京都の現役大学生たちが、様々な世界で活躍する職人さん達へのインタビューをまとめた「想いのしおり」(1000円)を創刊しました。念珠職人、陶芸家、金箔職人、西陣織、竹屋さん、畳屋さんなど総勢16名が登場します。

不器用な私なんかと、最も縁遠い所にいる職人さんたちの話は、どれも興味津々でした。「引彫」、「染匠」、「綴織」など、どんな仕事をするのか知らない世界に生きる人たちの、日常を垣間みることができました。

また「職人」=「堅苦しい」というイメーですが、そんな常識に違和感を唱える念珠職人。片岡正光さんは、どちらかと言えば、オープンに楽しくやりたいというスタンスです。

「一生懸命仕事しながら楽しく仕事したいと思っています。話していて『えっ、職人さんですか?こんな仕事しているんですか、嘘でしょ?本当に職人さんですか?」と言われるほうがいいと。職人さんが無口だというのは、こちらの思い込みですよね。

また、初心者のために技術説明という項目も設置してあって、助かります。例えば、引彫職人の伊藤肇さんのコーナーでは、「私の工場では、昔は突彫(つきぼり)をやっていました。でも、今は、引彫(ひきぼり)をやっています。引彫は、ビニールを敷いた上に地紙を置き、手前に向かって掘ってゆく方法です」と伊藤さんは説明されています。

そして「技術説明」コーナーでは「和紙を柿渋で貼り合わせた『地紙』と呼ばれる紙に様々な図柄を彫刻し、布地の染色に使われるのが型紙。江戸小紋や型友禅につかわれてきた。」とフォローしてあります。

この本はインタビューの読みやすさもさることながら、職人さんたちの現場を捉えた写真がいいです。彼らの生命線でもある手先の表情が上手く捉えられています。華やかさはないですが、当たり障りのない京都紹介本よりは、はるかに優れた雑誌です。

因みの個人的にベストショットは「戸田畳店」店主戸田和雄さんが畳を縫うところを捉えた一枚です。あ、職人さんの躰だ!という写真です。

 

2011年の福島原発事故以来、住宅の省エネルギーへの関心は大きくなっています。

でも一体、冷房に頼らない夏の住宅環境を実現する、なんてことが可能なのか?電気に依存しすぎる生活を、どうやって考え直せばいいの?それになんだか、スマートハウスと銘打つ「省エネ」などは、機械設備に頼りすぎてはいないか?

そこで「パッシブデザイン」という定義。「建物のあり方に工夫して、建物の周りにある自然エネルギー(太陽・風・地熱)を最大限に活用・調節できるようにし、高い質の室内環境を実現させながら、省エネルギーに寄与しようとする、建築設計の考え方とその実際的手法。」なんです。

で、これをもうちょっと、目で見てわかるように展示しようじゃないの!というわけで、小嶋雄之さん渾身の模型を展示しました。家を三つに縦割りにしたものが模型になっていて、風の通り具合や、床の蓄熱の工夫など、見ることが出来ます。図面だけで見ると難しそうでも、模型にしてみて、お話を伺ったりすると、環境抜きに家を考えることはできないことに改めて気付かされます。この家なんとなくいい感じだな〜、と思うことができれば、省エネの第一歩かも。

家というのは、住んでいくうちに、住む人によって変化していくものだと思います。完成品に人をはめこむわけではありません。そういうことを、ずっと前から発信していたのが、「もじゃハウス」の干潟裕子さんです。干潟さんの作っているミニプレス「House “n”Landscape」は、第1号からレティシア書房で扱っていますが、彼女が提唱している、植物でモジャモジャした家こそは、住む人が育てるものです。

干潟さんは、造園を学んだ後、ランドスケープ設計士として公園などのデザインを手掛けて来られたのですが、緑でモジャモジャの家に住みたいと、建築士になりました。彼女自身が、緑に癒されて励まされたということで、植物の持つ力を信じ、植物の成長とともに生きる家の設計を目指し、その宣伝のためにミニプレスを作ってきました。第4号発行が、今回の展覧会に間に合ったので、バックナンバーと共に販売しております。(1号のみ完売・在庫なし)

