2003年、アメリカを中心にした連合軍がイラクに侵攻。連日猛爆撃を行いました。その時、イラクの文化的中心都市バスラにあった図書館に勤務するアリアという女性が、爆撃から約3万冊の本を守りました。図書館は爆撃で破壊されましたが、アリアのおかげで、本は無事でした。アリアも戦火をくぐり抜けて生きています。

このアリアの活躍を描いた絵本が、ジャネット・ウインターの「バスラの図書館員」(晶文社/古書900円)です。戦争が近づいていることを察知した彼女は、政府に本を安全のため移動するように頼みましたが、却下されました。そこで彼女が取った行動を、こんな風に絵本は語ります。

「アリアさんは、みずから行動をおこすことにしました。毎晩毎晩、図書館が閉まったあとに、アリアさんは、図書館の本を自分の車にはこびいれました。」

爆撃が激しくなり、図書館にいた人たちも逃げ出しました。彼女は友人に残りの本を運び出す手伝いを要請し、図書館の隣にある彼のレストランに本を運び込んだのです。やがて、爆撃は終わります。

しかし、

「やっと戦争というけだものは、町をでてゆきました。町が静かになっても、アリアさんは安心しませんでした。もし、本が無事だとわかったら、戦争というけだものは、きっと町にもどってきます」

その後、避難させた本を自宅と友人の家に分散させたのです。

今なお、中東には平和は訪れていません。でも、彼女はいつか平和が来ると信じて、本とともにその日を待っているのです。奇跡のような物語ですが、事実です。絵本化したジャネット・ウインターは、画家ジョージア・オキーフの生涯を絵本にした「私。ジョージア」で知られる人です。その時に翻訳のタッグを組んだ詩人の長田弘が、今回も担当しています。

2003年、NYタイムズとのインタビューでアリアさんは、言いました。

「コーランのなかで、神が、最初にムハンマドに言ったことは、『読みなさい』ということでした」と。

(注)ムハンマドは570年頃 生まれのイスラム教の開祖で、軍事指導者、政治家。