間大切にもてなした後、神々の世界に返すものと解釈されています。ヒグマを屠殺して得られた肉や毛皮は、もてなしの礼としてカムイが置いて行ったもので、集落すべての人間に分配されます。。地上で大切にされた熊のカムイは、天に帰った後も再度肉と毛皮を土産に、また戻ってくる。それが村の豊かさになる。

そのイオマンテの物語を寮美千子が描き、それを英語版にして、小林敏也のステキな絵と共に出版されたのが“The Ainu and the Bear”(R.I.C.Publications1600円)です。

“I am a newborn bear”という文章で始まるこの物語は、人と自然は共生している、というアイヌの知恵と思想を教えてくれます。英語は、平易です。しかも、CDが付いていて朗読を聴くことができます。耳と眼からこの美しい物語を味わってください。

さて、この本の中に、「キムンカムイ」という言葉が登場します。

「キムンカムイ」はアイヌ語で「クマ」を意味し、「山の神」ということを表現します。こんなアイヌ語を含めてアイヌを特集した雑誌「TRASIT34号」(800円)が入荷しました。 アイヌ文化の紹介、今を生きるアイヌの末裔たちの姿、ヘイトスピーチまでも含めた彼らを取り巻く諸問題まで取り上げられています。

この雑誌のもう一つの特集は「極北の夜空を見上げよう オーロラの煌めく街へ」です。オーロラの科学的解説に始まり、フィンランド、アラスカ、グリーンランドを訪ね歩いて、その美しさを捉えています。以前このブログで紹介した写真家かくたみほさんの新作「MOIMOIそばにいる」の中でも取り上げられていた、北欧の少数民族サーミやイヌイットが紹介されています。

アラスカと云えば、星野道夫を外すことはできません。写真家石塚元太良が、アラスカの星野の自宅を訪ねた時の思い出が載っています。本棚の写真を見ていると、彼の読書の幅の広さが伝わってきます。ねじめ正一の「高円寺純情商店街」も読んでいたんだ。

 

★レティシア書房臨時休業のお知らせ 4月17日(月)18日(火)連休いたします。

昨夜7時から、上村知弘写真展「Nature Connections」のイベントとして、ご本人によるトークショー「極北カナダ・ユーコン&アラスカの旅と暮し」を開催しました。20名以上の方々に参加していただき、狭い店内は熱気に包まれました。

上村さんが暮らしているカナダ・ユーコン凖州は、日本の1.3倍の大きさに人口たった37000人。人より野生動物の数の方が遥かに多い大自然のひろがるところです。

スライドで極北の四季が映し出されていきました。先ずは冬。この地で冬と言えば、世界最大の犬ぞりレース「ユーコンクエスト」が有名です。動画も駆使して、このレースの姿を臨場感いっぱいに紹介していただきました。2006年から「ユーコンクエスト」に出場している日本人女性マッシャー、本多有香さんの事も、彼女の著書「犬と走る」(在庫あります 800円)を手に取りながら、お話されました。上村さん自身も、保護された犬たちと趣味で犬ぞりを楽しんでいるとのことで、犬たちに対する気持ちがこもっていました。

長い冬が終り、春がやってくると、多くの動物たちが躍動し始めます。道路をホイホイ歩く親子のグリズリー(灰色クマ)の後ろ姿に、思わずみんな笑ってしまいました。そして夏、激流を下ってゆくカヌーを巧みに操縦する上村さんと奥様のタミーさんには拍手喝采。トークショーの途中には、タミーさんのお父さんの自家製スモークサーモンの差し入れ。燻製の香りにそそられ、一口食べたら止まりません。美味しいアラスカ!

短い夏が終り、あっという間に秋が過ぎ去り、冬の使者オーロラがやって来ます。もちろん、その美しく、幻想的な姿も動画でみせていただきました。太陽から吹き付けられる太陽風が原因となるオーロラは、銀河の彼方からの手紙みたいです。地球も宇宙も、人間だけのものじゃないよ、という事を確認させてくれる現象だと思います。参加者の中には、すでに上村さんのツァーでオーロラ経験済みの方もいらっしゃいましたが、未経験者たちは、ため息をついて、遠くカナダの空に思いを馳せました。

厳しい自然とともに生活しておられる人のお話を伺う度に、都会で暮らす自分の脆弱さを思い知らされます。ともあれ、ステキな時間を過ごす事ができました。上村さん、ありがとうございました!そして、お越し下さった皆様、窮屈な所でしたが、最後までお付き合いいただきまして誠にありがとうございました。ちなみに、もし旅に出掛けたいと思われた方、上村さんとタミーさんのガイドでいかがですか?

素敵なオーロラの作品の入った来年のカレンダー(一枚もの)は、写真展最終日まで販売しています(1100円)