住むこと、生活することを考え直すきっかけになるかもしれない、この展覧会『もじゃハウスプロダクツ&小嶋雄之設計事務所によるフレンドリー建築ショーin京都』にご来場をお待ちしています!(女房)

『もじゃハウスプロダクツ&小嶋雄之設計事務所によるフレンドリー建築ショーin京都』は5月21日(日)まで

 

「murmur magazine for men(マーマーマガジン・フォー・メン」第3号(972円)が入荷しました。特集は「中島正思想入門」。え?誰それ??

雑誌に紹介されているプロフィールによると、

1920年岐阜生まれ。学生時代、自然主義文学に傾倒。兵役で海外へ出向き、終戦を台湾で迎え帰国。1954年より自然循環型自給自足農業の一環として自然卵養鶏を開始。平飼いによる自然卵養の技術を確立します。自給自足の暮らしを実践しながら、農耕と自然を頼りとする暮らしの重要性を説いてきた思想家です。

マーマーマガジン編集長の服部みれいは、中島の著書「都市を滅ぼせ」で「脳天をかち割られるような読書体験だった」と書いています。都市の豊かさなんて、ほんとの豊かさではなかったことを痛感させられ、今こそ本気で「本当の豊かさ」を見つける時だと、その思いを実践するために、彼女自身美濃に移住しました。

中島は、人間を「不耕の民」と「直耕の民」に分け、都市の実体を明らかにしようとしました。「不耕の民」が集まる都市とは何なのか、究極の都市化がもたらす破壊、あるいは文明の崩壊を防ぐために「一人ひとりが直耕の民となり、自給自足の小農を営むこと。独立し農民=みの虫となること(都市と絶縁し、自給自足の暮らしに突入)。その暮らしの集積が、社会の変革をもたらしていく」と論じています。

日々、都市の便利さに慣れきっている私には、なかなか出来そうもないのですが、「みの虫」になるという意見には耳を傾けるべきです。本の中に、編集部が制作した「みの虫生活のためのAction Plann11」というチェックリストが付いていますので、一度トライしてみてください。

さて、「murmur magazine for men」の名物(?)座談会「ハゲと薄毛」では、森岡督行(森岡書店店主)、阿部直樹(天然素材・手仕事の衣服店「えみおわす」代表)、服部福太郎(マーマーマガジン)、服部みれいのおしゃべりがヒートアップしています。ハゲのことを、禿げている本人が語るというのはなかなか勇気のいることにちがいありません。若い頃に、ハゲていくことの恐怖と戦った話、涙ぐましい努力も語られるのですが、最後は、歳と共に落ち着くということのようです。髪の毛がないことを受け入れるんだ、という説は、なんでもそうだろうな、と思いました。自分には◯◯はない、ということを受け入れる、無い物ねだりはしない、それこそが楽に生きるコツだと。なかなか奥の深い(根の深い)、そしてかなり面白いハゲ談義は、これからも続きそうです。

 

住宅のもじゃ化(緑化)を推進する設計事務所「もじゃハウスプロダクツ」が作る、「House “n”Landscape」の最新4号がリリースされました。ちなみに「もじゃハウス」というのは、緑でもじゃもじゃした家のことです。

今回、初の海外取材?ということで、フィリピンのもじゃハウス一泊体験記が、大きな特集が組まれ、気合いの入った写真がたくさん掲載されています。

マニラ市内にお住まいのダニーロさんご一家。古民家付きの土地を買い上げ、増改築を重ねた家は、つる植物が巻き付くフェンス越しからは、家の外観は判別できません。まるで、森の中にある家、いや、家の中の森?とでも表現したらいいのでしょうか。3階の屋根を突き破って伸びるスターアップルの木の写真には驚かされます。

