「笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑」

これ、間違って入力したのではありません。鈴村温さんの「SamePose」(さりげなく/1650円)を読んでいると、こうなるのです

朝起きて、先ずページをめくる。そしてムフフと一人笑いして、眠気を追っ払います。昼は、店に出る前に違うページをめくりハハハと笑い、顔を整えます。そして、夜。缶ビール片手にページを開き、ウヒャヒャと笑って、その日のストレスを発散させる。と、まあこんな風に、私はこの本を活用しています。

鈴村さんには今年3月、個展をしていただき、多くのお客様にご来店いただきました。兵庫県たつの市出身。成安造形大学イラストレーションクラスを卒業後、しばらく奈良の就労支援施設「たんぽぽの家」アートセンターHANAのアトリエで、障害者の方達の絵を描くサポートの仕事をされていましたが、2年前から地元に戻り、制作に専念しています。

3月の個展で、彼女の絵が描かれた手ぬぐいを買った方がきっかけで、出版社の目に止まり、今回この面白い「Same Pose」が、発行されることになりました。

彼女が描くのは、様々なポーズをとった動物(人間も含む)です。そして、そのポーズが左右に向かい合って配置されています。もともと何とも言えないコミカルな格好が、左右シンメトリーに配置されることで、ヒートアップしています。

不思議な魅力がある本です。ぜひ、ベッドサイドに置かれて、パラパラめくって下さい。きっと楽しい夢を見ると思います。

なお、鈴村さんは来年2021年11月3日から、2回目の個展をしていただく予定です。

 

凝った装丁で、珍しい文学作品を小さな豆本にしている「ぢやむ」さんが、活版小本の新作を持ってこられました。

一つ目は萩原朔太郎の「散文詩集宿命」(1980円)です。これは散文詩集「宿命」より六作品を選んで豆本にしたものです。

二つ目は佐藤春雄の「指輪」(1980円)です。和綴じの上品な装丁ですが、妻が欲しがっている指輪を浮気相手に贈る男の物語で、「男の不貞が今程咎められなかった時代の空気が感じられ、罪悪感のない主人公と作者が重なり、後味の悪い作品として記憶に残りました。」とは、製作者の弁です。

三つ目は、松尾芭蕉の「幻往庵記」(2750円)。元禄三年、芭蕉は石川県の奥地にある幻往庵に移り住みます。ここで、日々のことをしたためました。「奥の細道」に並ぶ名文と高い評価を得た作品です。豆本の方は函入りで、函を開けると小さなお香が入っていて、いい薫りがします。

もう一作は、以前販売していたカフカの「道理の前で」(1980円)のニューバージョンです。縦6.5cm、横4cmのケースに入っています。本というよりは、インテリアですね。

 

こちらは、豆本ではありませんが、ミニプレス「なnD」の最新7.5号(550円)も入ってきました。7号と8号の間の小さな号ですが、ホホホ座の山下店長も原稿を寄せています。後半に、夏葉社から「全ての雑貨」を出した三品輝起が「境界」という文章を載せています。雑貨店を営む著者は、「あらためて私の店をながめてみると、弁明の余地もないほど、不要不急の物ばかりがならんでいて肩身がせまい。必需品がなにひとつない異様な空間のなかで、店、つぶれちゃうのかなーと他人ごとのように考えた。」という書き出しで、現状を語ります。

最後には、同誌編集者の小林英治さんがインスタ日記を載せています。当ブログでも紹介した映画「パブリック図書館の奇跡」を大絶賛。面白いインスタ日記です。

 

イラストレーター、シルクスクリーン作家の森温さんのイラスト集「# JYP31」(2750円)。このミニプレスは著者のよると「新型コロナウィルスが日本でも広がり始めた2020年3月4日から描き始めました。世間に不穏な空気が流れている中、それに飲み込まれてしまってメンタルや仕事にバッドな影響が出てはいけない。ってことで、自分のご機嫌をほどほどに保つプランを、思いつくままに1ヶ月分ぐらいは描いてみよう!と考えたのがきっかけです。」

