フランシス・レイ(18年11月死去)に続いて、ルグランも天国へ行ってしまったのか…….。若き日に観たフランス映画で、煌めくような音楽を届けてくれた方々でした。

誰もが知っているクロード・ルルーシュ監督「男の女」の、ブラジリアンテイスト溢れる音楽を作ったフランシス・レイ、ジャック・ドミー監督「ロシュフォールの恋人たち」でジャズテイスト一杯のスインギーなサウンドを楽しませてくれたミシェル・ルグラン。監督の力量はもちろんですが、この二人の作り出すサウンドは、おしゃれで華麗なフランス映画というイメージを、私に、いやあの時代フランス映画を観ていた人に、間違いなく刷り込んでくれました。

ルグランは、1932年作曲家のレイモン・ルグランの息子としてパリに生まれました。パリ国立高等音楽院で学び、1960年代に、ジャック・ドミー監督「シェルブールの雨傘」でカンヌ映画祭で最高賞を受賞して以来、映画音楽家として第一線で活躍しています。

「シェルブールの雨傘」は、ミュージカル映画としては異色で、セリフなし、全編歌と踊りで進行します。人気のある作品ですが、私はあまり好きではありません。それよりも、何と言っても「ロシュフォールの恋人たち」が断然いい。「バカラック、ルグラン、ジョビン」(平凡社/古書1300円)の著者、小沼純一は、この映画を「出会いと別れ、再会の物語だ。他愛もないといえば、充分すぎるほど他愛ないし、お伽噺めいている。ご都合主義と呼んでもいいかもしれない。」と手厳しい意見を書きながら、詳細にルグランの音楽を語っていました。

そうなんです、この映画はどこにでもあるメロドラマなんです。けれども、ドミーとルグランが、これ以上幸せになれない程の気分にしてくれるのです。私は映画館で追いかけ、ビデオを買い、ブルーレイを買い、さらに、CD、レコードまで買い集めました。

映画音楽の巨匠となってからは、ハリウッドにも進出して、多くの映画を担当。ベスト1は、ノーマン・ジュイスン監督スティーブ・マックィーン主演の「華麗なる賭け」でしょう。どちらかと言えば、無骨なイメージの強かったマックィーンが、憎めないやんちゃな少年がそのまま大人になったイメージで登場して、これ以上洒落た人物はないという姿を見せてくれました。ジュイスン監督の技巧的な画面処理と、やはりルグランの流麗なサウンドが大きかったと思います。

12月26日、ルグランが86歳でこの世を去った時、リステール文化相は「今朝、われわれはみな、ミシェル・ルグランの歌を口ずさんでいる」とTwitterに投稿しました。母国でもこんなに愛されていたのですね。

 

 

 

★レティシア書房 恒例「女子の古本市」は2/6(水)~2/17(日)です。出店者は女子ですが、もちろんどなたでもご来店くださいませ!今回も27店程にご参加いただきます。お楽しみに!

「女子の古本市」準備のため、4日(月)5日(火)はお休みいたします。


 

サウンドトラックのアナログレコードを、何点か入荷しました。聴いてもよし、飾ってもよし、というものをご紹介します。

リバイバル上映が決定した「危険な関係」(輸入盤4000円)。60年代の上流階級の退廃的な世界を描いた作品で、ジェラール・フィリップとジャンヌ・モローの、大人の雰囲気にしびれます。ふんだんにモダンジャズを使用していて、ジャケットデザインもスタイリッシュ。ドラムの御大、アート・ブレイキーの横顔の後ろにうっすら浮か上がるフィリップとモローの姿。ジャズと煙草とクールな恋の雰囲気が匂い立つようで、映画のポスターより、こちらの方が私は好きです。