一年を通して常夏の国なので、こんなに緑があれば、蚊がワンサカと出てくるのでは、と恐怖に捉われますが、それほど被害はないとのこと。庭との仕切りの建具にはガラスが入っておらず、風が通り抜けて、極めて涼しいらしい。写真を眺めていると、晴れの日もいいけど、雨の日もいいだろうな、という気分にさせられます。

その後、取材班は、フィリピンから台湾に移動して、緑に覆われた家を探索。台湾には、本屋や図書館に行けば、「緑建設」というジャンル(エコロジーな建築と言う意味があるらしい)の棚があるぐらい、ポピュラーな存在になっているのだとか。もじゃハウスの干潟さんは、思わずここに事務所を構えたい、とつぶやきます。レトロなビルの屋上からだらりと伸びている植物は、まるでビルを侵蝕しているみたいです。次から次へと飛び出すもじゃ建築!

「もじゃハウス豊作状態の台湾!日本だと、もじゃもじゃ過ぎて近隣住民から距離を置かれそうなほどの植物たちとその主を、多くの方が抵抗なく受け入れていらっしゃるこの国は、まさにもじゃハウスにとってのユートピアです。」とコメントが書かれています。

で、もじゃハウスプロダクツが進めようとしている「みどりと共に生きる家」ってどんなん?という疑問に答えるべく、そのモデルプランが、今号の肝です。建物の上に植物が自生する大地を作ることが基本コンセプトで、都会にある20〜40坪のの四角い土地に立つミニマムなもじゃハウスを、具体的に図面で示しています。

眺望が良くて、庭が広くなきゃ植物と共に暮らせないなんてことはない。住まいの広さではなく、視点を変える事で、日々の暮らしに緑の楽しみを見つける。そんな家がこのプロジェクトの理想型です。

一例として、10坪のもじゃハウスの図面を提示しています。「読書好きのインドアな夫婦が2人で暮すには」という設定ですが、家の正面と奥、二階のベランダに木を植えることで、将来、家が緑が囲まれるというのです。読書に疲れた時、視線を見上げた時飛び込んでくる木は、目にも心にも優しそうです。まるで音楽が気持ちよく流れる空間みたいです。イギリスのトラッド系フォークか、アメリカのルーツミュージック系ロックか、チェロ主体のクラシックか、いや、レゲエもいいな〜と、勝手に想像してしまいました。

きっと幸せな空気が満ちた空間であることはまちがいありません。

 

★レティシア書房では「もじゃハウスプロダクツ」の展覧会を開催します。

『フレンドリー建築ショーin京都と題した、もじゃハウスと小嶋雄之建築事務所による建築展です。建築業界一匹狼系の二人が、どんな提案を展示されるかは、見てのお楽しみ!です。新築を考えている方も、全然その気がない方もお気軽にお越し下さい。

会期 5月10日(水)〜21日(日)レティシア書房にて

   (5月15日(月)は定休日です) 

「かんしゃになろうよ。こころで」(発行ホホホ座1620円)は、1990年、大阪に生まれたダウン症の、佐藤春菜ちゃんの作品集です。

彼女は、生後2週間目にダウン症であることをつげられますが、小学校4年生の時から父親と交換日誌を始め、同じフレーズを毎日のように書きだします。77年、知的障害のある人達の「アトリエひこ」に参加します。2003年、かんでんコラボ・アート21審査特別賞受賞を皮切りに、詩集を発表しています。

ケント紙にマーカーで、ズラリと歌のタイトルを160個並べた作品を見ていると、この単語を描いている時の、彼女の想像力がどこまで飛翔しているのか、聞いてみたくなります。彼女の底知れない豊かさを垣間みた気がします。

「ドンドンドンドンドララララドララララみんなでもりあがっていくぞー。ドシャドシャドシャドンバドンバドンバとらペットとらペットらららとららら。」という踊るような文字を見ていると、身体がリズムを刻み踊りそうになってきます。思いのまま書いていく文字は、意味を超えて絵として面白い。右の写真は、「お買得品」と書いたセールの札に単語を書き並べ、貼ってあるユニークな作品。

