ジョアン・シュウォーツ(文)シドニー・スミス(絵)による絵本「うみべのまちで」(BL出版/古書1350円)は、「平和」とはこういうものだ、という真実を描いています。

時代は1950年ごろ。舞台はカナダ東部大西洋岸のケープ・ブレトン島。海底の炭鉱で働く父親と家を守る母親、そして語り手である少年の毎日を描いた絵本です。海を背景に、炭鉱へと向かう男たちを映画的なワイドスクリーンに収めたショットで絵本は始まります。

「ぼくの とうさんは たんこうで はたらいている。 たんこうは うみの したに ほった トンネルだ。」と少年は語ります。

質素だけれど、清潔感あふれる家。少年には「ぼくの うちからは うみが みえる。」家です。「あさ、めをさますと いとんな おとが きこえてくる。カモメの なくこえ、イヌの ほえるこえ、うみぞいを はしる くるまのおと、ドアを パタンとしめて 『おはよう』という だれかのこえ」

静かに時間が経過していきます。「カーテンを あけると、めの まえに うみが ひろがる」。今起きたばかりの少年が、パンツ姿で海辺を見つめています。さわやかな海風がこちらにも吹いてくる様です。

「そのころ、とうさんは うみの した くらい トンネルで せきたんを ほっています」

という文の繰り返しで、海底で腰を屈めて石炭採掘に従事する男たちの絵が何度も登場します。

父親が働いている時間、少年は友だちと遊びまわったり、お母さんの言いつけで町へお買い物に出たりと楽しい一日を過ごしています。その雰囲気がとても心地良いのです。

「きょうは とても いいてんきで うみが ひかっている」

その平和な風景が、心に染み込んできます。夜、仕事から帰ってきたお父さんを囲んで夕食の語らい。

「きょうは ゆっくりと うみに しずんでいく」

風景を見ながら、一家はうつらうつら。

特別なことは何も起こらないけれど、ゆっくりと満ち足りた時間が過ぎてゆく。これを平和と呼ばずに、なんと言えばいいのか…….。

すぐに暴言を吐く大統領も、問題の渦中の首相も、ぜひお読みいただき「平和」という意味をお考えくださればと願います。