日々の暮らしのあれこれを、文章とイラストで伝えるタイプのものは山ほどあります。でも、彼女のは最初に観た時から、なんか違うと感じたのです。

タイトルの「JYP31」は「自分を(J)喜ばせる(Y)プラン(P)」ということ。ちょっと心を楽しくしてくれる31の作品です。「本屋さんに行く」というページには、アルフベットを巧みに使ったシャレたイラスト。「ダンスする」では、めちゃポップな色使いでウキウキします。一番気に入ったのは、ベン・シャーン風の落ち着いた色合いでペンを持つ手と、ノートを描いた「日記を書く」でした。全体を通して色彩が豊かで、実に巧い。ステイホームの今、プレゼントにもグッドな一冊です。(150部限定です)

 

2018年に個展をしていただいた沖縄在住の紅型染めの作家ほんまわかさんから、可愛らしい「ネコとハコ」(770円)が届きました。箱を見つけると、猫は必ず入ってしまいます。そんな猫と箱の楽しい姿を、紅型染めの作品と文で小さな絵本仕立てにした一冊です。紅型は琉球染物、沖縄を代表する伝統的な染色技法の一つで、その起源は13世紀ごろと言われています。ほんまさんは、現在猫10匹と同居中。猫たちの可愛い仕草が、独特の色使いでシンプルに描かれています。

もう一点ご紹介します。当店では人気の「murren vol.26 」(715円)です。今回の特集は「模様」です。アフガニスタンのキリムの模様、アイルランドのアランセーター、タイのナーガの織物、ギリシアのクレタ刺繍、そして日本の津軽こぎんと世界中の衣に関わる模様が集められています。巻末に載っている模様に関する書籍案内も見逃せません。ここに紹介されている「日本の装飾と文様」( PIEINTER/新刊2750円)は美術評論家の海野弘がフルカラーの図版を駆使して、多種多様な観点から日本の伝統的デザインに迫った傑作です。

 

2019年、小澤みゆきさんが「かわいいウルフ」という雑誌を出されました。イギリスを代表する作家ヴァージニア・ウルフを多角的に論じた文芸雑誌です。ヴァージニア・ウルフを「可愛い」で括るって凄い!と思っていたのですが、なんとソールドアウトでした。

小澤さんが新たに編集したのが「海響」(1650円)です。第一号の特集は「大恋愛」。

「自分はなぜ文学が好きなのか。何年も飽きずによく読んだり、書いたり続けていると思う。私は多分、根本的に、愛したり、愛されたりすることしか興味がないのだ。人を愛することの喜び、そのときめきを何度でも知るために、私はページをめくってきた。新しい本を作ろうと思ったとき、まずはこのことについてまとめておきたいと思った。」

そして、もう一つ。

「ヴァージニア・ウルフという作家が、いかにフェミニズムにとって重要で、大切にされているかを。ウルフだけではない。親しんできた女性の書き手たちとその作品について、そういった視点から改めて読み直す必要があると感じた。」

女性作家の書いたテキストを読み込み、その言葉と向き合い、小澤みゆき自身のフェミニズムを考えてゆくことことを、この雑誌は目的にしています。

「小澤みゆきと十三人の恋すること」と題して、様々な女性作家が紹介されています。マーガレット・ミッチェル、ゼルダ・フィッジェラルド、ヴァージニア・ウルフそしてアンネ・フランクなどが登場します。その中で、私の愛読書でもありアメリカ文学の傑作カーソン・マッカラーズ「心は孤独な狩人」が紹介されています。アメリカ南部にいる聾唖の男性をめぐる物語です。残念ながらこの本は現在、古本、しかも高価でしか入手できません。

これからも海外作家だけで企画を組んでゆくのか、国内の作家にも目を向けてゆくのか、定かではありませんが、きっと興味深い雑誌になることでしょう。

 