東北の震災の後、「地震のひとへ」というタイトルで数多くの詩を綴って、なお現在進行形です。

「やまになろうよ。やまびこさん、おげんきですか。かわったかたちの石になろうよ。まんぞくになろうよ。みんなで、にんげんになろうよ。なつやすみをかんじでいこうよ。にんげんになって、げんきにいこう。からだに、しあわせをつくろう。」

彼女は今も「じしんのひと」のことを気にしています。コンピュータが変換して出て来た文字ではなく、個性いっぱいの彼女の文字で楽しんでもらいたいと思います。

裏表紙には、正方形の小さい紙に「OK」と書かれたものが散らばっています。自分は大丈夫とでも言い聞かせているようでもあり、こちらも元気づけてくれる作品です。

このステキで力強い本を発行したのは、ご存知ホホホ座さんです。山下店長がわざわざ配達してくれました。これからも、いろんな本を出されるはず。がんばって売りますよ、店長。

売れ行き急上昇中(といっても小さな店ですんで、そんなに冊数は多くない)の2冊、つばた英子、しゅういちご夫婦の「ときをためる暮し」「ふたりからひとり」(どちらも自然食品通信社1944円)が、「人生フルーツ」というタイトルでドキュメンタリー映画として今月末に京都シネマで公開されます。この本については、以前に店長日誌にて取り上げましたが、「暮らす」ということの理念が平易な文章で語られている、どの世代にもお薦めできる中身です。

一方、帯広発のミニプレス「スロウ」最新号(905円)にも、つばたさん夫妻と同じように、日々の暮しを丁寧に紡いで生きる歓びを見出している宮本さん夫妻が紹介されています。

札幌で暮らしていたご夫婦が、子供たちの独立を切っ掛けに、田舎暮らしを考え始めたのが2003年。それから試行錯誤の後、なんとログハウスを自分で建ててしまったのです。そして、畑をやりながら、二人で質素だけれども、豊かな暮しを楽しんでおられます。面白かったのは、付箋がベタベタと貼付けられた図鑑類の写真です。ご主人曰く、引っ越してきた時は、山菜の名前も、キノコの種類も、ましてや野鳥の名前なんかも全く知らなかったとか。この記事を書いた記者はこう想像しています。

「すっかりボロボロになった何冊もの図鑑にはたくさんの付箋が貼られていて、いろいろな書き込みがされていた。動植物の名前をひとつづつ知ることも、大きな楽しみになっていることだろう。」と。

スマホ、ネットではなく、紙に図鑑というところが嬉しいですね。鳥の図鑑には、その鳥が庭に訪れた日時が書かれていて、使い込まれた図鑑の写真には親しみを感じました。

創刊50号を迎える「スロウ」は内容盛り沢山で、すべて紹介したいぐらいですが、興味深い記事をご紹介します。それは、「たねたね交換会」です。

野菜の産地は気にするものの、それらの種の産地は気にしないでいいのか、という疑問から始まった交換会は、種の物々交換の場であるばかりでなく、食に対する価値観を分かち合う場所になっています。ルーツを探れば海外からの輸入種であったり、農薬付けだったりする事もあるとか。本来、百姓という言葉には「百の仕事ができる」という意味があり、農家は種取りができて当たり前でした。しかし、今は種苗会社がその仕事をしていて、農家は外されています。だからこそ、種から選び、自分たち育てたいものを作ることで、本当に安全なもの、本当に美味しいものが出来上がる。そんな価値観を持った人達が情報を共有し、より広いネットワークを形成することを目的にしています。

「スロウ」は北海道発信の情報誌ですが、しっかりと暮らしを見つめた本で、誰が読んでも納得がいくと思います。

 

