北海道発の雑誌「スロウ」の最新号は特集「パンは語る」です。北海道のパン屋さんの記事読んでも、買えない…..。その通りですが、登場するパン屋さんの話がとても面白いのです。

「自家製酵母」でパンを焼いているパン屋さんが、数件登場します。道東の清里町、Luna Liena/ルナ・ジェナの藤原世利子さんは岡山県出身。彼女が北海道でパン屋をやるまでのプロセスは、映画みたいに波乱万丈なので本誌をお読みいただきたいと思うのですが、彼女がパン作りに目覚めたのは、2008年。偶然手にした「秘伝 自然発酵のパン作り」という本との出会いでした。ここから発酵の魅力に取り憑かれた彼女は、2007年地元岡山でパン屋を開業。そして2015年、「広いところに行きたかったから」という理由で北海道に移住し、開業しました。

酒蔵のように、その家ごとに異なる菌がいて、作る側にもそれぞれ異なる菌がいます。だからこそ自然発酵のパン種で仕込むパンは、その家の味へとなっていきます。

「目には見えないけれど、菌はあちこちに存在しています。彼らと助け合いながら、共に生きているんです。それを忘れないでいたいと思います」と彼女は言います。周囲の環境、そこに生きる動植物、そして菌たちと繋がっている。そんな中から、ほっこりとさせてくれるパンが出来上がっているのです。

北海道西南の伊達市にある「てんねんや」の林れいかさんは、埼玉県出身。自家培養の天然酵母を幾度か代替わりさせながら、天然酵母でパンを焼き続けて15年。使用される小麦はほぼ100%北海道産、全粒粉やライ麦は、無農薬無化学肥料で育った地場産ものをメインにして、ナチュラルでシンプルな味わいのパンを作り続けています。

「この先、どんな時代になったとしても、子どもたちには何があっても生き抜いていける強い身心を持って欲しいから、生命力に満ちた『本物の食べ物』を残してあげたいと思うんです」と、二人の子供を育てるお母さんらしいメッセージです。

特集は、こんな風にそれぞれの人生の中でパンに出会い、パン屋を営む人々の姿を紹介しています。パンの消費量日本一を誇る京都人なら、この特集を見逃すことはできません。写真もとても素敵で、あれも、これも買いたくなってきますよ。ちょっと遠いけど…..。

「言いわけのように明るく、ぽってりとした夜中の満月は、菓子パンのなかのクリームの練り上げたような黄色をしていると思った」

これ、石田千の「月と菓子パン」(晶文社500円)の最後の文章です。全く彼女のことを知らない時、書店で何気なくページを開いた瞬間に飛び込んできました。思わず、クリームパンが欲しくなってきました。そして、このエッセイ以上にパン屋に走りたくなる本が入ってきました。

池田浩明著「パンラボ」(白夜書房800円)です。帯にこう書かれています「バターのような、ジャムのような、そばにあるとパンがおししくなる、パンの図鑑」と。

パンの原材料の小麦の話に始まり、パンの作り方、そして様々な種類のパンの解説へと広がっていきます。日本のパンの王道、「あんぱん」については、5ページを使って詳細の書かれています。名物店13種類の名物あんぱんを見ているだけで、豊かな気分になります。「ハムレッット」に「さ、さ、尼寺へ」という台詞がありますが、さしずめ「さ、さ、パン屋へ」ですね。「こしあん及びつぶあんの一般理論」というエッセイまであり、いつも店先で迷う中身(粒あんかこしあんか)についての考察が述べられています。(他のパンについてもちゃんと書いてあります。個人的嗜好でつい読みました。)

もちろん、「全国お取り寄せ」もちゃんとあります。でも、それ以上にお読みいただきたいのが、「パンを配る」です。これは、東北大震災で被害に遭った人達の元へ、パンを届けた15店のパン屋さんんの奮闘記です。

本の最後に書かれているパン屋さんの言葉、

「よりよいパン」というのは皆を平和に導くパンのことである。まず健康になって平和になろうという考えを起こさせるパンでなくてはならない。そういうパンを作っていこう・・・

あの、あんぱんまんも言ってます。

「さあ、僕の顔を食べなさい。いつもおなかのすいた人を助けるのだ」

 

Tagged with: