三重県津市発「Kalas33号」(620円)は、毎回内容が濃くて、読み応えがあります。本好きに先ず読んでほしいのは、”ルリエール”と呼ばれる造本作家、鈴木敬子さんへのインタビューです。ルリエールとは、工芸製本と訳されるフランス語で、本の装飾を手掛ける職人のことです。

ヨーロッパでは、書籍が未綴じ状態で販売されていた時代があり、本を買った人が製本屋に持ち込んで、自分好みの装幀を施すという文化が発達しました。今でも、古書店を覗けば、そんな未綴じ本があり、それを製本する職人がいます。鈴木さんは、本場フランスへ出向き、個展を巡り、職人との交流を深めて、ご自分の技術を磨き、今では世界各地の個展に出品されています。何点か彼女の作品が撮影されていますが、「どの本にも作品と称するだけの精巧な美しさが宿っている」とkalas編集者の西屋さんは書かれています。

この号では「装う」という括りで、鈴木さん以外にも、納棺師のご夫婦、トラディショナルなバー「アンバール」のマスター等が登場します。

カラスブックスはこの小冊子を発行する傍ら、古本業も始められました。連載「まちの古本棚」も今回で三回め。店頭を飾る本が何点か紹介されていて、見逃せません。

横浜の日本酒酒場を紹介し続ける「はま太郎」を出版している星羊社が、青森市を紹介する「めご太郎」(1200円)を出しました。「あずましい(心地良い)カウンターで地酒を飲んだり、名物・ソース焼きそば店をハシゴしたり青森市内に遊郭跡地を巡ったり」と観光より一歩先の旅を目指した青森紹介本です。

後半に「本のある暮らし 本と生きる人たち」という特集で、年6回のペースで刊行している地域情報紙「青森の暮らし」の版元、グラフ青森の下池社長へのインタビュー、県内の出版社の紹介、そして2015年にオープンしたばかりの古書店「古書らせん」店主、三浦順平さんへの開店までの経緯をきいた「古本屋になっていく」などが掲載されています。オーナーは地味な本屋だと明言されていますが、いいお客様に恵まれ、またブックイベントにも参加しながら店を営んでおられるご様子です。青森に行かれたら、是非寄ってみて下さい。(写真はその店内です)

 

●レティシア書房のお知らせ●

 年始年末 12月29日(金)〜1月4日(木)休業いたします。

 

 

 


「bootな金物店主 嘆きの100選」(1890円)という面白い本が9月に出ました。著者は、京都山科にある三木屋金物店3代目店主古川勝也さん。11月23日の京都新聞朝刊に紹介記事が掲載されましたが、レティシア書房では、以前から著者が持ち込んで来られていて、既に売れておりました。本日再入荷したので、ご紹介しておきます。

三木屋金物店は、来年100周年を迎えます。しかし、古川さんは、金物屋自体がもはや絶滅危惧種であるということを誰よりも自覚しつつ、お店にある珍しくも可笑しい商品を改めて解説した本を作りました。読んでみると、著者の軽妙で、皮肉たっぷりの文章が笑わしてくれます。

例えば、「ホースリール」の項。

「誰がこんなこざかしいものを考えたのか。使っている人はみんなものすごいストレスを感じているはず。満足度ワースト1の商品アイテムではないか。ホースはロープとおなじようにヨリや向きがあり、もともとあんなものを巻こうとすること自体ムリがあります。確かに見た目は便利そうで体裁もよく、しかもガーデニングという欧州のライフスタイルをいかにも体現していそうなイメージのためか、人々はホースといえば当然のようにこの巻き取り式を買うのです。(中略)通販である水圧で3倍に伸びる魔法ホースなど新製品も出ていますが、文字通り魔法にかけられた絵空事のようで水漏れ、ホース外れなど苦情続出で即不燃物ゴミ捨て場に直行です。結局は地べたにとぐろを巻いて置くのが一番よいという身もフタもないというのが結論なのです。」とこんな具合です。よくもまぁ、こんな商品作ったもんやと頭を傾げるものもあります。

本は「厄よけ火箸」「包丁」「釜くど」「卵焼き・調理」「やかん・鍋」「掃除」「火打クワ・金槌・左官」「鍵」「昔の家の補修」「昔ながらの良き金物」「鋏」「ノコギリ」というジャンルに分かれて紹介されています。面白そうと思われたジャンルをピックアップしてお読みいただき、これはと思うものを発見したら、ぜひお店に。

包丁のところに「境忠義 総霞研青二・三徳包丁八角水牛ツバ165」という長い名前の包丁が載っています。家庭用包丁の最高峰と評価したあとに、こんな文章が続きます。

「それにしても長すぎる品名。口上多く値打ち付け過ぎです。名前の長さにもイヤミがある。私の嫌いな伝統的工芸品に指定されています。しょせん包丁です。」

誰ともわからない職人が作った、ほどほどの価格で購入できるものこそ、日用品の王道だという著者の考えが随所にみられます。

生活スタイルがどんどん変化して、その速さに追いつかない道具達。道具を使いこなす職人さんもいなくなる一方だし、孫子の代まで使えると書かれた道具も修理するところもなくなる。もはや、どこに使う物かもわからないような希少品、と思うとオブジェのような珍しい形の物も、と言う具合に、古い金物屋の倉庫はワンダーランド。これを読むと、量販店にはないものを探しに、専門店に行きたくなります。

ちなみに古川さんは、現代アーティストとして作家活動をしておられて、視点の面白さ、文章の洒脱なのは、その辺りにも関係しているかも。

 

西子智編集の「ライフ 本とわたし」(ミニプレス594円)の販売を始めました。

何人かの執筆者が、巡りあった本と、自分の人生がクロスしてゆく様を綴ったものです。選ばれている本が刺激的です。宮内勝典「ぼくは始祖鳥になりたい」、リチャード・ニクソン著・星野道夫写真の「内なる鳥 ワタリガラスの贈りもの」、山田詠美「ぼくは勉強ができない」等々、オーソリティある方々がいかにも大御所の本をあげた、という本とは一線を画しています。

宮内の本を選んだ浅野卓夫さん(編集者)は、「自分探しはしない。自分ではない誰かから託された声を記録し伝えること。このときの旅の経験が、のちに編集という仕事を選択することにつながった。」と、宮内の本と自分の南米行きが、その後の人生を決定したと書いています。本が、その人の人生に何らかの影響を与えるって素敵なことですね。

「ライフ 本とわたし」に収録されている写真は、疋田千里さん。老人の手と本とペンを捉えた写真の佇まいがこの本を象徴しています。疋田さんの写真集は、当店でも販売しています。

 

南陀楼綾繁さんの「編む人」(ビレッジプレス1728円)は、様々なアプローチで本を作り続けている人達9人へのインタビューをまとめたものです。「入谷コピー文庫」という、わずか15部しか作らない小さな本があります。編集者は堀内恭さん。ご縁があって、毎号送っていただいていますが、内容が濃いので、楽しみにしています。インタビューでは15部しか作らない?!というその辺りのことを話されています。(入谷コピー文庫の小栗康平監督特集では、わたしの拙文も掲載して頂きました。)

画家の牧野伊三夫さんが立ち上げた、美術専門のミニプレス「四月と十月」。1999年から、年二回発行を続けています。牧野さんは、画家、ミニプレスの発行以外にも、マルチな活動をされています。その一つが飛騨にある家具メーカー飛騨産業の広報誌「飛騨」の創刊です。単なる広報誌ではなく、飛騨高山の魅力も伝える無料冊子で、当店にも20冊程入荷しますが、すぐに無くなります。「飛騨」に描かれている牧野さんの絵を楽しみにしておられる方も多いはずです。インタビューの最後で、こう話されています。