★レティシア書房臨時休業のお知らせ 4月17日(月)18日(火)連休いたします。

おいおい、これ無料か?商売の邪魔するの?? と、言いたくなる程立派な雑誌が創刊されました

発行元は長崎県文化観光国際観光振興課。お役所発行のミニプレスで、タイトルは「SとN」。「S」は佐賀県、「N」は長崎県を表しています。創刊号の特集は「トコトコ列車で会いにいく」。佐賀県有田から長崎県佐世保まで走る松浦鉄道に乗って、沿線を散策する特集です。この2両編成の列車、きっと鉄ちゃんには人気があるんでしょうね。

この路線は日本最西端の「たびら平戸口駅」も擁しています。ここの女性駅長さんのインタビューはじめ、沿線で、様々な商売や仕事をされている方を取材しています。定期船の船長をされている、強面のおっちゃんが、大のボブ・ディランのファン。ひょっとして、この船ではディランの曲が流れている?なんて興味も湧いてきます。甘党のアナタなら、北佐世保駅にある「毎日饅頭店」は見逃せません。看板商品のほこほこの「甘酒饅頭」はぜひ食べてみたい。お値段もご近所価格で、安い!

高知発のミニプレス「とさぶし」18号も入荷しました。森林率日本一の高知で、山に生きる人達を特集してあります。地元の人達の山の楽しみ方や、高知、徳島に棲息するツキノワグマのことなど興味深い記事を読むことができます。四国八十八カ所霊場のひとつ東明院善楽寺山主、島田希保さんも登場します。高知県札所で唯一の女性住職は、年に二度、大祭と花祭りに美しい声でご詠歌を歌い、多くの人がお参りに来られるそうです。

同じく、四国徳島発の「あおあお」も新しい号が入荷しました。特集は「藍がある」。かつて天然藍染料”すくも”の産地として栄えた徳島で、すくもを使って、作品を生み出す藍染作家たちが暮らしています。特集もさることながら、裏表紙にど〜んと載っている「フィッシュカツ」が食べたくて仕方ありませんでした。それにしても、どこへ行っても美味しそうなものが多くて、それだけのために旅にでたくなります。

さて、こういった地方の文化発信のミニプレスばかりだけでなく、本好きには大人気の「BOOKMARK」の最新7号も入荷中です。「眠れない夜へ、ようこそ」というテーマで、ゾッとするホラーや、怪奇話満載の小説が紹介されています。

最近映画化もされた「高慢と偏見とゾンビ」などは読んでみたい一冊です。ジェイン・オースティンの傑作「高慢と偏見」にゾンビを持ち込んだというウルトラC級の小説。「8割はジェイン・オースティンの原文をそのまま持ってきて、隙あらば血みどろのゾンビの世界をもぐり込ませ」るという離れ業を敢行し、さぞかし天国のオースティンも真青というお話です。作者はジェイン・オースティン&セス・グレアム=スミスの二人になっています。

どの本も数量に限りがありますので、お早めにどうぞ。

 

 

 

 

大和郡山の古書店「とほん」さんが「ブックレットホン」(648円)を創刊しました。店長の砂川さんとは、開店される前に何度かお目にかかっているのですが、まだお店には伺っていません。素敵なお店だという噂はあちこちから聞えてきています。

さて、創刊号の特集は「奈良と本」。

先ずは「本と一緒」。これは奈良で本に巡り会える場所の案内です。吉野郡の杉木立に囲まれた場所にある私設図書館「LuchaLibro」。大学講師と図書館司書のご夫婦が始められた図書館です。爽やかな風が吹き込みそうな山里の一軒家で、館長は猫の「かぼす」氏、主任は犬の「おくら」氏とか。猫語、犬語の勉強もお忘れなく。

ギャラリー「日+月+星」さんで、不定期に開催されている「夕暮図書室」は「夕暮の図書室のような落ち着いた本のある空間を」を目的としたイベントです。「とほん」さんが本を提供して、一緒に珈琲店や、CDショップ等が参加して、楽しい一時を演出されているみたいです。写真で見ると、寝転んで読書したりできそう。天文学者石田五郎の文庫が、吊り下げた箱にセットされている写真がありましたが、「とほん」さんのセンスの良さが見えてきます。

