1975年生まれのアサノタカオさんは、2000年にブラジルに渡り、日系移民の人類学的調査に従事し、その後日本に戻り、東京の出版社で編集者として出版に携わる一方で、神奈川県にサウダージ・ブックスを立ち上げ、2020年随筆集「読むことの風」(1980円)を発行しました。

「読むことの風」はアサノさんが各種の雑誌に寄稿したエッセイやコラムをまとめたものです。自分を見つめ直すための言葉がいっぱい詰まった本だと思います。京都でのある出来事を綴った詩を見つけました。

「京都の善行堂で  詩の本を買ってバスに乗る  座席にすわり  かばんから本をとりだし ページをひらいたとたん たまらない気持ちになって 本をとじて かばんにしまう そして、かばんから本をとりだし ページをひらいたとたん  また、たまらない気持ちになって 本をとじて カバンにしまう そんなことをくりかえし 次の停留所を告げる 車内アナウンスを聞きながら この時間から降りるべきだろうかと 自問する」(2011/7.1京都)

「たまらない気持ち」という言葉が妙に心に引っかかってきます。

この本に挿画を描いているのが、絵本や様々なデザインワークで活躍するnakabanさんです。東京にある書店「title」の店主辻山義雄さんが出した「ことばの生まれる景色」(ナナロク社/古書1850円)で挿画を担当されました。出版社と辻山さんのおかげで、その時に、nakabanさんの挿画展を当店で開催できました。今回は大好きなnakabanさんの2回目の作品展になりました。

旅先で、あるいは本を読んだとき、アサノさんは言葉を紡いでいきます。nakabanさんが描く水の入ったコップの絵は、音楽のようにアサノさんの言葉に寄り添っているみたいにみえます。透明なグラスの中の透明な液体が、周りの色を吸い込むように取り込んで、自ら静かに発光しているよう。本では白黒の挿絵でしたが、原画は美しい色合いで存在感があります。本当にステキな展覧会になりました。この場をお借りしてアサノさんとnakabanさんに心より御礼申し上げます。

本を読んでいない方も、ぜひお越しください。じっと見ていると、コップがこちらに語りかけてくるようにも、また自分の気持ちを覗き込むような感じにもなります。(作品は、4点を除き非売品です)

なお「読むことの風」には、「夏葉社」の島田潤一郎さんとの対談「ことばは個人的なちいさい声を守るもの」という小冊子が付いています。お二人の言葉に対する思いが伝わってきます。(店長&女房)

⭐️アサノタカオ随筆集「読むことの風」刊行記念nakaban原画展は、9月22日(水)〜10月3日(日)13:00〜19:00 月火定休日