 

「2012年3月、ぼくはシューカツをやめた。それは人生で初めて、周りからズれた瞬間だった。」で始まる 中須俊治「GO toTogo」(烽火書房1650円)。著者は、誰も見たことのない風景を探しにアフリカのトーゴ共和国へ渡り、ラジオ局で働きます。一度帰国し、地元である京都の信用金庫で働き、ここで地元京都の染色技術に心打たれ、トーゴ共和国エゥア族の織物を融合したアパレル企業AFURICA DOGSを起業しました。この本を出版したのは、同じ地元育ちの嶋田翔伍が立ち上げた一人出版社「烽火書房」。これ、とても面白い!こんな事やろうと決めた若者と、じゃ、それを出版しよう!と決めた若者のコラボが決まった一冊。そんな本を、レティシア書房で売らずしてどこで売る!京都信用金庫の入社面接で、著者は「五年後には辞めようと思っています」と言ってしまいますが、にもかかわらず入社を認めたこの銀行も面白い。

文芸誌「たべるのがおそい」を発行している九州博多の書肆侃々房が、また新たな文芸誌を出しました。「ことばと」という雑誌です。「言葉と、その他の何かについて、言葉と私やあなたを含んだ誰かについて、生まれ変わったような気持ちで、もう一度あらためて考えてみたい、そんな想いとともに、ことばは羽ばたきます。」

ことばを羽ばたかせるって、いい表現ですよね。巻頭座談会は柴田聰子、佐々木敦、又吉直樹の三人が、言葉って何?というかなり大きなテーマで120分語っています。

また、今年の1月、東京武蔵野市で「貯金も使い果たし、書店をオープンさせた」古書「防波堤」店主の堤雄一さんが、「二つの本棚」というタイトルで書かれている記事を読みました。これは連載となるので、なんか面白くなりそうな予感がします。

障害者の暮らし・生き方を、様々な角度から取り上げる「コトノネ」最新34号に、「戦争と農業」「ナチスのキッチン」などの著書でおなじみの藤原辰志のインタビューが掲載されています。

「欲望には限界がある。それでも欲望をもっとつくれ、お前ら飢えている、って言い続ける社会にいま無理が来ている。もう壊れかけている」

大量生産に大量消費をセットして動く社会への人々の疲弊が指摘されています。

当店には「共和国」というマイナー出版社のコーナーがあります。その中に藤原辰志の「食べること考えること」(2640円)、「ナチスのキッチン」(2970円)があり、販売していますので、ぜひ見てください。

お知らせ 

コロナウィルス感染拡大の緊急事態下、営業日・時間を下記のようにさせていただきます。

営業日:毎週 火曜日、木曜日、土曜日 営業時間:13時〜18時

通販、メールでの在庫確認は常時できますので、ご利用ください。通常営業再開はHPにて告知いたします。(info@book-laetitia.mond.jp)


 

 

 

京都在住のライター、江角悠子さんが、京都の洋館を巡った「京都 麗しの洋館たち」(550円)を入荷しました。彼女が洋館に夢中になったきっかけは、左京区にある駒井家住宅を訪れたのが最初でした。「細部にまで美しい佇まい、見た目だけではない、実用性に富んだ造りに心を奪われ、そこからいろんな洋館を訪ね歩くようになりました、」と書かれています。

紹介されている洋館は、駒井家住宅、京都府庁旧本館、長楽館、東華菜館、村上関新堂、夢二カフェ五龍閣です。京都にお住まいなら、あぁ〜知っているという場所が多いはず。東華菜館は、子供の頃に両親によく連れていってもらった記憶があります。「店内には、日本で現存する最古のエレベーターが今も現役で動いています。」まだ乗ったことのない方はぜひ!

