京都の出版社烽火書房より出た浪江由唯著「世界の紙を巡る旅」(2860円)の出版記念展がスタートしました。著者は大学時代、文化人類学を専攻し、その時にネパールの紙に出逢いました。そこから「紙」に魅了されて、大学卒業後、2019年から翌年にかけて約1年間、世界の紙を求め、「世界には、どんな紙があるのだろう。どうすれば、手仕事の紙は残ってゆくのだろう。旅の初めに抱いた疑問」を持って、世界へと飛び出しました。工房を訪問し、出会った紙を日本に持ち帰ったのです。アジア、北アメリカ、バルト三国、ヨーロッパと渡り歩き、そこで入手したものを整理し、各国で感じたことを文章にしてまとめたものが本書です。今回は、入手した中からほんの一部を展示しました。

メキシコで見たアマテについて、本でこう書かれています。

「紙の繊維を編みこんだり叩き潰したりして作られるアマテは、果たして紙と言えるのだろう

か。紙の定義に則れば、アマテは紙とはいえない。用途も、文字を記すよりも壁に飾られたり呪術の装飾に使われたりすることの方が多いらしい。」

実物を3点(写真右・上段がアマテ/下段は韓国の紙)飾っていますが、なるほど、紙にしてはゴツイし、存在感が半端ではありません。触ると暖かい感じがして著者が惹かれるのが何となく分かります。読むだけではわからない紙の魅力を再認識しました。

日本でも話題になった手書きの本を出版するインドのタラブックスで、印刷のミステイクで出た紙という珍品(?)も一点展示してあります。交渉されたとは思いますが、よくもまぁ、職人が自分の失敗作を放出したものですね。

販売コーナーでは、タイやネパールの紙で製作された封筒、メッセージカード、美しい透かしの入った紙(ブックカバーにもなります)などを販売しています。数量に限りがありますのでお早めにどうぞ。

⭐️「世界の紙を巡る旅」展は4月14日(水)〜25日(日)まで13:00〜19:00 月・火定休

インドの小さな出版社タラブックスについて書かれた「タラブックス」(玄光社/古書1700円)。タラブックスの出す手作り感一杯の絵本は、何度読み返しても、飽きてのこない本です。この出版社がどんなポリシーで本を出しているのか、今までに出版された本、タラブックスで働いている人びとのインタビューなど、さまざまな角度から魅力を探っています。

タラブックスは、1995年、独立系児童書専門出版社として、スタートしました。出版社を引っ張るのは二人の女性です。創設者のギータ・ヴォルフは、比較文学を学び、パートナーのV.ギータは、編集者であり、作家であり、また子どもの教育や女性問題などの社会問題に取り組んでいます。タラブックスが目指したのは、インドだからこそ生み出せる、インドの子どもたちに読ませたい、インドの子どもたちのための本です。

「六ヶ月かかります」

これは、内外からの注文に対するこの出版社の返事です。どれだけ長い時間がかかろうと、本の職人たちが自信を持って届けられるかが大切な事なのです。良い物は、時間がかかるのです。私たちは、何でもすぐに手に入る時代に生きています。常に新しいものを提供され、洪水のような商品とサービスに慣らされています。

「大量生産と大量消費と大量破壊は繰り返される。目新しいものに飛びつく一方で、私たちは成長を強いられる資本主義経済にうんざりし始めている。いつまで大きくなりつづけなければいけないの、と。」

タラブックスの考え方は、こういう時代へのアンチテーゼでもあります。そして、タラブックスは、少数民族、インド社会から見捨てられた弱者も積極的に会社に迎え入れ、働く場所を提供しています。本に携わる人たちが豊かに暮らせる会社を目指しています。

ギータ・ヴォルフとV.ギータのインタビューが掲載されていますが、その中で、ギータが、会社を大きくすることに意味がなく、小さい規模で全てのメンバーと共同作業をしてゆく重要性に触れながら、こう述べています。

「本(仕事)の質を保ちながら、私たち同士の良い関係性を保ち、働いている人たちとその仕事の関係性を保つためには、比較的ちいさくあるということが大切」

出版社の紹介から、仕事のあり方、社会の在り方までに言及していきます。

巻末に、この出版社が出した書籍が、カラー写真で紹介されています。まだタラブックスのことをご存知ではない方は、このリストをご覧ください。なお、6月25日から、京都細見美術館で「世界を変える美しい本 タラブックスの挑戦」展が始まります。これは、行かねばなりません。

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昨日、東京で活躍中の写真家、疋田千里さんが新作ミニプレスを持って来られました。

彼女とのお付き合いは、「とちぎのいちご」(売切れ)というミニプレスを作って来店されたのがきっかけでした。最初は「とちぎのいちご?」売れるのかな〜と思っていましたが、店に置いてみると特に女性が手に取られる事が多く、結局完売しました。

その後、ブラジルへ行って”A Vida no Brasil/A Day in The Life”(1200円)という写真集を、次はインドへと渡り”Traveling with Spiices”(1404円)という写真集を出されました。

後者の写真集(写真右)には、今、本好きの間で注目されている、南インド、チェンナイの小さな出版社タラブックスが紹介されています。この出版社が出す本はすべて手づくりで製作されていて、疋田さんの写真集でもその工程を見ることができます。(東京板橋区美術館では現在タラブックスの展示会が開催中です)

さて、今回持ち込みの新刊は”ohashi_to”(1512円)。お箸を使う国、日本と韓国と台湾を巡る旅の写真とアジア料理研究家の外処佳絵さんによる「お箸が似合うごはんたち」というレシピ集がセットになったものです。フツーのおっちゃんやおばちゃんが大衆食堂で食事をしていたり、屋台のにいちゃんの姿を写した作品にご当地料理の匂いが漂っています。

外処佳絵さんのレシピは、「チャプチェご飯」、「韓国ジャージャン麺」、「塩レモン焼きそば」、「ビビン冷麺」、「卵焼きクレープ」等々、どれも美味しそう。彼女によると「韓国は歴史をさかのぼると、銀の箸は毒を盛られた際に反応する素材だったので使われていましたが、現代では、ニンニクや唐辛子といった香りや着色しやすい食材を多く食べるので、金属のお箸が主流」だそうです。

疋田さんの3つの写真集をパラパラとながめていて、面白いことを発見しました。ブラジルの写真集には、路路にせり出した果物屋の軒先で、台車に乗ってホッと一息ついたおっちゃんの後ろ姿があり、新作では、やはり路上に突き出た八百屋さんで黙々と作業をするおっちゃんの後ろ姿が捉えられています。のどかで平和な風が吹いています。ぜひ日本のおっちゃんの後ろ姿も撮ってください。

なお、12月3日まで、一乗寺に移転したマヤルカ古書店さんで”ohashi_to”発売記念の写真展が開かれています。