本日より松本紀子さんの写真展が始まりました。

タイトルの「そのかわり その代わりに」というのは、シンガーソングライターのヤマモトケイジさんの「ストーリー」という楽曲にある言葉。松本さんはヤマモトケイジさんの紡ぐ言葉が好きで、5ヶ月に及ぶフォトセッションを重ね、彼の魅力を写真で表現しようと「ストーリー」の歌詞とともに小さな写真集「そのかわり、その代わりに」(税込1000円)を作りました。レティシア書房に写真集を持ってこられたのがお付き合いの始まりです。

アコースティックギターの音色が聞こえてくるような作品の数々。松本さんが、ヤマモトさんの音楽を愛し、深く理解しようとしたから撮ることのできた写真ではないかと思います。岡山市内にある大正時代に建てられた「禁酒会館」の中で撮影された写真は、風格のあるインテリアがとても素敵で、そこにだけ流れる静謐な空気を感じました。

「声あげたその日から  数えきれぬほどに重ねてきた  すてきなこと  許せぬこと  涙あふれるほどふるえること  ひとりひとりが胸にあずけたもの  思い出でこの星はあふれている  知らぬ間に時は往き  楽しみに待つことも  ああ、減りました  そのかわり  その代わりに  あなたの横にいる、それが楽しく  ひとつひとつが意味を紡がずとも  今ここにあるものが偶然でも  めぐる季節がうたうように終わる日まで  どうかこころのままに歩いてゆけ」

この写真展のテーマ「そのかわり その代わりに」の歌詞です。歌詞のひとつひとつが写真のタイトルになっています。遠くを見つめる眼差しと、目の前にある愛しいものたちが、美しく捉えられていて、穏やかな心持ちになる作品が並んでいます。幸せというのは、実は小さなもので、大きな幸せなんてものはないかもしれません。静かに考える時間、大切な人と過ごすひとときを大切にしたいと思う写真展です。

松本さんは岡山県出身、京都の大学で4年間過ごされました。この写真展が、東京、岡山、大阪に続き、懐かしい土地で開かれたことにささやかなご縁を感じて、またこの続きをぜひ見てみたいと思っています。残暑厳しい折ですが、少しほっこりした気持ちになってください。なお、ヤマモトケイジCD「青図点描集」(1300円)も販売中。(女房)

★松本紀子Photo Exhibition「そのかわり  その代わりに」9月10日(火)〜15日(日)12:00〜20:00(最終日は18:00まで)

 

 

 

 

 

2015年、映画をテーマにした「荒野の二人展」を、イラストレーター朝野ペコさん楠木雪野さんコンビにより開催しました。レティシア書房の名前の由来である映画「冒険者たち」から始まって、連想ゲームのようにセレクトされた映画のイラストが並んだ楽しい企画でした。続いて2017年の「続・荒野の二人展」には「私たちのするめ映画」という副題がつき、地味ながら味のある映画の一場面のイラストがずらり。そして、映画好きイラストレーター二人によるお待ちかね第3弾!!「新・荒野の二人展」のテーマは「ヒーロー」です。自分にとって「ヒーロー」は誰か?ヒーロー映画とは何か?という二人の問いに、想いを巡らせてください。

選ばれたヒーローたちは、カッコいい「グロリア」のジーナ・ローランズや、「ドラゴンへの道」のブルース・リー、「サムライ」のアラン・ドロンもいれば、「幕末太陽傳」のフランキー堺というひねりの効いた人もいて、やっぱりこの映画好きの二人、一筋縄ではいきません。

モノクロの朝野さんの作品は、計算されたこれしかない!という気持ちのいい線は相変わらずですが、今にも次のシーンに続く動きがあって新鮮な感じがしました。シャッ!とか、バン!なんていう音が聞こえてきそう。「ピンポン」(写真上)の緊張感は本人が卓球を始めたせいもあるのか…….。ちなみに朝野さんが映画好きになったきっかけになった映画は「狼たちの午後」とか。

一方の楠木さんは、白い画面を大きくとった構図に、少しだけ加えられた色彩が美しい。添えられた文字がとっても上手くて洒落ています。こんな程よい軽やかさは、簡単そうに見えて実はとても難しいと思うのですが、センスの良さに舌を巻きます。映画好きになったきっかけになった映画は「明日に向かって撃て」、R・レッドフォードが楠木さんのヒーローだそうです。描かれた「コンドル」のレッドフォードには愛を感じます。