もうひとつフランス映画、ミシェル・ルグランのゴージャスでジャズ感覚に溢れた傑作ミュージカル「ロシュフォールの恋人たち」(輸入盤2LP/8000円)。昨年、監督のジャック・ドミー追悼映画祭で、上映されていました。ドミー&ルグランコンビでは、「シェルブールの雨傘」が人気ですが、ミュージカルの楽しさを十分に味わえるのは断然「ロシュフォールの恋人たち」でしょう。主演の二人、カトリーヌ・ドヌーブ、フランソワーズ・ドルレアックの掛け合いは、フランスのエスプリ一杯です。一日を楽しく過ごすには、先ずこの音楽から(個人的な趣味ですが)。ジャケットを眺めているだけでも楽しい。

3枚目は、映画史上最も年齢の若い二人で演じられた「ロミオとジュリエット」(日本版500円)。レナード・ホワイティングとオリビア・ハッシーの演じる悲恋物語にうっとりされた方も多いと思います。表ジャケットは、オリジナルポスターをそのまま使用しています。二人の見つめ合う表情が初々しい。音楽は、巨匠ニーノ・ロータ。サントラには、一部、劇中の二人のセリフも収録されています。

最後にご紹介するのは、「男と女」のその後を描いた「男と女II」(輸入盤3500円)です。こちらもジャケットデザインがいいです。前作「男と女」で主演を演じた時と、十数年後の二人の横顔をレイアウトしてあります。恋に落ちた若き日の二人と、中年に差し掛かった二人。3枚の写真に時の流れを感じます。

レコードプレイヤーのない方にも、アート作品としてお部屋に飾ってほしいジャケットです。

店内で「危険な関係」のレコードを鳴らしていた時、来店された美しい方がこちら(→)です。ジャンヌ・モローのファンかもしれませんね。

 

 

ミュージカル映画との出逢い…….。「サウンド・オブ・ミュージック」「マイ・フェアレディ」「ウエストサイド物語」等が最初の体験でした。どれも名作と呼ばれていても、私には全然面白くありませんでした。突然朗々とした声で歌い出されると、もう、堪忍してぇなぁ〜という気分でした。

しかし、50年代前後のアメリカMGMミュージカルの名場面を集めた「ザッツ・エンターテイメント」を観るに及んで、踊って歌うってこんなに人を幸せにするんだ!!と、打って変わって病み付きになってしまいました。

そして、フランス映画「ロシュフォールの恋人たち」が決定打となりました。何度DVDで見直した事でしょう。すれ違いのメロドラマを、こんなに粋に、ロマンチックに、洒落た感覚で映画にした監督ジャック・ドゥミ=音楽ミシェル・ルグランのコンビに脱帽しっぱなしです。

「ロシュフォールの恋人たち」公開50年を記念して、丸ごと一冊この映画を中心にしてドゥミ作品、ルグランの音楽のことを解説した本「シネマ・アシャンテ」(立東舎1800円)が出版されています。映画評論家山田宏一によるドゥミ監督、ルグランへのインタビューが満載です。なんと350点にも及ぶ図版が掲載されていて、本編を知らなくても、ウキウキ楽しい気分になります。

なにより、主演したカトリーヌ・ドヌーブとフランソワーズ・ドルレアック(ドヌーブの姉)が美しい。フランスのべっぴんさん姉妹です。ドヌーブはジャック・ドゥミ=ミシェル・ルグランコンビによる「シェルブールの雨傘」に主演していますが、「ロシュフォールの恋人たち」が最高です。

本の後半には、映画のポスター、レコード、チラシ等が数多く収録されています。公開された国が違えば、ポスターのデザインは結構違っていて面白い。とにかく、楽しい一冊です。

店にはリマスター完全盤「ロシュフォールの恋人たち」(2CD2600円)もあります。ルグランの華やかな音楽が楽しめます。

また、ドゥミ作品のロケ地を訪ね歩く「パリから向かうフランス映画の港町」(リヴル・アンシャンテ 1400円)というガイドもあります。

(※「パリから向かうフランス映画の港町」売切れました。)

 

★お知らせ  

京都シネマで「ジャック・ドゥミ×ミシェル・ルグラン特集シネマ・アンシャンテ」と題して、「ロシュフォールの恋人たち」が11月25日(土)、30日(木)は12:25から、12月3日(日)、6日(水)は10:00からそれぞれ上映されます。ぜひ!