レティシア書房では2回目の、ハセガワアキコさんの銅版画展。前回2015年、本好きの作家の深く緊張感のある版画の世界へ誘われました。今回は、また違った魅力的な展覧会になっています。

今回のテーマは「Blue」です。最近の作品の中から、果てしない宇宙の、海の底の、空の、草木のイメージをはらんだ青い色を使った版画を選んで展示しました。物語が先にあって、形を決め、追求していくというのではなく、なんというか、自由で伸びやかなデザイン。作品を創って行く過程で、素材が語りかけるものを受け入れ、楽しんでやりとりして間口を広げて行く、柔らかな感じがします。

「風」「夏銀河(写真左)」「蒼(写真下)」「海底」「天高く」「月に吠える」など、自然に身を委ねるような、緩やかな動きのある作品が並んでいます。それぞれに使われている青色が涼やかで印象的ですが、その中にも作家の持つ文学性は流れていて、何処かで出会った懐かしい風景のようにも、これから見る夢のようにも見えます。

入り口すぐの所に飾られた、「交差するモノ」(写真上)は、ドライポイントのあたたかなタッチで、おおらかな作品。「狭き窓へ」は、レイチェル・カーソンを読んでいるときにイメージが湧いた作品で、小さな窓から見る湖や林のような景色は、何を意味しているのでしょうか。銅版画の方法は多様だそうですが、どの作品も、長い時間をかけて培った技術に支えられた表現が効果的で、見ていて心地よさを感じました。

 

そして、ハセガワさんの作る小物はいつも素敵なのですが、今回も、栞(500円)、キーケース(600円)、折り紙札入れ(900円、)紙挟み(1000円)、ペンダント(1500円)、蔵書票(2000円)など個性的なものが揃っています。 手に取ってご覧ください。

暑い最中ですが、素敵な版画の世界を覗きにお運び頂ければ幸いです。(女房)

尚、ハセガワさんが所属する「京都銅版画協会ミニアチュール展」が、ギャラリーヒルゲートで開催中です。7月22日まで。

ハセガワアキコ版画展は7月18日(水)〜29日(日) 

 12時〜20時 最終日は18時まで 月曜定休日

 

 

 

 

 

アルゼンチンを代表するボルヘスの小説「砂の本」の一節に

「砂と同じくその本にも はじめもなければ終りもない、というわけです」とあります。

この「砂の本」に深くインスパイアされて、迷宮的世界を版画にして、一連の作品に仕上げられたハセガワアキコさんの「バベルの書室」展が始まりました。

ボルヘスは、その生涯一度も長編小説を書いていません。ほんの数ページの作品も沢山あります。削ぎきった簡潔な文章で、異常な世界を描いてゆく作家です。麻薬的な恐怖みたいな世界へと誘われる、アブナイ作家の一人です。ハセガワさんがモチーフにした「砂の本」は、無限のページを持つ一冊の本が登場します。その世界を元に製作された版画も、不思議な魅力に溢れた作品です。暗黒の空間に浮遊するオブジェ。いかん、この世界にのめり込むと、戻れなくなるかも。でも、ゆっくりと漂っていたいと思わせる作品です。

他にも、11世紀のペルシャの詩人ハイヤームの四行詩を集めた「ルパイヤート」からは「一滴の水だったものは海に注ぐ。一握の塵ちりだったものは土にかえる。この世に来てまた立ち去るお前の姿は一匹の蠅はえ――風とともに来て風とともに去る。」を作品化されています。また、レイチェル・カーソンの名著「沈黙の春」の一節を作品化したものもあります。

「生きている集団、押したり押し戻されたるする力関係、波のうねりのような高まりと引きーこのような世界を私たちは相手にしている」を版画にした作品なんて見たくなってくるでしょう?

神秘的で、幻想的な世界が誘われて、作家の内部に流れる音楽を奏でる魔笛が聴こえてきそうです。小さな本屋の壁に静謐な世界が広がりました。

版画作品と、作家さんが製作されたミニ本も展示販売しています。また、影響を受けた愛読書を装幀した本も展示(非売)しています。

 

 

 

ハセガワアキコ 「バベルの書室」展 

4月28日(火)〜10日(日) 5月4日(月)は定休日

★4月28日、29日、5月2日、3日、10日に在廊予定です。