”けんちん”という人をご存知の方の方が少ないかもしれませんが、彼の名刺にはこんな単語が並んでいます。「銭湯電気保養協会」、「電気風呂鑑定士」、「#電気風呂パワー」。

はい、この人は電気風呂の研究家です。もともとは団地研究家でした。

彼は団地愛好仲間と共に2014年、「団地ブックス」という本を発行します。0号を開くと全国各地の団地と共に、京都市内の「UR壬生坊城団地」の写真が載っています。団地愛好者たちが集まって作ったマニアっぽい雑誌だけあって内容は濃いです。

2&3号合併号には、当店の近所で、最近無くなってしまった「公団御池通市街地住宅」に再会しました。日本の住宅文化を支えた団地の存在が様々な角度から検証されていて、装丁、中身ともにしっかりした本になっています。

その後、けんちん氏の興味は「電気風呂」へと向かいます。2017年ごろから各地の銭湯を訪ね歩き、資料を集めて出来上がったのが「旅する電浴」(1100円)、「電気風呂ご案内200」(1100円)、さらには「銭湯下足札コレクション」(880円)、「下足札」(880円)なども作りました。

色々な銭湯の下足札ナンバー「42」番が撮影されています。この数字は「死に」という言葉を連想するためで、誰も使いたがらないので容易に撮ることができたのだそうです。

ところで、電気風呂って何?と、生まれた時から自宅にお風呂のある人は疑問に思われるはず。著者が作ってきたポップによれば、「電気風呂とは、浴槽の湯に微弱な電流を流す装置を指す。関西において盛んに普及している。低周波電流により、身体に刺激を与え、肩こりや腰痛に効果があるとされている。」ということです。

この電気風呂、政府に認可されたのは昭和8年の船岡温泉(京都市北区)が第一号で、戦前から京都には電気風呂が存在していて今も多くの銭湯にはあるそうです。因みに京都市上京区の銭湯は全て電気風呂を完備しているそうです。

「旅する電浴」は、電気風呂を求めて北から南へと旅した記録で、全て写真入りで紹介し、それぞれの電気風呂の効能が書き添えられています。電気風呂愛200%の読み物ですね。

松山市の「新開温泉」には「電気風呂2席あり。石彫りで電気湯表記。サウナ→水風呂→電気風呂の無限極楽ループ完成!さっぱりぽかぽか」だとか。

けんちん氏は普通のサラリーマンで、純粋に趣味、いや研究対象として電気風呂を追いかけています。ひたすら好きなものを追求している人の面白さが滲み出たミニプレスです。

●8/25(水)〜9/5(日)待賢ブックセンター主催「処暑の古本市」開催します。

なお、勝手ながら29日(日)は臨時休業させていただきます。


●北海道のネイチャーガイド安藤誠さんのトークショーを今年も開催します。10月24日(日)19時スタート(2000円)要予約

 

 

 

 

 

 

 

 

九州から新しい雑誌「TRAVEL UNA」が到着しました。現在3号まで出ています。「UNA」って何?

創刊の挨拶からの文章を引用します。

「九州は、中国、朝鮮、東南アジアやヨーロッパとの長い交流を通して育まれた、独自の文化が息づいている土地です。

織物や陶磁器などの伝統的なものづくり、森と海の恵みを存分に受けた食べもの、バラエティに富んだ温泉地、独自の発展を遂げたキリスト教信仰……。

これらは九州の風土や歴史に根ざした、現代に生きる文化です。それらは私たちは敬意を込めて<native acumen>、その土地の叡智と呼びます。

united native acumenの頭文字を冠したTRAVEL UNA(ユーナ)は、毎号テーマを決めて九州の魅力を生み出すトラベルガイドです。」

1号は「ネイティブテキスタイルをめぐる旅」です。国内の繊維産地とデザイナーを結びつける仕事をされているファッションキューレーターの宮浦普哉さんが、九州の風土、歴史に根付いたテキスタイルの作り手を訪ね歩く特集です。

2号は、ズバリ「米」。田んぼ、ご飯、日本酒、スイーツ、クラフト、祭りなどおよそ米に関わることを総特集してあります。

「九州を『米』という視点から見てみたら、新しい姿が見えてくるのではないか。『米』という漢字は米粒が八つあるようにも見える。そこで私たちは、米をご飯、稲作、日本酒、和菓子、工芸、わら、信仰という、八つの角度から捉えてみた。」

そうか、米ってこんなに私たちの身近にあったものだったのね、と再認識しました。米だけで、一冊作ってしまうとは!!

