1993年にスタートした松本清張賞は、エンタメ系の小説に与えられる賞です。2021年満場一致で受賞したのが、波木銅の「オールグリーンズ万事快調」(文藝春秋/古書1000円)です。

この作家は現役の大学生で、弱冠21歳。女子高生が主役で、マリファナを学校で育てるというとんでもない物語です。

作家の中島京子が「おもしろかった。『万事休す』の状況なのに、この愉快さ。作者には天性の資質が感じられた。この賞が人生を狂わせないことを切に願う」と、帯に書いています。才能が爆発する瞬間が、確かにここにありました。

舞台は茨城県の田舎にある落ちこぼれが通う工業高校。三人の女子高校生には、それなりに未来に夢はあるのですが、もう現実はどん詰まり。家庭内環境も滅茶苦茶、学校ももうどうでもいいや、みたいな日々。それが、ひょんなことから学校の屋上菜園でマリファナを育て、あろうことか金を稼いでいきます。三人に悪びれたところなんか全くなく、クソ田舎にバイバイするには金だ!とばかりに行動していきます。

自虐的な笑い、シニカルな視点、オフ・ビートな文体で、一気に突っ走ります。ヤバいキケンな青春小説です。小説家の森絵都は「正直、粗の多い作品だとは思う。巧いとは一度も感じなかった。が、際立って面白かったのは事実」と書いていますが、「際立って面白かった」のは同感です。暴力シーンにセックス絡みのシーンと続きますが、どこか笑えてくるのです。

マリファナを育てるために、校舎屋上を園芸部として使用したいと、メンバーの一人の矢口が先生に許可をもらいに行くシーンです。

「教頭は微笑む。『はは。そうかぁ。矢口さんも、こう見えて女子だなぁ。お花が好きなんだね』

は?うるせぇ。マリファナだよ……..と明かしてしまうとすべてが台無しになるので、秀逸な愛想笑い(自分でもそう思うくらい)を浮かべ、まぁ、はい、と控えめに頷く。」

万事この調子です。とてもとても、素敵な高校生活とは呼べないどん底の状況なのに、タイトル通り「万事快調」とマリファナ作りに邁進する彼女たちに、拍手したくなってくる本当にヤバい小説かもしれません。

さらに彼女たちが卒業した後、「この活動をさ、後輩に継承してくってのはどうかな。金に困ってるヤツ、私たちの学校にいっぱいいると思うんだ」という明るさです。

で、絶対に学校推薦指定図書にはならない物語はどう収束するのか?改心する?まさか!

「きっとマトモなところには辿り着けない。それでも、まぁ、いいか。彼女たちは混乱のさなか、とりあえず、そう思った。」

彼女たちのこれからを応援したくなりますよ、きっと。

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勝手ながら、8/29日(日)は臨時休業させていただきます。