「一見何でもないものなんだけど、よく見ると奥深いというようなものの方が好きなんですね。あいまいな何かを見つめた方が、広がりがあって面白くなる。絵を描くときも、仲間たちと本をつくるときも、ぼくはいつの間にかそんなことを考えています。」

牧野さんは絵だけでなく、文章も素敵です。食べることを楽しく描いた「かぼちゃを塩で煮る」(玄冬舎1404円)を是非お読み下さい。

 

昨日、東京で活躍中の写真家、疋田千里さんが新作ミニプレスを持って来られました。

彼女とのお付き合いは、「とちぎのいちご」(売切れ)というミニプレスを作って来店されたのがきっかけでした。最初は「とちぎのいちご?」売れるのかな〜と思っていましたが、店に置いてみると特に女性が手に取られる事が多く、結局完売しました。

その後、ブラジルへ行って”A Vida no Brasil/A Day in The Life”(1200円)という写真集を、次はインドへと渡り”Traveling with Spiices”(1404円)という写真集を出されました。

後者の写真集(写真右)には、今、本好きの間で注目されている、南インド、チェンナイの小さな出版社タラブックスが紹介されています。この出版社が出す本はすべて手づくりで製作されていて、疋田さんの写真集でもその工程を見ることができます。(東京板橋区美術館では現在タラブックスの展示会が開催中です)

さて、今回持ち込みの新刊は”ohashi_to”(1512円)。お箸を使う国、日本と韓国と台湾を巡る旅の写真とアジア料理研究家の外処佳絵さんによる「お箸が似合うごはんたち」というレシピ集がセットになったものです。フツーのおっちゃんやおばちゃんが大衆食堂で食事をしていたり、屋台のにいちゃんの姿を写した作品にご当地料理の匂いが漂っています。

外処佳絵さんのレシピは、「チャプチェご飯」、「韓国ジャージャン麺」、「塩レモン焼きそば」、「ビビン冷麺」、「卵焼きクレープ」等々、どれも美味しそう。彼女によると「韓国は歴史をさかのぼると、銀の箸は毒を盛られた際に反応する素材だったので使われていましたが、現代では、ニンニクや唐辛子といった香りや着色しやすい食材を多く食べるので、金属のお箸が主流」だそうです。

疋田さんの3つの写真集をパラパラとながめていて、面白いことを発見しました。ブラジルの写真集には、路路にせり出した果物屋の軒先で、台車に乗ってホッと一息ついたおっちゃんの後ろ姿があり、新作では、やはり路上に突き出た八百屋さんで黙々と作業をするおっちゃんの後ろ姿が捉えられています。のどかで平和な風が吹いています。ぜひ日本のおっちゃんの後ろ姿も撮ってください。

なお、12月3日まで、一乗寺に移転したマヤルカ古書店さんで”ohashi_to”発売記念の写真展が開かれています。

 

田中六花さんの台湾手帳が4点入荷しました。「台北あれこれ」、「日々あれこれ」、「高雄あれこれ」そして「書店あれこれ」です。(各500円)

本好きなら、一番気になるのが「書店あれこれ」でしょうね。表紙には、書架の前でまったり昼寝中の書店猫。これだけで手に取ってしまいました。大型書店から、独立系の小さな書店、雑貨やミニプレスを扱っている店など、どの店も魅力的です。ご当地のミニプレスを手広く扱っている「書房味道」では、ミニプレスの紹介もされていて、「秋刀魚」という日本紹介の雑誌もあるみたいです。また、週末だけオープンしていて、台湾、日本、欧米のミニプレスを扱う「下北沢世代」なんて店もあります。

「台北あれこれ」は、豊かな食文化の紹介から始まります。世界のどこよりも、ドリンクの種類が多いのが台湾ではないかと著者は書いていますが、まさかの組み合わせで、オリジナルドリンクがどんどん出来上がっているらしい。ヤクルトが緑茶やレモネードと合体したり。ステキなカフェやインディーズに強いCDショップなど面白そうなお店がいっぱい。その中の個性派本屋「田園城市」には「社長の古本屋」というコーナーには、「非情城市」のサントラレコードや、川端の「古都」の映画スチールが飾ってあったりと、ぜひお邪魔したい場所です。