3号は「アートとクラフトの旅」です。

「誌面に掲載された町や工房に、旅行業も手がけるUNAラボラトリーズのツアープ ログラムで実際に訪問することができる、旅とマガジンが一体化した特別編集号です。第1特集は『アートのある町へ』。古く からの温泉地であり、芸術祭を契機に街中にアート活動が溶け込む大分県別府市、水俣病からの地域再生を発端にアートによ るまちづくりを展開する熊本県津奈木(つなぎ)町を紹介。第2特集は『未来をひらくクラフトピープルに出会う旅』。九州各 地で伝統や歴史を引き継ぎつつ、新しいアプローチを模索するつくり手を訪ねます。 」

同社が実施しているツアープログラムのチラシも送っていただきました。なんと14種ものツアーがあります。みているだけで楽しいです。(ご自由にお持ち帰りください。)

しっかりとした目的意識と、それを視覚化する技術とノウハウを持った雑誌だと思います。頑張って販売していきます。昨日から販売を開始したのですが、早速2冊ほど売れました。お客様も、良いものはよく分かっておられるみたいです。

京都のカフェやギャラリーなどの情報にめっぽう強い、当店のお客様のIさんが、カフェで見つけた、とご紹介していただいたのが「よあけのたび」(ミニプレス/650円)です。

カフェ情報について熟知しているIさんが、知らない店ばかり!と言われたので、それは店で置いてみたいと連絡先を探し、販売の運びとなりました。(今のところ、書店で置いているのは当店だけです!)

「わたしにとって朝の時間は、たとえ近所でも、コーヒーとトーストというシンプルな食事でも、旅をしているときに感じる非日常のような特別な時間です」と、この本の著者まごさん。彼女は、今までになんと700軒以上もお店を回り、モーニングを食べたそうです。この本で取り上げられているのは、京都市内が9店舗、長岡京市が1店舗、そして鎌倉市から3店舗が紹介されています。

「お団子頭のおかあさんが細長い食パンを抱えて店のほうへ歩いてきた。ご店主だった。『おはようございます』マスクをしていても、その柔らかな表情は、目や声からじゅうぶん伝わるものだ。

買い出しを済ませた店主の後ろについて店の中へ入る。御所西に位置する喫茶『茶の間』で過ごすモーニングタイムは二回目。」

「茶の間」は地下鉄丸太町駅から徒歩9分というから、割とご近所です。分厚いトーストが実に美味しそうです。

西山の中腹にある善峯寺。ここは、日の出がクリアーに見える場所としてくる人の多い場所とか。ここで日の出を見た著者は、喫茶リゲルへと向かいます。

「ドラマチックな朝を迎えた後に向かった喫茶リゲルの店内は、先刻までいた善峯寺のような澄んだ空気に満ちていた。まだこの空間で呼吸をしている人が少ない証拠だ」と、ゆっくりとモーニングを味わい、「充実した朝の終わりは充実した一日の終わりに等しい」という風に文章を結んでいます。喫茶リゲルは長岡京市にあります。

写真と文章で楽しんだ後は、巻末に地図が載っていますのでお出かけください。

矢田勝美さん著「いのちをつなぐ海のものがたり」(ラトルズ/新刊1540円)が届きました。5月初め、矢田さんが育った漁村のこと、漁師をしている父親のこと、そしてこれからの漁業のことをまとめた本を出しました、とメールが入りました。

「幼いころは両親の手伝いが好きじゃなかった。でも、海の幸の恵みを受けられなくなるかもしれないという危機感、漁師がいなくなる、海が危ない……..そんなことを記録に残し、伝えていかなければならない」

そんな思いが、彼女にペンを握らせました。イラストレータの矢田さんが、ここではイラストを使わず、写真と文章で漁師の家庭、暮らし、仕事を丹念に追いかけていきます。令和4年度高校の国語の教科書に採用されるぐらいですから、決して難しい文章ではありません。私たちが知っているようで知らない漁師さんの姿を教えてくれます。

「魚の供養?私は漁師が魚を供養をしていることを、この時まで知らなかった。なんと『漁師は魚を殺生していることへの弔いをする』のだ。海の恵みを捧げてもらっている全国の至るところには、魚の供養塔も建てられているという。」

供養の様子が写真で紹介されています。また、彼らは漁で海亀がかかると、縁起を担いで海に返すといいます。彼女のお父さんは「ようけ魚取らせてくれよ。はよ竜宮に帰れよ〜、いうて放したるんや。そうやって声をかけると亀は必ずふり返る。」と話します。