それぞれの作品には、「どんな映画?」「どんなヒーロー?」の説明が書かれていて、一つ一つ読んでいくのも楽しいです。私のヒーローは、「十二人の怒れる男」のヘンリー・フォンダかな。この展覧会が終わるまでに今まで見てきた映画をゆっくり思い出してみよう………。それにしても毎回楽しいこの企画。ぜひ続けてほしいと願っています。(女房)

なお、作品は全て販売しております。「ヒーローオリジナルグラス」(1200円)、ポストカードなどのグッズも販売中。

「新・荒野の二人展 ヒーロー」は8月24日(土)〜9月8日(日) 12:00〜20:00(最終日は18:00まで)月曜定休日

 

 

自称”お散歩フォトグラファー”で、建築家・インテリアデザイナーの呑海龍哉さんが、ブータンを訪れた時に、そこに暮らす人々を撮影した作品を集めた個展が本日より始まりました。

呑海さんが書かれた文章によると、他のアジアの国々では働いているために学校に行けない子供達を多く見かけるというのに、ブータンでは働いている子供達がいないのだそうです。国が子供の教育に力を入れているのです。そして、ブータンの人々は大地の恵みに感謝し、毎日何百回と祈りを唱え、国と国の文化に誇りを持っているというのです。チベット仏教を心の拠り所にして、お金や物質に振り回されることなく、穏やかに暮らす人々の美しい写真が並びます。

真ん中に、横幅1mあまりの大きなモノクロの作品「大地の恵み」が飾られました。空の広さ、澄んだ空気を感じ、そこで働く女性の力強さ圧倒されます。この写真は今年4月、フランスのサントスアートサクレに出展され、GalerieCombes賞を受賞しました。

呑海さんの写真展は2017年に続き2度目になります。連日36度を超えるような猛暑日の京都ですが、ブータンの自然と人々の優しい笑顔をご覧いただければと思います。(女房)

「ブータン祈りの大地」呑海龍哉写真展は、7月30日〜8月18日まで。なお、8月7日〜18日は恒例の「レティシア書房夏の古本市」を開催しますが、その間も写真展は一部を入れ替えて展示いたします。(8/5、8/6、8/12は休み)

 

 

 

さて、7月27日(日)北海道の森末忍さんと、京都で酒器を作っておられる「今宵堂」上原さんのトークショーが当ギャラリーで行われました。主催は NPO法人京都カラスマ大学。森末さんと畠山さんが作っている「その界隈 北海道と京都」というミニプレス10号発刊を記念した「僕らの界隈展」の開催最終日に実現したとても楽しいひとときでした。こだわった紙面作りをしているミニプレス「その界隈 北海道と京都」ですが、上原さんの掘り下げた質問に答えて、デザインのこと、文字情報の面白さなどについて1時間余り語っていただきました。その中で、しんどいこともあるけれど作り続けるコツは「やめないこと」と森末さんがおっしゃっていたのが印象的でした。何でもそうかもしれませんね。司会進行は京都カラスマ大学代表の高橋マキさん。猛暑の中ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

 

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東京の書店「Title」店主辻山良雄さんの「ことばの生まれる風景」(ナナロク社/2484円)は、とっても素敵な本です。辻山さんの文章は、本への愛情に満ち溢れています。そこで紹介されていた作家の多くは、うちの店長のリスペクトしている方々で、レティシア書房店長日誌に思いをこめて紹介しました。そのブログをコピーして辻山さんに送ったそうです。そうしたら、なんと辻山さんからご連絡をいただき、「nakaban(なかばん)さんの原画展を全国で巡回していますが、そちらでされますか」というご提案をいただきました。願ってもない話に我々は飛びつきました。

そうして実現したnakabanさんの原画展が、本日より始まりました。

ナナロク社の担当川口さんとメールのやり取りを重ね、「ことばの生まれる風景」の中の全ての原画を見てみたいという欲望を抑えて、選んだ12点の絵画。本の印刷もレイアウトも素晴らしいのですが、改めて原画の持つ力強さに、なんというか心打たれました。重ねられた色の深さ、筆の運び、ことばの中から一枚の風景を描くという力技。