「日々あれこれ」は、台湾でみつけた楽しみが詰まっています。食堂の手書きメニューから、なんとも味わい深い散髪屋さんのイラストまで、ぶらりぶらりの散歩途中で拾い集めた面白いものが満載です。筆者は、篆刻を習っていたみたいで、味わい深い篆刻の世界も紹介されています。

4冊目の「高雄あれこれ」。高雄?どこ? そう、高雄は、台湾南部にあります。港町なので、様々な文化を吸収してきた雰囲気が街に残っているらしい。カラフルな看板は猥雑で、下町感一杯です。漢字表記はなんとなく読めて嬉しいですね。元日本料亭だった場所を改築した「書店喫茶・一二三亭」は、なんだか落ち着けそうなお店です。

この台湾手帳を発行されている田中六花さんは、語学留学を経て、日本と台湾を繋ぐ各種イベントを企画、台湾歴18年のベテランです。HP「台湾情報」もチェックしてみては如何でしょうか。

 

★吉田篤弘の新刊「京都で考えた」(1620円)が発売されます。

全国発売は10月20日ですが、京都地区先行販売が決まりました。また、ご予約された方には先着でサイン本をお渡しします。先行発売は10月12日(木)です

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北海道帯広発の「スロウ」(905円)、四国香川発の「IKUNAS 」(756円)、九州長崎発の「らく」1080円)の三誌の新刊が揃いました。

「スロウ 第52号」の特集は「牧草うまれのチーズ」。北海道の各地で、工夫をこらし、様々な挑戦を重ねて個性的なチーズを生産している酪農家が紹介されています。その中で印象的だったのが、「チーズ工房 小栗」の小栗美笑子さんの言葉でした。大半の牧場が効率経営を目指し、配合飼料中心の屋内飼育がメインですが、草食動物の牛を放牧しない事に疑問を持った彼女は、放牧飼育に踏み出します。生産量こそ減ったものの、美味しいチーズを送り出すことができました。

「介護酪農っていう言葉、聞いたことある?舎飼いの場合、朝昼晩食べ物を与えて。排せつ物の片づけもして……。でも、放牧にしたら、牛たちが自分でできることは自分でやってくれるから。労働的にも楽になりました」勇気を出して原点に帰った人の金言だと思います。

「IKUNAS」最新号の特集は「四国で暮らす」です。他府県から四国にやってきて、この地域に魅力を感じて、生活の場を構えて、それぞれの生き方をしている人達が登場します。こういう企画では、トップには無農薬農家や、陶芸家とかが登場する場合が多いのですが、今回は違いました。松山から車で1時間少しかかる、田園風景広がる場所で、オーダーメイドウェディングドレスブランドを展開している女性です。不便さも、ものづくりの糧にできるのですね。

ところで、産業廃棄物で話題になった豊島って、こんなに魅力的な島になっていたんですね。直島と共に瀬戸内芸術際の人気スポットになりましたが、オフシーズンだからこその愉しみ方もあるようです。周囲20キロ程に小さな島をサイクリングして、面白い場所を巡ったり、ドイツから豊島に移ってきた映像&音楽ユニット「ウサギニンゲン」のパフォーマンスを楽しんだりと、とっておきの時間がみつかりそうです。

地元長崎の情報を発信する「らく」最新号(37号)は、10月7日から9日まで行われる勇壮なお祭り「長崎くんち」の特集です。先ず、山頭範之の写真を楽しんでください。写真集と言っても過言ではないぐらいのボリュームです。京都の街中に住んでいると、祇園祭や葵祭のような雅びなものがメインなので、この力強い祭りは新鮮です。満身の力で鉾を引く男たちの姿、ぐいと前方を睨みつける男衆の勇ましい姿などを、写真家はリアルに、美しく捉えています。

