ベトナム映画「走れロム」(京都UPLINKにて上映中)は、汚水、腐りかけた食べ物、安酒と煙草の匂いにむせかえるようなサイゴンの裏町が舞台です。この町に住む少年ロムは、巨額の金を手に入れることができる「闇くじ」の当選番号の予想屋として生計を立てています。

もともと違法な賭けなので、そこに集まる連中は信用できない輩ばかり。通りの街角では賭け金をめぐる暴力が日常風景になっています。そんな欲望と暴力に満ちた町を、ロムは誰よりも早く自分の予想番号を伝えるために疾走します。その姿をカメラは一緒に走りながら捉えていきます。おそらく本物の町でロケしたのだと思いますが、まるで「走ること=生きること」みたいなロムの姿を見るだけでこの映画は価値があります。

ベトナム政府公認の真っ当なくじの当選番号の末尾2桁を予想して、金を賭ける違法くじ。そこには胴元やら、賭け屋やら、走り屋が複雑に絡み合い、しのぎを削っています。ベトナムの労働者階級の8割が知っていると言われるこのくじは、一気にひろがる都市開発に取り残され、仕事もなくした人々が、膨らんだ借金を返すために、ハイリスク/ハイターンの金をつぎ込み、社会問題化しているらしい。映画は、その辺のことをきっちり描いていないので、もう一つ、ちゃんと理解できません。

でも、いいのです。親に捨てられた孤児のロムが、ライバルでもあり友達でもあるフックと、騙し騙され、殴り合いながら、金を求めて疾走する姿がこの映画の全てです。

委細構わず、ツッ走れ! 監督は1990年サイゴン生まれで、本作が長編デビューのチャン・タン・フイ。どうだ、おもろいやろ!お前も走れ!と叫ぶ監督の声が聞こえてきそうな傑作です。

 

●夏季休業のお知らせ  勝手ながら8月9日(月)〜17日(火)お休みいたします

私が出演するZOOMミーティング「フライデーブックナイト」の第1回が、今月20日に決定しました。ご興味のある方は下記アドレスまで

https://ccacademy.stores.jp/items/60fd4e1bbc1e6422b5501a4b