店の扉の近く一番初めには、星野道夫「旅をする木」を飾りました。これは、星野道夫が大大好きな店長のたっての希望です。古本屋の本棚の前で手に取ったアラスカの写真集に見入る青年の姿。その周りにはアラスカの大自然が広がり、彼の未来が見えています。夏目漱石「門」は、都会の車窓の景色。原画で見るとより暗がりの深さが際立ちます。深沢七郎「楢山節考」の雪景色は寒さが滲みます(私はこの絵が大好きです)。エンデ「モモ」は、より身近に感じたくて柱に掛けました。夜、一人で建物の中に座り静けさに耳を傾けるモモを満天の星が見守っています。どの作品もいつまでも見ていたい。願わくはずーっとここに居て欲しい。

初日に辻山さんが来てくださって、一緒にゆっくり展示を見て「京都だから『方丈記』を入れても良かったですね」と言われ、迷った末にやめたことをちょっと後悔しました。

展示前の日曜日には、nakabanさんも立ち寄ってくださいました。実はnakabanさんの原画展(やはり辻山さんとのコラボです)は「誠光社」さんでも、昨日から同時開催中なのです。日曜日はそちらの搬入だったのだそうです。それにしてもnakabanさんの原画展を私たちの本屋で出来るとは思ってもいなかったので、とてもとても嬉しいです。さらに「ことばの生まれる風景」の著者お二人ともにお会いできて、幸せでした。店長日誌を辻山さんにお送りして本当に良かった。発信してみるもんですね。(女房)

●nakabanさんオリジナルスタンプを、しおりに押してお持ち帰りいただけます。このスタンプは、原画展をされた各書店のイメージに合わせてnakabanさんが作ってくださいました。ちなみにレティシア書房のデザインは女性の横顔。いいでしょ!

 

♫トーク&ライブのお知らせ  

7月13日(土)18時30分より 『澤口たまみ(語り)石澤由男(ベース)ライブ』

今年1月、当店で行われた「宮沢賢治愛のうた」(澤口たまみ著)出版記念イベントのお二人のトーク&ライブが再びやってきます。澤口たまみがさんが岩手のイントネーションで賢治作品を朗読。ベーシスト石澤由男が伴奏を添えます。 朗読作品は、岩手の自然を見つめ、野原や林からおはなしを貰ってきたという「鹿おどりのはじまり」他を予定。

●18時受付開始  18時30分より (2000円)ご予約ください。

                     075−212−1772(レティシア書房)

 

 

『常日ごろ使ってもらえるような  季節になったら思い出してもらえるような  置いて和んでもらえるような  そんなものが作りたくて  日々制作しています。』

田頭さんがこう綴っておられる通り、さりげなく日常生活に馴染む使い勝手の良さそうな器が並びました。

毎年、精力的に個展を開催されているのでいつかレティシア書房で、とお話ししていたところ今夏やっと実現しました。

初夏らしいしつらえで、苔玉が涼しげに揺れています。苔玉のカバーにも使える素敵な器、スープもたっぷり入りそうな大きめのティ一カップ、なんとも可愛いい果物や気球の絵付けが施された豆皿、小さな一輪挿し、優しい色合いのぐい呑、赤い土を生かしたカップなどなど。どれも思わず手に取ってみたくなるものばかりです。

私自身も彼女のお皿を毎日のように使っていますが、控えめで、それでいてどこか愛らしい。作品にお人柄が出ていると思っています。

今も絵付けの勉強はずっと続けておられて、毎年仲間の方々と作品展をされています。今回壁に飾った大皿(写真上)には、港の風景の絵が描かれています。ここにお寿司なんか盛ったらもちろん豪華なおもてなしになりますが、ここでも田頭さんの器は堂々とした形だけれど、はにかんだような優しい藍色で控えめです。

素敵な陶器のブローチ(2700円〜)も加わりました。季節の変わり目、ぜひ新しい自分用の器を探しにお立ち寄りください。(女房)

 

「田頭由起 陶展」は6月18日(火)〜30日(日)12時〜20時 (最終日は18時まで)月曜定休日

 

 

♫トーク&ライブ決定 7月13日(土)澤口たまみ(かたり)石澤由男(ベース)

今年1月、当店で行われた「宮沢賢治愛のうた」(澤口たまみ著)出版記念イベントのお二人のトーク&ライブが決定。ゆったりとした豊かな時間の流れた前回同様、今回も期待度大です。賢治の言葉とウッドベースの響きが心地よく胸に伝わってきます。

 

 

 

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雨上がりの緑の木々が目に美しい本日より、はしづめさやか「緑の時間」展がはじまりました。

 