著者が撮影した建物の外観と内部の写真と、簡単なデータも掲載されています。コロナウイルスのため外出が出来なくなっていますが、終息すれば、巡ってみてください。大正に建てられた夢二カフェ五龍閣は、湯豆腐の「順正」がカフェをしているそうですが、通常この季節ならきっと観光客でいっぱいだったでしょうね。

北海道発の京都マガジン「その界隈」(550円)の最新12号も届いています。「人生は発酵だ」という見出しで、京都を代表する「胡瓜のしば漬け」と、北海道を代表する「にしん漬け」が登場します。博物誌的アプローチによるビールの紹介、北海道路麺紀行の特別編「室蘭路麺」リポート、京都再発見として「京都の三大横丁」案内、「明治二十六年、百年以上も前に京都で生まれている」という「西村のエイセイボーロ」(レティシア書房のすぐ近く!)をめぐるエッセイなど、盛りだくさんです。

本好きには欠かせないのが、「北海道を読む」という北海道を素材とした書籍の紹介。佐藤泰志「海炭市叙景」とか、佐々木譲「エトロフ発緊急電」とか、名作が沢山ありますね。

リトルプレス紹介では、モダニズム詩人、北園克衛の詩を愛好する人たちが立ち上げた「gui」が取り上げられていて、「現在『gui』の入手は非常に困難。(最新号だけは京都のレティシア書房にあり)」と記載されていますが、売切れです。すみません。(116号、117号、118号は在庫あります)

 

お知らせ コロナウィルス感染拡大の緊急事態下、これ以上感染者を出さないために、4月23日(木)より当面休業いたします。予定しておりましたギャラリーの個展もしばらくの間お休みいたします。この「店長日誌」は毎日更新していきますので、読んでいただけたら嬉しいです。ご希望の本があれば、お取り置き、または通販も対応させていただきます。(メールにてご連絡ください。)

また、休業中でも店内で作業していることがあります。その時は半分店を開けていますので、ご用があれば声をかけてください。(店長日誌にてお知らせします。)

 

 

 

神戸で発行されている「ほんまに」の最新20号が入りました。特集は「本を売る」です。地元、神戸を中心に、兵庫県の本屋さんが沢山登場します。

須磨区の井戸書店。私の記憶に間違いなければ、店主の森さんとお会いしたことがあります。全く書店とは関係のない方でしたが、書店の娘さんと結婚されて、後を継がれたそうです。この書店は、可動式の書架を作ったことで、読書会・落語会など様々なイベントを開催してきました。なかでも「子ども論語塾」は100回を迎えたとか。頑張っている町の本屋さんです。

森さんを加えた座談会では、当店の古本市のご常連「1003」さん、猫が店番をしている「ワールドエンズガーデン」さん、編集の仕事をされながら本屋を営まれている「KITUNE BOOK&Art」さんが、「本を売ること、これからの本のこと」というテーマで興味深いお話をされています。

「目的があって、この本を買おうということで本屋に行くのではなくて、何かないかしらと思って、何か一冊選んで帰ってもらえるようなのが理想です。」とおっしゃるワールドエンズガーデンさんに私も同感です。「何も知らないところに新しい刺激ってあると思うので」とも。入いり込んだことのない世界を、どんな風にお客様にお見せするのかが書店員の頭の使いどころです。

リトルプレスに関しては、神戸一の在庫と情報を持っている「1003」さんは、リトルプレスの注文の難しさを、「自分の覚悟の境界線みたいなものにお客さんの顔が浮かぶかどうかで判断しているところがあります。」と話されています。あの人とこの人は買うかなぁ〜という予測をして、残った在庫と支払う金額と利益を考えながら、店に置くか、否かを決定するのは、私も同じです。

特集はまだまだ続きます。個性的な新刊書店が紹介されています。西宮に2016年オープンした「リトル書房」さんは、57歳でサラリーマンを退職して開店されたお店です。レティシア書房を始めたのと同じくらいの年齢で応援したくなります。