「海は怖い」が口癖のお父さん。暮らしのために殺生をせざるを得ない彼らは、いのちに敏感になります。そして、海で漁師が亡くなると、海や、生き物に引っ張られたという言い方をします。

「船底一枚下は、たくさんの恵みを与えてくれるありがたい天国でもある。しかし、同時に、日々いのちがけの漁師とその家族にとっては、世にもおそろしい地獄なのだ。」常に死と隣り合わせである漁師が例える海の怖さは、漁師でない者にはきっとわからない。

ところで、伊勢湾奥部の鈴鹿の貝って極上の味だということをご存知ですか。貝はミネラル豊富な川の水が流れ込む干潟に育ちます。その点、木曽川、長良川、揖斐川の三つの川が流れこんでいる伊勢湾奥部は、よく肥えた干潟なので、ここで取れる貝は味がいいのだそうです。特にアサリは最高級とか。

そんな情報もゲットしながら、私たちは海に囲まれた国で育ったんだという事実を思い起こすのです。これからの漁師たちの暮らしがどうなってゆくのか、漁業がどうなってゆくのかは、他人事ではないのです。

本書は、海藻を使ったステキな栞付き。また、著者の前作「大地をまるごとやさしいごはん」(1980円)も同時販売中です。

盛岡発のミニプレス「てくり」は2019年11月に28号が出てからご無沙汰でしたが、4月に29号が発売されました。しばらく連絡がなかったので実はちょっと心配していましたが、店頭に並べることができて嬉しいです。「てくり」とは開店以来のおつきあいで、地方に生きる人々の生活、文化を紹介するというミニプレスの原点を教えてもらった雑誌です。

今回の特集は「 My Standard『ふつう』を更新する」というタイトルで、新しいビジネスに挑戦する人々が紹介されています。

「福祉実験ユニットヘラルボニー」という会社は、障害のあるアーティストとライセンス契約を結び、データ化したアート作品を企業に貸し出してラベルやユニフォームに使用してもらったり、作品をテキスタイルとして使った商品の開発や販売などの事業を展開しています。この会社が送り出す個性的な柄・色彩のネクタイやマスクは、岩手だけでなく、東京方面でも話題になっているとか。

「障害のある人が『○○さん』という個人として認識され、その生き方や人生がフューチャーされること。その結果、同社ではなく障害のあるアーティストが成功する社会になればいいと思っている。」という考え方です。

今年4月には、盛岡市内にギャラリー兼本社をオープン。「本社は盛岡に、と思っていました。その方が断然かっこいいと思っているんで」と副社長の松田文登さんがおっしゃています。東京、東京と言わないところが、ほんまにかっこいい!

「てくり」の素敵なところは、この地で愛されて続けているお店が紹介されているところです、甘栗を作り続けて55年の「甘栗太郎」や、晩秋からゴールデンウィークの期間限定ホットケーキによだれが出そうな喫茶店「パアク」。こちらも昭和44年オープンで、52年間営業されてきました。

同誌を読むたびに、もう一度行きたい!と思う魅力的な町ですね。

最新号とともに、売り切れていたバックナンバーも入荷しました。26号には「水中で口笛」(左右社/新刊1870円)などの歌集で若い世代に人気の歌人、工藤玲音さんのインタビューが載っています。

 

 

大嫌い!と言う人がいるかと思えば、毎日食べているという人もいる「納豆」。そんな納豆のことだけの”雑誌”が登場しました。京都の出版社「さりげなく」が発行した「納豆マガジン」(2200円)です。「納豆への認識をこの納豆マガジンで変えていきたい」と、雑誌編集長の村上竜一さんは「納豆への思い」で宣言されています。

全国で販売されている納豆を写真入りで紹介。京都からは、藤原食品の「鴨川納豆」がピックアップされていて解説はこうです。

「大正12年創業の『藤原食品』の中でも定番で人気を集めるこちら。京都ならではのネーミング。昔から変わらない洗練されたカラーリングもポイント。大豆には滋賀県産の大粒を使用している。粘りや糸引きの強さ。大豆の甘みに惚れ惚れする。」と詳細です。実はこの納豆を頂いた事があり、しみじみ美味しかった!!と女房が言ってました。(私は忘れてました・・・)