はしづめさんが、この展覧会に寄せた文章に、小学校の図書館で借りて読んだある本(「広太のイギリス旅行・緑色の休み時間」)の記憶が心にずっと残っていたと書かれています。5月に本屋のギャラリーで個展をすることを決めて、作家の記憶の底に横たわっていた緑の本が蘇ったらしいのです。ずっと前に読んだ本が、時を経て形になって絵に現れるなんて素敵なことです。水彩絵の具の上に色鉛筆で重ねたタッチが優しく、幸せな気持ちになれるような草花の絵がたくさん並びました。はしづめさん自身が、優しい人たちといっぱい出会い、そのご縁を一つ一つ大切にされてきたのだと思います。

絵が納められた額の多くは、木彫をされているお父さんの手作りだということです。個展に向けて、その額と対話しながら絵を描いてきたとお聞きました。そこにも温かな時間を感じます。なお、スウェーディッシュフォークミュージックのCDジャケットのデザインをされた関係で、このCD(2500円)を店内で流しています。お聞きになりたい方はお申し出くださいませ。なんかとってもいい感じに絵と合っています。

今まで作って来られた絵本もいくつか展示されています。小学生の作ったお話に、絵をつけた一点ものなどです。仕掛け絵本もあり、ゆっくりページをめくるのが楽しいです。また、12種類のポストカードは150円で販売しています。普段は編集のお仕事で忙しい毎日だそうですが、小さな自然に向ける優しい眼差しが、小さな本屋に清浄な空気を満たしてくれました。これもご縁。ありがたいことです。(女房)

「緑の時間」はしづめさやか展覧会は、5月21日(火)〜6月2日(日) 12時〜20時 最終日は18時まで月曜日定休 

 

 

 

当店での個展が3回目となる、たがわゆきおさんの個展「夏を旅する」展が始まりました。サブタイトルに「水彩で描く南欧の風景」とあるように、2015年〜2017年にかけて旅したイタリア、フランス、スペインの各地を水彩で描いた作品が展示されています。

イタリア北部、ミラノ付近に位置するコモという町にある、コモ湖はスイスと国境を接したリゾート地です。湖畔の町レンノでサマーバケーションを楽しむ人たち、街角の静かな風景を描いた作品など、ゆったりとした時間が流れます。

また、パリ近郊の港町オンフルールを描いた一枚は、帆船とその向こうに広がる街並み、そして夏空が描かれています。プロヴァンスにある、エクサンプロヴァンスという街角にあるカフェを描いた一枚。午前中のカフェの雰囲気が素敵です。このカフェの前の道はセザンヌのアトリエへとつながっていて、その向こうに広がるレ・ローブの丘をたがわさんは描いています。杉木立の彼方には、サン・ヴィクトワール山が見えています。ご存知のようにセザンヌも、この山を何度も描いています。

古代ローマ時代に整備されたアッピア街道(写真左)は、古代ローマの歴史好き、遺跡好きには欠かせない軍事街道です。大きな松の木の向こうに遺跡が見えていて、イタリアの暑い夏を吹き抜ける風の音が聞こえてきそうですが、本当に暑い場所だそうです。

イタリア中部の町アッシジにある城壁と、仕事帰りのライトバンに乗せた犬を描いた作品には、夕暮れ時のほのぼのとした風情が漂っています。

ヨーロッパの街角が見せる、様々な表情をお楽しみください。

 

★「夏を旅する。展」水彩で描く南欧の風景は19日(日)まで開催中。

12時〜20時(最終日は18時まで)月曜日定休

 

フェルト作家の鈴木オリエさんの絵の展覧会が本日より始まりました。

2012年3月に京都で開催された「羊パレット」で、初めて鈴木さんのフェルト作品を見て、その色の美しさと、スックと立った造形に惹かれました。ご縁があって2016年11月、レティシア書房でフェルト展を開催することができました。店長の選書、例えば宮沢賢治や池澤夏樹などを読んで、作品を作っていただくというワクワクする展覧会でした。鈴木さん独特のビビッドな色をまとったフェルトの立体作品、男の子やクマなどがギャラリー一杯に物語を運んでくれました。