次の特集は、「文人と奈良」。奈良と言えば「柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺」の正岡子規が有名ですが、「夫婦善哉」の織田作之助が、正倉院展について書き残しています。これ、真っ向からこの展覧会に噛み付いています。私小説こそ小説という当時の風潮に馴染まず、「未来に向かう人間の可能性を描く可能性の文学」を提唱していた織田が、当時、奈良住まいしていた私小説の神様、志賀直哉に反撥していたのが原因だったかもしれません。

最後の特集は、今活躍中の作家が描いた奈良を訪ね歩く企画です。もう、これは万城目学の「鹿男あをによし」が代表でしょう。TVドラマされましたが、面白かった記憶があります。奈良在住の森見登美彦のファンタジー小説「ペンギンハイウェイ」が奈良の新興住宅地をモデルにしてるとは知りませんでした。マジメな小学生が通学途中でペンギンの群れに出会うというお話。

私の好きな作家津島記久子著「ポースケ」が、奈良のカフェ「コハルカフェ」を舞台にしていて、「とほん」店主がそのカフェを訪問した時のことも書かれています。

特集以外では、個性的なお店の店主が薦める本の紹介が面白い。薦める本のテーマは「記念日」です。その中でH.A.Bookstoreの松井さんが高浜寛の「イエローバックス」を取り上げていますが、やるなぁ〜。私もこの本大好きで、店に置いてます(600円)。

そして、最後を飾るのは、「休日は本屋さんへ」というコーナーで、阪急水無瀬駅前の「長谷川書店」が紹介されています。この書店は、新刊書店の面白さ抜群です。本の森に迷い込んだ錯覚に陥る、本好きには、”あぶない”お店です。つい、買ってしまうんです。無茶苦茶に並んでいるのか、店長の美意識に基づいて並んでいるのか、いやはや、こんな店が有るとは。

次号は5月末発売とか。楽しみにしています。もちろん、当店でも続いてお取り扱いしていきます!

★「ブックレットホン」(648円)創刊号発売中

 

山形おきたま発のミニプレス「nda nda!」(750円)が届きました。

特集は「本でつながる人、店、まち」。山形県の置賜(おきたま)エリアで開催されているブックイベント「Book! book! Okitama」を紹介した一冊です。このイベント、会場の川西町フレンドリープラザを中心に近隣の市町村を巻き込んで、数十カ所の会場で本に関する企画を行うという、本好きなら行ってみたい催しです。

日々イベントを開催することで有名な東京の書店「B&B」オーナー、内沼晋太郎とブックカフェ「6次元」オーナー、ナカムラクニオの本で繋がる人と店、そして町をテーマにしたトークショーが採録されています。

そして、当店でも人気の高野文子著「ドミトリーともきんす」(中央公論新社900円)の編集者、田中祥子が、その制作過程を振り返るトークショー「『ドミトリーともきんす』漫画で読み解く詩と科学が交わるころ」に呼ばれた時のことを語ります。

トークショー「装丁家が語る本のあれこれ」に登場した装丁家、桂川潤が、出版危機という言葉に右往左往するよりも、「『本のある風景』が広がりつつある現実」を見つめることの方が大事だと語っていますが、その通りです。

「『本のある風景』に、わたしの生業とする装丁も含まれています。わたしたちは本を手に取り、本をとおして人とつながり、暮らしと地域を見つめなおしていきます。」

これが、あるべき姿だと思いました。

一箱古本市発案者、南陀楼綾繁も登場します。彼はトークショー「ナンダロ〜ド本の旅あるき」とワークショップ「自分新聞を作ってみよう」に参加しています。小さい時、45回転のEPレコードをブーメランよろしく片っ端から投げた話、オレもやったなぁ〜とあの時代を思いだします。LPレコードはあまり飛びませんでしたね。

と、なんだかとても楽しそうなイベントだらけですが、2014年からスタートしました。この本はその3回目をレポートしています。全国発の企画「図書館宿泊」レポートに、読書にピッタリの置賜地方のおやつの紹介など盛り沢山な内容です。

