大福書林が、ウズベキスタンとタシケントの地下鉄駅の素敵な装飾の世界を紹介した「メトロタシケント」(新刊/1980円)に続いて、ポルトガルの首都リスボンの地下鉄の駅々にあるタイル装飾を撮影した写真集「メトロリスボン」(新刊/ 2200円)の刊行しました。その記念として写真展を開催します。

1955年にリスボンの地下鉄の建設工事が始まりました。しかし、予算不足で装飾に回す資金がなくなり窮地に陥ります。その時考え出されたのが、安価で入手が容易だったモザイクタイルを代用することでした。59年に地下鉄は開通し、地下鉄の発達と共にモザイクタイル画も増えていき、地下鉄の壁がきらびやかになりました。本書の著者の鷹野律子さんは、地下鉄の主要26駅と、リスボンはじめポルトガルの街を彩る美しいタイルを探して歩き回りました。

とにかく美しい!これを見ることができるのかと思うと、ぜひ行ってみたくなりますね。今回は、写真集から一部を展示しています。既刊の「メトロタシケント」から、タシケントの地下鉄の美しいタイル装飾の写真もご覧いただけます。ウズベキスタンの地下鉄は、旧ソビエト連邦時代に建築が始まり、モスクワの地下鉄を意識した、駅ごとに装飾が違う華やかなものです。

今回、京都市内にあるポルトガルタイル専門店「アズレージョ・ピコ」さんのご協力で、可愛らしいタイル作品を出していただきました。ポルトガルの女性陶芸家インディーラさんの手描きタイルは、おおらかなデザインの一点物です(5500円〜)。そのほか、職人による異国情緒溢れるタイル(1320円〜)が並んでいます。インテリアの新しいテイストに加えてみては如何でしょう。

さらに、鷹野さんが作ったタイルをあしらったヘアゴム、ブローチ、マグネット(各500円)も販売しています。

フィンランドを代表するセラミック・アーティスト、ルート・ブリュックの個展を観るために伊丹市美術館へ出掛けました。彼女の事を知ったのは、以前ブログで紹介した「はじめましてルート・ブリュック」(ブルーシープ/ 売切)を手に取った時です。詩情を湛えた美しい作品をぜひ実際にみたいと思っていました。

幼少期をストックホルムで過ごした彼女は、蝶類研究者であり、画家でもあった父親の影響で自然や美術に親しみます。会場には、キラキラ光って、今にも飛び出しそうな蝶の作品も数多く展示されていました。大好きだった父親と蝶の作品には、父への愛情が溢れています。

学生時代は建築家志望でしたが、グラフィックデザインに転向します。当時から彼女が持っていた繊細で詩的な世界観が、アラビア製陶所の目にとまり、1942年に美術部門のアーティストとして入所しました。アラビア製陶所は、スウェーデン・ロールストランド製陶所の子会社として、1873年にフィンランドのアラビア地区に設立されたのがはじまりだそうです。90年代からは、英国のアーツ・アンド・クラフツの芸術家を招いてオリジナルの食器をつくり始めていました。

全く陶芸の経験も知識もなかったブリュックは、この製陶所で技術を習得し、職人たちと共に独自の成型技術を開発し、オリジナルの陶板制作をスタートさせます。果物や鳥、建物など日常的なモチーフを描いた陶板は、どれも美しく、眺めているだけで幸せな気分にさせてくれるのです。旧約聖書にある「ノアの箱船」をモチーフにした作品は、箱船に乗った動物たちが生き生きと描かれています。

50年代後半、彼女の作風は具象から抽象表現へと流れるように変化していきます。さらに1970年代後半から、教会や市庁舎など公共建築のための大型壁画を手がけ始めます。おそろしく膨大な数のタイルを手作業で組み合わせた作品は、高度な技術力と抜群の造形力で、力強さに圧倒されます。前期と後期で大きく作風が変化している彼女の作品を、通して見ることができます。

1958年に発表された「都市」は、タイルと立方体で構成され、床に設置された大きな作品です。上から見下ろしたり、地面にしゃがみ込んで見たり、と長い時間眺めていました。できることなら太陽光線のもと展示して、太陽の移動と共に、光と影に変化を見られたら最高です。

大きなミュージアムで、膨大な作品を展示している美術展は疲れますが、伊丹市美術館のブリュックの個展は、程よい大きさで、幸せな時間を過ごせました。

因みにブルーシープからは「ルート・ブリュック 蝶の軌跡」(3240円)というタイトルで公式図録も発売しています。一度、店頭で手に取ってご覧ください。