今は、コロナ問題で、外出もままならない状態ですが、いつか紹介されているお店を回ってみたいものです。

京都で頑張っている文芸雑誌「APIED」(770円)の最新35号も入荷しました。こちらの特集はチェーホフです。「桜の園」の映画を観たことぐらいしかないので、じっくり読んでみます。

 

お知らせ コロナウィルス感染拡大の緊急事態下、これ以上感染者を出さないために次週4月23日(木)より当面休業いたします。予定しておりましたギャラリーの個展もしばらくの間お休みいたします。この「店長日誌」は毎日更新していきますので、読んでいただけたら嬉しいです。また、休業中でも店で作業していることがあります。その時は半分店を開けていますので、ご用があれば声をかけてください。(日程は店長日誌にてお知らせします。)


2019年6月京都で出版活動を開始した灯光舎。その第一弾は柳沢英輔著「ベトナムの大地にゴングが響く」(2970円)でした。

ゴングという楽器ご存知ですか?古くから東南アジアに伝わる打楽器です。著者は、ベトナムの少数民族の村々を訪れ、ゴング文化の世界を調査し成果をまとめあげました。

そして、灯光舎第二弾が出ました。封筒でお届けする小雑誌「アンパサンド」(2530円)です。今回のテーマは「詩的なるものへ」。その第一号が刊行されました。こもテーマを2年ほどかけて、全6号でアプローチします。何それ?という(私もわからない)方のために、シリーズの編集責任者の間奈美子さんの文です。

「一つひとつの美術や著述、それぞれの作家の仕事をより見澄ますことができる雑誌の編集の形態はないだろうか。テーマが精彩をもって浮かび上がるような編集の仕方はないだろうか。新しく立ち上げられた出版社『灯光舎』のフラッグシップとなるような雑誌との話を受けて、『アンパサンド』と名付けたこの袋入りの小雑誌を計画した。」

というわけで、様々なジャンルで活躍する作家が、「詩的なるものへ」というテーマに沿った作品を作り上げ、一つの袋に入れた第一号が届けられました。「詩的なるものって、別に詩人じゃなくても誰もが感受するものなんです。」と間さんはいうのですが、分かるようなわからないような「詩的なるもの」が6人のユニークな視点で提示されています。

灯光舎社長面高悠さんは「書き手が気楽に表現できる舞台、そして読者も気楽にページをめくるような小雑誌を作りたい。そういう思いがあった。厳然たる主張を世に問うものではなく、言葉通りの『小さな雑誌』という気楽さ、感じて、施工するきっかけぐらいになれば」と控えめな言い方をされていますが、いやいや、エキサイティングな企画じゃありませんか!

袋から出てくる様々なパッケージ、表現形態の作品が六つ。例えば、封書に入った遠い場所からの手紙は、手に取ったあなた(わたし)へ語りかけられています。また、見事な回文の詩が、美しい字体で綴られています。それぞれ違う手触りを楽しめる福袋のようです。頭で考え、それを言葉に変換し、最適な印刷方法を探し出す。その楽しさと工夫が詰まっています。ひとつお願いがあるとすれば、高齢者には字が小さくて読みづらいのがあるので、デザイン性を優先しつつもなんとかなりませんかね。

アンソニー・ドーア著「すべて見えない光」(新潮社/古書2400円)という長編小説があります。物語の舞台は戦時下フランスの街サン・マロ。目の見えない少女マリーとドイツの若き兵士ヴェルナーの運命を描いた作品で、ピュリツァー賞の小説部門など数多くの文学賞を受賞しています。決して、読みやすい小説ではありませんが、時代の波に翻弄される二人の運命を詩情豊かに描いていきます。

この小説に感動して、舞台となったフランスの各地に出向き、その街の印象を写真と文章でまとめあげた小冊子を入荷しました。熊谷眞由美さんの「たどる『すべての見えない光』」(600円)です。2017年秋、彼女はこの地を訪れます。「本に出てきた場所を巡り、自分の五感を使ってもっと深くこの本の世界を味わってみたい…そう思って行きました」と書かれています。一冊の本を読んで、読者をヨーロッパまで向かわせるって、本の力って凄いですね。