もちろん商品の紹介に止まらず、納豆を作っている現場のルポ、販売店への取材、商品のパッケージデザイン、果ては納豆漫画に、納豆小説と、もう考えられる限りの納豆づくし。先に紹介した京都の藤原食品とアパレルブランドが組んだ「京納豆」T-シャツを着た人たちのファッションフォトまで入っています。

雑誌で2200円か、高いなぁ〜と当初は思っていたのですが、ゆっくりとですが販売上昇。さらにインスタからも注文が入ってきました。

もう一点は「彰往テレスコープVOL.02机上のユートピア」(1650円)です。これ、歴史中心のミニプレスという珍しい一冊なのですが、内容はあっと驚くほどの情熱の賜物なのです。ページを開くと、「端原市観光案内図」が飛び込んできます。どこにあるのかと、駅名を調べてみたのですが解りません。さらにページをめくっていくと、歴史的名勝、旧跡の紹介、駅周辺の観光案内など情報は盛りだくさんです。が、実はこれ全て空想上の町なのです。表紙にこうあります。

「西暦2060年、ながらく本居宣長が19歳の創作したと思われていた都市『端原』の観光ガイドが発見されたー。謎に包まれた江戸時代の空想地図を、架空の観光ガイドを用いて解き明かす実験的展示。」

2060年?つまり、本居宣長が創作した都市を、よってたかったリアルに組み上げた産物がこれです。う〜ん、参加メンバーの情熱には頭が下がります。端原市の交通系図まで載っているんですからね。パッと見ただけではこれが実在しないなんて解りません。

「納豆マガジン」と言い「机上のユートピア」と言い、どちらも入れ込み方が半端ではなく、ここまで本で遊べるのだ!と感心しました。普通に流通している雑誌には絶対に真似できない、ミニプレスならではの魂のこもった本です。どちらも次号を期待!

 

「好きこそものの上手なれ」という言葉がありますが、好きでこそここまで集められたというインディーズマガジン「収集百貨」(おまけ付き1080円)。これ、文章は全くありません。

「不要なモノを捨て、モノへの執着から解放されるシンプルな生活スタイル「断捨離」や「ミニマルライフ」が持てはやされる今。
モノを集めちゃうし、溜めちゃうし、捨てられない!そんな『SDGs=すごく・断捨離 ・ぎらい』の、タモリ倶楽部出演のマニア2人を含む4人のコレクターで企画・撮影・編集・デザインした、収集癖あふれるZINE(リトルプレス)です。」とは編集者の言葉です。

 

その言葉通り、集めに集めたり!!おもちゃに雑貨、封筒、紙、マグネット、絵葉書などなど。個人的には紙モノ好きなので、世界各国の納品書、領収書、注文書のページをじっくり見てしまいました。最後のページはカラフルな缶が所狭しと並んでいます。グリコの缶入り、柿の種、ミルキー、鳩サブレなど見たことのある缶の間に、世界各国の缶モノが集められています。画面いっぱいにモノが溢れているのを見てると、それだけでちょっとウキウキした気分になります。

初回特典として、封筒、古切手、伝票の切れ端、ポテトの袋などが一つ入っています。何が入っているかは開けてのお楽しみ。

 

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Knit-K発行のミニプレス「K」は、0号で「遠くの親戚より地区の他人」と題して、沖縄・台湾の特集を組みました。地図で見ると沖縄と台湾はホントご近所さんです、この二つのエリアを、民俗学的、文化史的な視点で捉えたインディーズマガジンとして刊行されました。そして、0号に続き第1号が発行されました。特集は「イタク 言葉をつなぐ」(1430円)です。イタクとは、アイヌ語で「言葉」を意味します。

明治36年、登別に知里幸恵というアイヌ女性が生まれます。アイヌ語も日本語も堪能だった彼女は、15歳の時、言語学者の金田一京助に出会います。彼のアイヌ文化への尊敬を知った知里は、アイヌ口承の叙事詩「カムイユカラ」を文字にする作業に取り掛かります。しかし彼女は、重い心臓病を持っていました。それでも、翻訳作業を続け、「アイヌ神謡集」は完成します。が、その日、19歳の若さで、この世を去ります。時は流れ、生誕百年を過ぎた頃から再評価の声が高まり、TVで特番が組まれたりして、彼女の訳した「アイヌ神謡集」も世界各国へと翻訳されました。

「K 001 号」では、この本の序の部分を、初めてアイヌ語に翻訳した(もちろん日本語も掲載)が載っています。訳したのは、アイヌ文化交流センターの木原仁美さん。知里幸恵は彼女の大伯母にあたります。