それから3年、念願の第2弾。美術大学でデザインを専攻されていて、絵は子供の頃から大好きで描かれていたのですが、フェルト作家としてずーっと活躍されていたので、今回は作家にとって初の「イラスト展」となりました。アクリル絵の具や色鉛筆を使った深い色合いが、書店に馴染んで落ち着いた雰囲気が漂います。フェルト作品を作り出すのと同じように、丁寧なタッチで一つ一つ愛おしむように描きこまれています。最近、猫を飼い始めたとのことで、どうしても目の前にいる同居人(?)がテーマになるとか。本好きの彼女が描く童話のような世界が広がっています。

二度と描けないということで、残念ながら作品は全て非売です。ゴールデンウイーク中、この辺りは比較的静かで落ち着いていますので、お時間があればぜひお立ち寄りくださいませ。鈴木オリエの新しい魅力をぜひ見ていただきたいと思います。(女房)

「鈴木オリエ イラスト展」は4月24日(水)〜5月5日(日)12時〜20時 月曜日定休

 

レティシア書房はゴールデンウイーク中も通常営業しております。(4月29日は定休日)

 5月6日(月)〜8日(水)は連休いたします。

 

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春爛漫。

本日から片山陽子さんの染色展「感じる・話す」が始まりました。

蒲公英(たんぽぽ)を描いた一連の小さな作品は、いつの間にか花が近くで咲いていて、気がついて目を留めたと思ったら、またいつの間にか綿毛になって飛んで行った、というような時間の経過を感じます。

空を駆け上がる龍も、黒い雲の間から稲妻とともに勇壮に飛ぶイメージとは違い、どこからともなく目の前にフワリと現れたと思ったら、すーっと消えていく夢の世界にいるような不思議な生き物のよう。橘からイメージした「あの日の精霊」という三作品も、そこにいたはずの花の精が、風に舞って目の前からいなくなって、本当に見たのかどうかわからない儚い感じがします。いずれも、静かな時の流れの中で、頬に当たる風や、目の前を横切る暖かな光のような不思議な優しさ。

片山さんは、岡山県出身。倉敷芸術科学大学工芸学科染織コース卒業後、京都市内の工房で10年間友禅の仕事に従事しました。現在は地元で、別の仕事の傍ら作品制作を続けておられます。キャンバスに絵の具で絵を描く代わりに、染めならではの、滲み、ぼかしの特長を生かして、布地に描いていきます。布地は、糸の捻りによって滲み方や味わいが変わっていき、下絵通りにならないところも面白みになったりするそうです。

今回の個展では、手描き友禅の技法をベースにした片山さん独特の、ふわりとした浮遊感のある美しい作品が並びました。人が生きていく上で、周りの大切な人たちとの交流、側にいる動物や植物に対する愛情など、「活きている」ものたちと自分との間にあるやりとりを決して大声ではなく、小さな声で優しく語るように染め上げられた片山さんの初めての展覧会になりました。ギャラリーもすっかり春の空気で満たされています。お花見のついでにお立ち寄りいただければ幸いです。(女房)

 

●片山陽子染色展『感じる・話す』は4月9日(火)〜21日(日)12時〜20時(最終日は18時まで)月曜定休日

 

 

 

 

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強烈なモノクロの銅版画、二宮さち子「愛の夢」展が本日より始まりました。

少女漫画から飛び出たような個性的な女性が、こちらを見つめます。細密に描かれた花と女性に、なぜかむせかえるような妖艶な色気のようなものは感じません。その大きな瞳は、もっとどこか遠くを見ているのかもしれないし、感情を隠して仮面の下からこちらの様子を伺っているようにも見えます。全く違うもののように思えるかもしれませんが、見ている側の感情によって変わる能面に通じるような顔を追求しているのかもしれません。仕上げにキラキラしたラメがかけてあり、それが洒落た味を添えています。

描きこんでいくと、どこまでも細かくさらに密になっていく手をどこで止めるのか、おそらく葛藤を続けながら作品を一つずつ仕上げていかれるのでしょう。二宮さん曰く「下絵を描くと、後は職人のように淡々と作業する」銅版画という手法を選んだことが、品の良さに繋がっているような気がします。

森茉莉の「甘い蜜の部屋」からインスパイアされた「モイラ」シリーズ(写真左)も素敵です。今後は、もっと人間の動きを形にしていくためにデッサンを重ねていくと意欲的です。さらなる飛躍が期待できそうです。二宮さんの個性的な銅版画の世界をお楽しみください。

なお、作品は全て販売しております。ポストカードも4種類あります。(女房)

 

 

★「愛の夢」二宮さち子銅版画個展 4月2日(火)〜7日(日)12時〜20時 当ギャラリーにて

 

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