本の危機を叫ぶ一方のマスコミのばかりの中で、地方都市でこんなステキなイベントをやっていることを忘れてはいけないと思います。

置賜で商いをする方々がすすめるこの一冊というコーナーまであって、なんだかそこで暮す人達と、知り合いになれた気がするミニプレスです。

 

★レティシア書房は20日、21日と連休いたします。22日(水)から高原啓吾作品展『ねこのように』が始まります。

 

 

昨日のブログは吉田健一と娘、暁子との「父娘もの」でした。続いて、本日は、娘の朱女(しゅめ)が、父である日本画家、沢 宏靱(さわ こうじん)との生活を描いた「飯場と月」(ヒャクジツコウ舎1350円 新刊)を紹介します。

明治38年生まれの日本画家、沢 宏靱は、戦後「世界性に立脚する日本絵画の創造を期す」と宣言し、秋野不矩、上村松篁らと「創造美術」を結成しました。

昭和46年、住み慣れた京都市内から、比叡山山腹に移り住みます。朱女さんは、この時代の父と家族のこと、そして家の周りに広がる風景を叙情的に描いていきます。彼女はプロの文筆家ではありませんが、その情景がありありと浮かんでくるような文章です。「孤高の画家」と称され、自分の画業追求のために画室に籠った父親を見つめる優しい眼差しが、読む者を穏やかな気持ちにしてくれます。

タイトルにある「飯場」は、彼女が引っ越した時、まだ家が建ってなくて、住んでいた飯場同然のプレハブ小屋のこと。本来なら、えっ?こんな場所に住むの!?なんですが、子どもであった天真爛漫な彼女は、「だけど、あたしには毎日が夢のようだった。あたしは生涯一幸せだった。だって楽しいんである。毎日が、キャンプだよ。家族全員で」と嬉々として暮らします。

そして、あの頃を振り返って「遊びに遊んで、ひとかけらの心残りもない。あの絶大な幸福感は、いまも私のなかに満ちわたっている。たぶん、生涯の涯まで。」家族の愛情の中で、羨ましくなるくらい伸び伸びとした少女時代。

昨今は夏といえば、「酷暑」「猛暑」とネガティブなイメージですが、私たち世代(彼女は10歳ほど年下ですが)、夏は子どもにとって天国でした。

その嬉しさはこうです。「きりりと冷たい高原の朝のラジオ体操 ヘブンだったプール! 着替えのパンツを忘れてスースーするお尻の帰り道 日没を待ちかねて山々から降り注ぐ蜩の声 漆黒の空から舞い降りる星々の光り」

思いだします、幼かった夏の日々を……。

この家には、TVがなかったそうです。で、食事時間は様々な話に花が咲きます。その中で、前の戦争のことが話題になります。戦争中、日本軍が何をしてきたかを彼女は父から聞かされました。亡くなったお兄さんが「親爺が毎日さもいやそうにゲートル巻いて工場にいくんや」と言っていたと、戦争嫌いの姿も描かれています。このお兄さんも生涯反戦を貫いたという気骨のある一家でした。

ところで、彼女は小さい時「しめちゃん」と呼ばれていて、へんな名前!と父に訴えると、いやいや、狂言師の茂山さんも「七五三」と書いて「しめさん」と読むんやとのお答え。茂山さん(後の千作さん)は父親のあそび友だち。「沢宏靱を偲ぶ会」で狂言を演じてくれた関係です。その茂山さんも、平成14年5月、この世を去りました。今頃は天国で、やあやあとお酒をくみ交わしているかもしれません。

私がこの本で最も好きなフレーズはこれ。

「むかし、元日の朝の空気は『お正月の匂い』がした。幾つくらいまでだが、毎とし。」

最近はそんな匂いもなくなりましが…….。

ところで、朱女さんは水彩画、銅版画の制作をする作家で、一昨年、当レティシア書房ギャラリーで個展を開催(左写真)、今年は10月11日より第二回目の個展をお願いしています。またここでご案内します。