この雑誌は、知里幸恵を通じてアイヌ文化を解説し、私たちにその奥深さを伝えていきます。これは学術系の雑誌ではありません。私たちと文化も社会も異なりながらも、すぐそばに生きている人たちを知るための雑誌です。ご近所さんのことを知ることが、差別のない社会への第一歩ですね。

なお、「特集を読むにあたって」というコーナーでキーワードになるアイヌ用語の解説が載っているので便利です。

 

 

 

765ページ、本の幅約5cm!ほんまに、なんや、この分厚すぎる本は!と初めて箱から出した時に思わずぼやきました。

柿内正午著「プルーストを読む生活」(H.A.B/新刊3245円)が、それです。帯の裏に曰く「うっかり神保町で『失われた時を求めて』ちくま文庫版全10巻セットを買ってしまった」。「うっかり」プルーストの「失われた時を求めて」を買うか??

20世紀、フランス文学を代表するプルーストの代表作ではありますが、途中で脱落する人が多いとか。大学時代、仏文科の友人が、これは地獄だと漏らしていたのを覚えています。

「せっかく買ったので毎日読んでいる。せっかく読んでいるので、読みながら毎日ものを書くことにした。毎日読んで、毎日書く。それだけを決めて、ほとんどプルーストではない本ばかり引用し、役にも立たなければ、読んだ端から忘れていくので物知りにもならない、ただ嬉しさがある読書日記」

ということで、はっきり言ってプルーストの研究本でもなければ、真面目な文学研究本でもありません。

「さいきんプルーストについての言及も1日に読み進めるページも減っているのは、『私』が道行く女の子たちにいちいち気を取られて、あの身体がどうだ、あの鼻筋がどうだとうるさく、なかなかノリきれていないからのようだった。」

おいおい大丈かと思いつつも、道行く女の子たちが気になるのはよくわかる。

著者がいうように、多くの本が登場します。そこが面白い。「プルーストも脱線しまくる。とにかく話が長い。」とは著者の言葉ですが、あんたも脱線しまくってるやろ!

そうしているうち、あぁ〜脱線しまくるってこんなに爽快なのね、という気分になってきます。私も、どんどん吹っ飛ばして読んでは、また戻ったりして、けっこうこの本で遊んでいます。そういう意味では全然退屈しない本です。

で、なんでプルーストなの、という素朴な疑問に著者はこう答えています

「僕にとってプルーストは、労働の日々に磨耗する精神の、それでもよき生を希求する抵抗の象徴であったからだ。」

先日、インスタにこの本のことをアップした夜、ひょっこり著者が来店されました。名古屋でトークショーの帰り、京都で販売している本屋さんへの挨拶とのことでした。全部この本読まなくてもいいんだよね、そんな読み方もありだよね、というと、そうですよと微笑まれた様子がとても素敵な方でした。

★レティシア書房 年末年始の休み

12月28日(月)〜1月5日(火)休業いたします。よろしくお願いいたします。

 

なんと屋久島に出版社を作って、雑誌を発行した人物がいます。国本真治さん。タイトルは「SAUNTER」。

「屋久島に出版社を作って、雑誌『サウンターマガジン』を創刊することになった。このご時世に田舎で紙の雑誌を……とも言われたけど、東京でもアフリカのサバンナも瞬時に同じ情報が手に入るこの時代だからこそ、日本の離島発であることにたいして意味はないし、完全なインディペンデントである僕らは広く浅くも望んでいない、好きな世界観を持つ人たちと繋がりコミュニティを形成したいのみだ。」

という力強い宣言文の通り、屋久島にとどまらず世界各地で自然と大地と共に生きる人たちを、美しい写真と共に紹介しています。現在3号まで出版されていて、養老孟司、石川直樹、宮沢和史、アン・サリー等が原稿を寄せています。そして特筆すべき点は写真の素晴らしさです。

1号の屋久島の素晴らしさ、古きよきチベット文化が色濃く残るインド北西部のラダックの人々、2号では写真家中村力也が、癌の闘病生活を経た妻と共に行った世界一周の旅の写真、3号の井上明による「音と祈りの南インド」と題した写真などを、じっくりと眺めているとそれぞれの土地の表情、そこに生きる人々の物語を読み取ることができます。

個人的には、「音と祈りの南インド」に登場するインドの写真に強く惹かれました。かの国の湿度、匂い、音楽が間近まで迫ってくるようでした。ニューヨークやパリ、ロンドンあるいは東京だけが世界ではないという確信をもたらせてくれる雑誌だと思います。