舞台となったサン・マロは、花崗岩の岸壁と12世紀に建てられた城壁に囲まれた英仏海峡に面した街で、小説に登場した建物やストリートなどが今も残っています。マリーが住んでいた大叔父エティエンヌの家、マリーの父ダニエルの家の家政婦マネック夫人が、サン・マロのホームレスのウベールに連れていかれる秘密の場所などを、一つ一つ訪ねて写真に収めています。

さらに、著者は物語に出てくるヴェルヌの小説「海底二万マイル」の中で「サン・マロの教会で大ダコの絵を見た」という件を思い出し、サン・マロ歴史博物館で大ダコの描かれたタペストリを発見します。

う〜ん、凄い!この情熱!一冊の読書で、ここまでやるとは!

この冊子を読み、そう言えば「すべて見えない光」にはこんな人物も登場したなぁ、オーデュポンの「アメリカの鳥類」が出てたなぁ〜、とか思い出しました。

これから小説を読む方のために、登場人物の紹介と、彼らの年表まで用意されていますので、読書の助けになります。

著者の熊谷さんは、「ASHITA no HAKO BOOKS」という小さな出版レーベルを立ち上げておられています。そこから出された小冊子も販売中です。

 

★店主  FM京都に出演! 3月23日、30日「サニーサイド・バルコニー」という番組の中です(13時50分ぐらい)。暇な方は聞いてやってください。

「『おやつ』とはなんだろう。小腹を満たす食べ物?友達と話しながらスイーツ?家族の団欒の時間?それとも仕事の合間のささやかな休憩?こっそりひとりで食べる贅沢?そう、人の数だけおやつの姿があるんです。そんなおやつにまつわるあれこれを、食や暮らし、文化、歴史、旅、科学といった、さまざまなテーマで追っていくのが、この『おやつマガジン』です」(1980円)

と創刊の言葉が書かれています。各地のおやつ紹介だとか、名店案内の情報誌ではなく、私たちが何気なく食べている「おやつ」をより深く考えていこうという知的探究心に満ちた雑誌です。創刊号だけに、著名な作家が寄稿していて、巻頭原稿は角田光代が「夢のおやつ」というタイトルでエッセイを書いていますが、角田さんはおやつを楽しむ生活とは無縁なのです。そこが面白い。

写真家の若木信吾は、本来甘いものが苦手だったのに、アメリカの留学先で「ブラウニー」というお菓子に出会って、甘党に転化しました。「おそらくこれまで食べたものの中で一番甘い食べ物だったと思う。しかも甘すぎた。その甘すぎたのが点火装置だったのかもしれない。」と、周囲のそんな甘いものよく食べるなぁ〜という声にもめげずに食べていると告白しています。アメリカのスーパーなら、どこでも売っている「ブラウニー」。どんだけ甘ったるいのか、興味あります。

「ホーチミンのおやつを追いかけて」という特集では、現地取材で、みんながどんなおやつを食べているかをドキュメントしています。屋台があるせいか、外で食べている人の写真が多く、おやつを口にする人たちの表情が生き生きとしてとても幸せそうです。

岡山と鳥取の県境で自然栽培の米農家を営む高谷絵里香さんが、「がんばって手に入れたり無理して背伸びしたるすることにも喜びや達成感があるかもしれないけど、当たり前のようにそばにあるものにこそ、幸福が宿っている気がする。おむすびや蒸したお芋のような、何気ない日々のおやつにように」と語っていますが、ホーチミンの人々の笑顔は、それを物語っています。

★店主  FM京都に出演! 3月23日、30日「サニーサイド・バルコニー」という番組の中です(13時50分ぐらい)。暇な方は聞いてやってください。