京都生まれで知床在住の絵本作家、あかしのぶこさんの絵本原画展が本日より始まりました。

今回は、福音館書店「ちいさなかがくのとも」の「あなほり くまさん」(2021/11/1 発行/440円)の原画4点に加えて、現在、知床自然センターのギャラリーで開催中の「しれとこの みずならが はなしてくれたこと」(2022/3 知床財団発行/1980円)から、表紙絵をお借りしてきました。さらに、「しれとこのきょうだいヒグマ ヌプとカナのおはなし」(知床財団発行/2530円)から表紙絵と、福音館書店「ちいさなかがくのとも」の「ふくろうのこ おっこちた」(2020/5/1 発行/440円)の原画2枚という盛り沢山な展示です。

「あなほり くまさん」は母グマと二匹の子グマが、冬眠する穴を掘って眠る物語。「クマは冬眠中に生まれて、春から秋を母親と過ごし、もう一度一緒に冬眠します。つまり、オスのクマならば、生まれた時とその翌年のそれっきり、他のクマの温もりを感じながら眠ることはもう二度とないのです。」(折り込み付録の言葉より)そんな貴重な親子の時間が、知床の森の風景と共に描かれています。あかしさんのクマは、本当に表情豊かで生き生きしています。絵本に登場する脇役のカケスが可愛いんです。

「しれとこの みずならが はなしてくれたこと」は、朽ちた大きなみずならの穴に逃げ込んだヒグマが、みずならの声を聞く物語です。年老いたみずならが、知床の自然と人間の関わりをヒグマに語ります。知床国立公園内の開拓地を保全するための取り組み「知床100平方メートル運動」の活動の一環として、あかしさんと知床自然センターの協力で作られました。1977年、斜里町が始めたナショナルトラスト運動は画期的なものでした。乱開発の危機にあった土地を守るため全国から寄付を募ったところ、1997年には49000人が参加、ほぼ全ての開拓跡地を買い取ることができました。その後も原生の森と生態系の再生を目指し、運動が続けられています。先週旅行中に、知床自然センターでの原画展を見ることができました。京都の個展に、表紙絵を貸してくださったセンターの方々に改めてお礼を申し上げます。ぜひ絵本を手にとってみてください。

「ふくろうのこ おっこちた」は、巣立ちを間近にしたシマフクロウの子どもの表情が楽しくて、私の大好きな絵本です。今回ぜひ原画を展示してほしいとお願いしました。飛ぼうとして落っこちてしまったシマフクロウの子が、びっくりしてガシガシと木を登るところが面白い。シマフクロウの巣箱かけのボランティアをした経験などが、この本を作るのに役に立ったそうです。ずっと温めてきたテーマを絵にした、あかしさんのシマフクロウに対する熱い思いが詰まった素敵な絵本です。

あかしのぶこさんの個展は3回目です。京都と知床をつなぐ絵本を手にとって、ヒグマやシマフクロウに思いを寄せていただけたら嬉しいです。絵本の他に、ポストカード(1枚100円)も販売しています。(女房)

「あかしのぶこ えほんのえ展 2022」は9月21日(水)〜10月2日(日) 13:00〜19:00 月・火定休日

 

 

 

1933年3月3日、岩手県で昭和三陸地震が発生しました。地震は、遠く北海道浦河郡荻伏村にまで到達します。この日、この村で生まれたのが宇梶静江です。「両手に入るくらいの超未熟児、しかもしわしわで、まるで猿の子のような児でした。」

「大地よ!アイヌの母神、宇梶静江自伝」(藤原書店/古書1800円)という400数十ページの大作を読み終わりました。本の帯に「女の一生」と大きく書かれています。大作ですが、とても読みやすい。まるで本人が読者に向かって、彼女の生涯を語ってくれているような身近な感じがします。アイヌの子として生まれた彼女が、どんな差別を受けながら育ってきたかは、一言では言い表せません。

戦前には「アイヌも混血して和人化された娘が、生活に困ると、小樽あたりに売られていくのです。」

明治32年アイヌ保護という名目で「旧土人保護法」が制定され、アイヌの財産は没収、アイヌ語彙の禁止などアイヌ文化の全てが奪われていきます。それは昭和になっても同じで、自分たちのアイデンティーを搾取されたまま、アイヌたちは生きて行かざるを得ません。「差別だけが横行する教室は、アイヌの生徒には寒々としています」とは、小学校時代の雰囲気です。

でも、そんな苦難に満ちた彼女の生涯を語っただけの本だとしたら、深い感情を呼び起こす一冊にはなっていなかったはずです。

アイヌ民族が持つ深い精神性が、どれほど私たちに必要なものなのかがゆっくりと語られていきます。

16歳の頃、彼女は山の中でシマフクロウに出会います。その姿が、63歳から作ってきた古布絵の作品の中で蘇ります(右写真は個展のポスター)。多くのアイヌの同胞たちと関わりながら、現代文明への問いかけを続けます。

「アイヌの精神性は、きっと地球がもたらす尊いことを心の深くに据えて、敬って生きることではないかと思うのです。だから山の中で茸などに出会うと、敬って感謝する。『ありがとう茸さん、あなたを頂いて食べさせて頂きます、そしてあなたと生きるのです』と言って唄ったり、踊ったりします」

コロナウィルスの感染で、新しい生き方、考え方を模索せざるえない今こそ、読んでほしい一冊です。

本書の最後の方に、当店でも個展をしていただいた版画家の結城幸司さんが登場します。アイヌ伝統文化を映像や音楽、版画で表現し、さらに世界の先住民たちとの交流にも尽力されておられます。彼のことは当ブログでお読みください。

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