山崎まどかは、比較的若い女性に人気ではないでしょうか。2002年、「オードリーとフランソワーズ」(晶文社/古書600円)が出たとき、いわゆる「乙女カルチャー」という言葉が躍り出て、彼女もそんなカルチャーの紹介役として支持されました。私も当時、通読しましたが、本好き、映画好き、アート好きの女性たちのニュースタンダード紹介本か、ぐらいの印象しかありませんでした。

しかし、「優雅な読書が最高の復讐である」(デイスクユニオン/古書1900円)を読んだ時、その深い思索と、文学への愛情に圧倒されました。ごめんなさい、山崎さん…….。

「本屋や古本屋で本を漁り、買って、読み、語り、愛でることでひろがる世界、そのユニークで熱心な研究と軽快なレポート」

とは、ふたば書店店長の清野さんの推薦文です。「熱心な研究と軽快なレポート」とは、よく言い表していると思います。この本は、白い紙に書かれた書評部分と、ピンクと、イエローの紙に印刷された日記、そしてブルーの紙に印刷された岸本佐知子との対談「年始年末におススメ 女子のための翻訳小説」に分けられています。どこから読んでもOK! 私なんか、面白そうな本が登場する日記部分と、書評部分を交互に読みました。

ただ単なる書評ではなく、言うべきことはきちんと主張しています。例えば、1945年夏、NYのティフアニーで働く二人の若い女性を描いた マージョリー・ハートの小説”Summer at Tiffarny’s “では、自由を謳歌する二人には、はるか彼方の日本への原爆投下のニュースが流れてきます。本来なら、彼女たちと同じように自由を謳歌できたはずの日本の女性たち。その歴史的事実に目を向けた著者は、こう言います。

「アメリカがいいとか、悪いとか、そういうことではない。少女たちに平等に与えられるはずの『人生最高の夏』を奪うナショナリズムは、どんな国のものでもくだらない」

と、バッサリ切り捨てます。乙女ちっくな感性と、新しい文学の向こうに広がる世界をきちんと見ているところが両立しています。甘すぎず、辛すぎずというところです。

彼女は、エッセイ、書評だけでなく翻訳にも携わっています。台湾系アメリカ人作家、タオ・リンの「イー・イー・イー」(河出書房新社/古書1100円)です。若い世代の退屈と憂鬱を独特の文体で描いた小説ですが、私には意味不明、これはおふざけか?、なめとんのか、と途中で放り出しました。しかし、著者は翻訳者として、こう擁護します。

「甘ったれの退屈と孤独と憂鬱はどんな時代にも語られるべき題材なのだ。違う言葉で。新鮮な言葉で。『イー・イー・イー』には青いリンゴのような端々しく甘酸っぱい、真新しい虚無が描かれている。」

彼女に読まれる本は幸せです。そして、「優雅な読書が最高の復讐である」を読む貴方には、本を読む幸せが訪れるはずです。