ほぼ一冊丸ごと、長崎くんちの特集ですが、市内にできた「ブック船長」という雑貨&書店が紹介されています。長崎にこだわった本、地図、ポストカードを取り揃えた小さな書店です。本やカードを選ぶだけでなく、プロの編集者が本作りの相談にのってくれるコーナーまで完備しています。こちらも見逃せません。

 

 

★吉田篤弘の新刊「京都で考えた」(1620円)が発売されます。

全国発売は10月20日ですが、京都地区先行販売が決まりました。また、ご予約された方には先着でサイン本をお渡しします。先行発売は10月12日(木)です。


 

 

 

 

岐阜に本拠を置くサカダチブックスの新刊が入荷しました。

「地方に住みはじめました。<岐阜市編>」(702円)です。東京から岐阜に越してきた女性が、縁のなかった一地方都市で、面白い暮らしかたを見つけてゆく本です。

「岐阜を全く知らなかった読者のみなさんが、少しでも岐阜に興味を持ち、せめて『岐阜』という字を間違えずに書けるようになりますように。それから、全国にある『岐阜』のような『地方』で暮すことを、ちょっとおもしろいかも、と感じていただければ嬉しいです。」という編集方針で、岐阜散策が始まります。

住みはじめて出会ったいい店のトップを飾るのは、「古書と古本の徒然舎」です。レティシア書房で年2回催す古本市にいつも出店してくださる常連さん。何度か伺ったことがありますが、程好い心地良さに満ちた古書店です。3年前に美殿町に移転して、店をスケールアップされました。この特集の面白いところは、お店の紹介記事のあと、「このあと、どこ行く?」という小コーナーがあって、周辺の素敵なお店を知ることができるのです。徒然舎に始まり喫茶ヨジハン文庫まで、個性的なお店がズラリ並びます。

今、地方都市の元気の無さが取り沙汰されていますが、きっとどこの街にも、新しい感覚でオーナーの個性を生かした店が誕生していると思います。岐阜の街をぶらぶらしたくなりました。

 

大阪発の出版社BOOKLOREから濱田久美子「Guide to Plants」(1944円)が入ってきました。この本は、一言で言ってしまえば、草木の切り絵集です。著者が心寄せる人たちと過ごした時間を、その庭に生えている草木を切り取ることで記録したとでも言えばいいのでしょうか。

「草木の切り絵は、庭で過ごした印象深い時間の記録でもあり、出会った人々をイメージして切り出したものがいくつかります。」

取り上げられているのは、作家永井宏さん、ソーイングテーブルコーヒーの玉井健二さん、恵美子さんご夫婦、そして、小さい頃過ごした母の、それぞれの庭にあった草木が集められています。大切な人達の日常を見続けてきた草木たちが、本の中で静かに佇んでいます。

巻末には、それぞれの草木の名前と、庭の持ち主との思い出話が載っています。読みながら切り絵を眺めたら、ゆったりした時間が流れるようです。

もう一点、海外文学好きにはお馴染みのフリーペーパー「BOOKMARK」の最新号も入荷しています。今回の特集は「やっぱり新訳」です、古今東西の文学、児童書、エンタメ小説の新訳本の紹介です。ゲストとして町田康が「気合と気合と気合」というタイトルで、自らが現代語訳した「宇治拾遺物語」のことを書いていますので、町田ファンなら見逃せません。

 

★8月9日(水)〜20日(日)「レティシア書房 夏の古本市」を店内で開催します。

個性的な28店のよりすぐりの古本が大集合です!(14日は休み)

暑い日が続きますが、お立ちよりください。

 

先日、東京のSUNNY BOYBOOKS さんから連絡がありました。

イラストレーター、タダジュンさんの作品集「Dear,THUMB BOOK PRESS 親愛なる親指へ」(2376円)を出版したので、挨拶に伺いたいという嬉しいお話。タダジュンさんと言えば、ヘミングウェイの「こころ朗らなれ、誰もみな」、クッツェー「鉄の時代」等の海外文学や、中川ワニ「ジャズブック」のカバーデザインでお馴染みの作家です。そして、映画ミニプレス「Kinebus」にも、毎回素敵な作品を書かれています。(もちろん当店にも置いてます!)

