珍しい絵本アートのシリーズが出品されていました。立風書房が80年代に出版していた「幻の絵本館」シリーズです。そのシリーズの中でも、ナサニエル・ホーソーン作、アーサー・ラッカム絵による「ワンダーブック」(3000円)とウィリアム・M・ティムリン作絵(翻訳は船崎克彦)の「星の帆船」(3000円)は貴重です。ネットでいい物なら、4000円ぐらいの高値です。下鴨の古本市(今年も開催中)で、一昨年、「星の帆船」を発見しましたが価格を見たら5000円でした。(しかも表紙が汚れまくりでした!?)

さて、「ワンダーブック」ですが、作者のナサニエル・ホーソーンは、我が国ではアメリカ文学の古典「緋文字」で有名です。この絵本は、ギリシャ神話、伝説の再構成なのですが、「ほとんど創作に近い」と児童文学者の吉田新一は、あとがきで書いています。「白鯨」「嵐が丘」と共に19世紀三大復讐小説として評価される「緋文字」という暗く、重たい(私は途中で投げ出しました)小説を書いたホーソンが、子ども向けにこんな陽気で明るい話を作り上げています。

絵を担当したアーサー・ラッカムは、絵本黄金時代を代表するイラストレーター。絵本好きならご存知ですね。「クリスマスキャロル」「マザーグース」など多くの作品で使われています。因みにW・ディズニーの長編アニメ「白雪姫」に参加して、背景のデザインを担当していました。

「星の帆船」は、やっと巡り会った一冊です。原作者ウィリアム・M・ティムリンは、建築家で作家ではありません。殆ど無名に近い人物ですが、極めて高度な質を持った本を書き上げました。昨今のファンタジー文学の原点とも言える絵本です。「ゆくてにはイルミネーションをぶちまけたような天の川の光の帯がせまっています。」という文章で船は宇宙の大海原に出航していきます。これって、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」と同じ世界観です。ティムリンも賢治も理工系の理論家。だからこそ、こんな美しい物語を描き出せるのかもしれません。

このシリーズは、全10作品でリリースされており、今回9作品が集まっています。その中には岸田矜子訳、ケイト・グリーナウェイの「遊びの絵本」(2000円)なんて楽しい一冊もあります。ゆっくりとご覧下さい。これだけ、揃って出るのは、ホントに珍しい。

 

★8月9日(水)〜20日(日)「レティシア書房 夏の古本市」開催。個性的な28店のよりすぐりの古本が大集合です!(14日は休み)

暑い日が続きますが、お立ちよりください。

8月21日(月)〜25日(金)は、夏期休業いたします。よろしくお願いします。