かつて、ヒーリングあるいは癒し系の本としてネィティブアメリカンの本が流行りました。どうでもいいいような内容の本も多くありましたが、是非読んで欲しいと思うのは、ナンシー・ウッド著・金関寿夫訳「今日は死ぬにはもってこいの日」(めるくまーる/古書850円)、ジョセフ・ブルチャック編・中沢新一+石川雄午訳「それでもあなたの道を行け」(めるくまーる/古書800円)の2冊です。

「今日は死ぬにはもってこいの日だ。生きているもの全てが、わたしと呼吸を合わせている。すべての声が、わたしの中で合唱している。すべての美が、わたしの中で休もうとしてやって来た。あらゆる悪い考えは、わたしから立ち去っていった。」

生きること、死ぬことをこれほど簡素に、しかも深く描いたものはないと思います。この二冊の本は、ゆっくりと読むことをお薦めします。簡単な文章ばかりなので、一気に読もうと思えば読めますが、それでは意味がありません。ゆっくりと、ゆっくりと、心の中で反復することで、彼らの心とシンクロナイズしてください。アメリカ大陸の雄大な自然と共に、暮らしてきた中から生まれてきた彼らの精神は、きっと読者の心の中に染み込んできます。

 

ところで、最近ネィティブアメリカンの悲しい世界を知る映画を見ました。「ウインドリバー」です。ネィティブアメリカンの女性たちの失踪件数が急激に増加しているにも関わらず、一度も調査されたことがない現状。彼らが住む、いわゆる保留地の生活環境の悪化、広大なその保留地に警官が数名しかいないという危険等を、映画の背景に溶け込ませたサスペンス映画です。

主人公は、この地の野生管理局に勤務するハンターです。彼が、雪の上に若い女性に死体を発見したところから物語は始まります。捜査にやって来た FBIの女性刑事と共に、その死因を探ってゆくうちに、やりきれない現実に直面することになります。舞台となるウインド・リバーは、全米各地に点在するネイティブアメリカンの保留地のひとつで、荒れ果てた大地での生活を強いられた人々は、貧困やドラッグなどの慢性的な問題に苦しんでいます。保留地で頻発する女性たちの失踪や性犯罪被害も多発しています。現代のアメリカの繁栄から見放された”忘れられた人々”の姿を、正統派のサスペンス映画に仕立て上げたテイラー・シェリダン監督の腕前に拍手です。

主人公のハンター、コリーを演じるのはジェレミー・レナー。「ハート・ロッカー」「メッセージ」などでめきめきと頭角をあらわしてきた役者ですが、実にいい!マッチョ的な強さではなく、人生の悲愁を滲ませた佇まいが様になっています。復讐は、賛美されるものではありませんが、この映画のラストには溜飲が下がる思いでした。

 

★連休のご案内  8月5日(月))6日(火)は恒例「レティシア書房 夏の古本市」(8/7〜8/18 参加27店舗)の準備のためにお休みさせていただきます。