恵文社一乗寺店での個展と誠光社のイベントのために京都に来られたので、うちにも寄ってくれました。新しい作品集「Dear,THUMB BOOK PRESS」は、本好きならニンマリするに違いありません。

巻頭に柴田元幸の「サムが愛した本について」という序文にこうあります。「サムが独自の装幀本を作成した20冊のリストは大変興味深い。」そして、次のページからサムが装幀した本がズラリと並んでいます。ナバコフ、カフカ、ブコウスキー、ヘミイグウェイ、ウォールデン、そして谷崎の本まで、独特の世界観に満ちた作品が並びます。

えっ?この本ってタダジュンの作品集じゃなくて、サムとかいう人の作品集なの?

実はサムなんて人物は実在せず、タダジュンさんがサムという架空の装丁家に扮して、装幀した本が載っているという趣向なのです。

ご丁寧に SUNNY BOY BOOKSオーナーの高橋和也さんが、「THUMB BOOK PRESS」と印字された「星の王子様」のフランス語版を持っていた思い出まで書かれています。さらに、タダジュンさんがサムに扮して公園に佇む写真まで載っているという凝りようです。

でも、どの本もずっと見つめていたい、という気持ちになります。こんな本があれば、一日中触っていたいと言う程に、愛情が溢れた装幀です。

紹介されている文学作品について、それぞれコメントが付いています。私が気に入ったのはバージニア・ウルフの「ダロウェイ夫人」の紹介文です。装幀に合わせて、それぞれの方が、架空のサムおじさんへの思いを語ってくれます。空想の書物に触れ、書物を読む楽しみを味わってください。(素敵なサインを本に書いていただきました!)

タダジュンさんの参加されている「Kinebus」最新号(100円)もお持ちいただきました。たった一枚の新聞紙の大きさのペーパーですが、映画への愛に溢れています。

猛暑の京都にお越し頂き、ありがとうございました。

左京区の個性派書店ホホホ座が出版した「焙煎家案内帖 京都編・一」(1000円)を、山下店長自らお届けいただきました。

ページを開けると、「焙煎」「焙煎の方法」「焙煎の度合い」等々、焙煎コーヒーに関する基本的用語の解説が載っています。知ってる人も、知らない人もここを読んでから紹介されているお店に進みましょう。

「京都編・一」で取り上げられているのは、六曜社、swiss coffee plants、ガルーダコーヒー、Hifi Cafe、Windyの五件の店主さん達です。当店のお客様で、いつもレコードを買っていただいているHifi Cafeオーナー吉川孝志さんが登場!Hifi Cafeは、当店から歩いて十数分の所にあり、民家そのままをカフェにしてオーナーの趣味で集められたレコードが整然と並んでいるお店です。オーナーは、本当の深煎り豆の珈琲の味を求めて日夜研鑽されています。

「深く煎った珈琲っていうのは、酸っぱくない。酸味が飛んで苦みが増すんですけども、同時に甘味も増すんです。その苦みと甘味が拮抗して飲めるギリギリのところっていうのを目指すんですけど、それはある程度の濃度も必要なんです。それはペーパーでは落とせなくて、ネルでゆっくり落とさないといけない。」

職人さんの話を聞いている感じです。たかが珈琲、されど、その珈琲一杯に真剣勝負をしているオーナー達の姿が伝わってきます。ガルーダコーヒーのきたむらゆかりさんは、インタビューの最後でこう語っておられます。

「コーヒーは機会操作と化学変化が理解できれば誰でも焼ける。フライパンでも焼ける。だからこそ、誰がどんな思いで焼くかが大切なんじゃないですかね。」

「誰がどんな思いで」って、どんな商いでも、最も大切なことだと思います。

さて、コーヒーの香りの次は、ドーナツです。ドーナツの穴に関して、各界の気鋭の学者たちが論じる「失われたドーナツの穴を求めて」(さいはて社1944円)という本を入荷しました。ある種、オタクの極みの一冊ですが、いや立派です!

