五十嵐大介といえば、「海獣の子供」、「魔女」でお馴染みの漫画家です。「海獣の子供」は劇場用アニメとして2019年に公開されましたので、ご覧になった方も多いと思います。

自然に生きる動物、風景を緻密に描き込んだ画風で、自然界を舞台にした幻想的な物語を送り出してきました。

「ディザインズ」(講談社/古書1〜3巻各300円)では、遺伝子操作で誕生したヒトと動物のハイブリッド種HA(ヒューマナイズド・アニマル)が、戦闘用にデザインされて、紛争地帯の投入される姿が描かれています。(全5巻)

ディストピア風の未来を描いてきた五十嵐の絵本「バスザウルス」(亜紀書房/新刊1760円)は、不思議な優しさに満ち溢れています。

森の中に棄てられたバスが、朽ち果ててボロボロになっています。ある夜、オンボロバスに手が生え、足が生え、尻尾が出てきます。怪獣バスザウルスの誕生です。町の中を歩きまわりますが、ちょっと疲れて、バス停で一服していました。

すると、「バスがいて助かった」と一人のおばあさんが乗ってきます。バスザウルスは動き出します。おばあさんは、「ここでおります。どうもありがとう」と言っておりました。それから、不思議なことに毎日おばあさんが乗ってくるようになったのです。夜の街をギシギシとバスザウルはおばあさんを乗せて動きました。

しかし、ある日を境にピタリとおばあさんは来なくなります。バスザウルスは待ち続けます。そして1000日。ついにバスザウルスは、お婆さんを諦めて街を出て行きます………。

棄てられたバスが歩き始めるユーモア、誰もいない夜の町のちょっと不気味な雰囲気、そしておばあさんとのほのぼのとした交流と永遠の別れ。

おばあさんは、この世の最後を、不思議な乗り物のような海獣のようなバスザウルスに乗って楽しんだのか、あるいは天に召された後、自分の故郷に未練があって、もう一度見たいと思って、バスザウルスの力を頼って戻ってきたのか、などと様々な想像を巡らせました。温かみのある水彩画のタッチ、色も、動きを感じる構図もとても魅力的です。

 

 

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