実際のドーナツ屋が登場して、ドーナツ屋に実情を語り、英国史の研究者がドーナツの歴史を紐解き、その一方で中国史の研究者が中国とドーナツの関係から東洋におけるドーナツの穴について論じ、果ては経済学者がドーナツの穴の経済的な価値を述べるという、もう四方八方に論考が飛んでゆくという内容です。

この本を作ろうと思い立った言語学者の芝垣亮介さんは、「ドーナツとドーナッツの違い」を検索したところ、画面に夥しい数の「ドーナツの穴」についての項目が出てきました。そこから、彼は「ドーナツの穴制作委員会」を立ち上げ、多くの学者をメンバーとして、不可思議な存在のドーナツの穴の解明に向かいます。その集大成がこの本です。

芝垣さんはこの本の目的を「今、そこにある謎を、今そこにある『知りたい』を探求する、その喜びと幸せを共有すること」だと書かれています。学問って、こういうところから発生するのかもしれません。

気合い十分の本書は、装幀にも力が入っています。本の右上にドーナツの穴らしきものがパンチされていて、本を貫いています。そして曰く「すべての穴はドーナツに通ず」。

知的好奇心の旺盛な人にはワクワクする本です。。

 

ミニプレス「1/f」(エフブンノチ)の1号が出たのは、昨年の8月。「おやつの記憶」という特集でした。編集者が直接届けてくれたのですが、どれだけ売れるか予想がつかないまま、取りあえず販売スタート。ところが、あっという間に持ち込みの数冊完売!追加分もやはり売れていきます。その後、2号、3号と、順調に売上げを伸ばしてきて、今回4号が昨日入荷しました。

4号の特集は「乙女のあそび」。いにしえのお姫様の遊びとして、「貝あわせ」「石名取」、「ことばあそび」「耳香」などが紹介されています。後半は、大正時代京都で活躍したデザイナー、小林かいちの特集です。西洋的なものと、京都的なものを融合して、細身の女性がうつむき加減で佇んでいる姿の作品を、三条新京極にあった土産物店「さくら井屋」が発行し、全国から観光で集まって来る乙女たちの手に渡りました。谷崎潤一郎の「卍」の登場人物たちが交わす、手紙を入れた封筒の意匠が、かいちのデザインに酷似していることを、編集者が指摘していて、なかなか読み応えがありました。

現在、「1/f」は1号からすべて揃えています。1〜3号は734円。4号は885円です。

 

えっ、そんなに早く売れたの??と、驚いた(失礼しました)のが、出版ユカコが出した「別人帳」(600円)です。「あなたの今日これから(あるいは近日中)の一日を、『最良の一日』になると仮定して教えてください。フィクションを交えてくださって構いません。起こりうる範囲での理想や希望を交えて、ご自由にお答えください。なお、個人的な興味により、食べるものについてはとくに執拗にお伺いします。」という質問に答えた方々が、匿名で原稿を寄せた、全く写真のない文章だけの本なのですが、即売り切れ! すぐに追加発注し、昨日再入荷しました。こういうアプローチの食の本は珍しいですね。

いまがわゆいさんの「ドーナツのあな2号」も出ました。たまたま、著者が当店に遊びに来られていて、1号を置く事になりました。可愛い!と表現するしかないミニプレスなのですが、ファンがおられたみたいで初回完売。2号も順調に販売中です。当店のみの限定ペーパー付きです(1200円)。2号と一緒に「おきらく書店のまいにち」(800円)も出ました。こちらは、いまがわさんが仕事されている大型書店での日々を描いています。休日も書店回りを欠かさない、本好きの女性です。

というふうに、女子たちのミニプレス新刊がただいま元気です。