物理学系の科学者が中心の随筆、評論を主体としたミニプレス「窮理」(702円)最新4号が入荷しました。

理科系かぁ・・・・と思わずに、一度パラパラと捲って下さい。3号では「随筆遺産発掘」シリーズとして、湯川秀樹が、昭和21年に発表した「京の山」を読むことができます。昭和18年、再び京に住むことになった湯川が、深泥池に近い住居の2階から見える京の山並みを見つめたエッセイです。簡潔で美しい文章です。

又、宇宙物理学の吉田直紀が「宇宙人は攻めてくるのか」をマジメに検討していて、これが面白い。宇宙人が地球に攻めて来るみたいな映画やお話が多いのですが、吉田によると、地球に来るだけの科学力と知性を持っている種族は、わざわざ地球くんだりまで来ない、と結論づけています。

さて4号では、理学博士の池内了が、江戸時代商人でありながら、学問に親しみ、博物学的なコレクションをしたり、壮大な発想の著作を残した二人の人物を紹介しています。その一人、両替商の番頭の山片蟠桃は、著書「夢の代」で、とてつもなく大きな宇宙論を展開しています。それは、地動説に立脚し、恒星が無数に散らばって無数の太陽系を構成するというもので、学者でも何でもない人間が、この時代にこんなことを考えていたんですね。

蛇足ながら、日本文化に関する賞として82年山片蟠桃賞 が創設されました。第一回受賞はドナルド・キーンでした。

当店でも人気の物理学者中谷宇吉郎のエピソードを書いた、杉山滋郎の「中谷宇吉郎余話」もファンには見逃せません。彼は、周囲の人達の名文、名著が世の中に出るよう労を惜しまなかったという話が書かれていますが、ここに戦前の京都の出版社、甲鳥書林が出て来ます。中谷と甲鳥書林との関係も興味深いものがあります。

たまには、こういう理路整然とした文章を一杯頭に入れて、脳内空間をキリッと整えておきたいものです。

なお、バックナンバーは2号と3号のみ在庫があります。

新刊で「ご当地発のリトルプレス」(パイ・インターナショナル社2160円)が入荷しました。

デザイン、写真の本などでファンの多い出版社から、リトルプレス紹介の本が出る世の中になったんですね。思えば、うちの開店当時は、「リトルプレスってなに?」と、よく訊かれたものですが、ここまで知られるようになったということでしょう。

「郷土愛が伝わる!47都道府県から集めた地域発のリトルマガジン」という主旨で集められたリトルプレスは60数冊。そのうち約半分は、当店で、かつて取り扱っていたり、今も並べているものだというのも驚きですが。

この本は[北海道・東北]、[関東]、[北陸・中部・東海]、[近畿]、[中国・四国]、[九州・沖縄]のエリア別に分かれて、その地域の面白いリトルプレスを紹介しています。

[北海道・東北]の一番目は、知床発の「シリエトクノート」。当店でもお馴染みですが、今や、入手不可能なバックナンバーも紹介されていて貴重です。この本で取り上げられているのは、有料のものばかりでなく、無料のいわゆるフリーペーパーも載っています。多くの雑誌を前にして、何をチョイスするか、外すかという選択は、中々大変な作業だったと思います。

これ無料?と、首を傾げた、丁寧な作りで、内容も豊富な秋田県発の「のんびり」は、毎回、すぐに品切れになるフリーペーパーでしたが、惜しくも発行終了となりました。同じく、フリーで発行されている広島県江田市発の「Bridge」。こちらは、まだ現役です。

こうして一堂に会したリトルプレスを見ていると、自分たちの暮らしの足下を見つめて、小さな幸せを探そうとしている気持ちが伝わってきます。「アベノミクス」なんてどうでもいいや〜という姿勢がいいですね。

最後を飾るのは、[九州・沖縄]エリアから沖縄発「百年の食卓」です。おばぁとおじぃの暮らしと日々のごはんを見つめた本で、背伸びをしない、上を見ない、あくせくしない、ステキな一冊です。

リトルプレスの良さを知ってもらうためには絶好の入門書です。この本に紹介されていないものも無数にあり、ぜひ店頭で、お好みの一冊を探してください。

フリーペーパーは、当店では高知発「とさぶし」、本の紹介「BOOKMARK」、ジャズ情報満載の「WAY OUT WEST」そして映画を一本取り上げる「めいが通信」が人気です。

「脳内楽園」って何?どうやってそんな場所を巡礼するの??

本日入荷した「脳内楽園巡礼」(1500円)の著者、小嶋独観は「神様仏様は実在しないが、脳内には存在する」と、長い神社仏閣巡りで得た結論を元にこう語ります。

「ごくたま〜にその脳内の光景をまんま現実世界に再構築しようとする傑人が出現するのですよ。そうした現象を私は脳内楽園と称して日々ウォッチを続けておるのだよ。」

で、その実例ともいえる国内外の神社仏閣を集めて、「世界を内包する建築」「霊場を宇宙に見立てる」「脳内楽園」の三章に分けて、珍妙奇妙な場所を紹介してゆくのが、この本です。

いやぁ〜、何これ??ともう目が丸くなって、笑ってしまいそうな記事連続です。

大阪能勢の高籠の参拝方法は、1階から6階に続くスロープを参拝者に変わって、「オモチャの汽車」が代理参拝するというとんでもない代物。自動巡拝往復と呼ぶそうで、おおくの信者がされているとか…..。

京都の大メジャー伏見稲荷神社も登場します。なんでそんな有名なところが?と思われるかもしれませんが、観光客に人気の「千本鳥居」の奥に点在する「お塚」と呼ばれる奉拝所にうず高く積まれた小さな鳥居にスポットが当てられています。ほぉ〜そういうことだったんだと納得です。面白い!です。

海外に目を転じると、台湾の麻豆代天府が登場します。数百メートルにも及ぶ巨大な龍に、電動仕掛けの立体地獄絵巻と、遊園地か、ここは!という展開です。そのグロさ、残酷さにもうクラクラしてきそうですが、そこを抜けると、極楽のジオラマが迎えてくれます。そして、著者はこう言います。

「地獄があまりにも凄かっただけに極楽はやや拍子抜け。ぬるいユートピアよりも恐ろしい地獄の方が想像力や興味が掻き立てられるのは人間の性であり業なのだ」

個人的にはミャンマーの超装飾系寺院タンボディ寺院に足を運んでみたい。ファンキーな仏像、ポップな寺院にきっと頭の中ぐらぐらとゆすられて、気分良くなりそうですね。

是非、一度店頭でご覧下さい。きっと笑えます。「笑う門には福きたる」ってこの事かもね。

 

「思想系ポケットカルチャー誌」と銘打った「月極本」(各1944円)の創刊号と、第二号が入荷しました。

創刊号は「「ニュー・ミニマル」な暮らしかたを特集しています。特に「住」に重点を置いて、新たな豊かさを求めて、それぞれの方法で暮らしている人々を世界中から紹介してあります。

「狭い」というのを逆手に取って、快適に暮らしている人や、荒野のど真ん中で、「食べて、眠れて、本が読める」家を作った人とか、面白い暮らしかた満載です。それをそのまま利用できるわけではありませんが、発想の切り替えには役に立つかもしれません。

古いトレーラーにセレクトされたアンティークを積んで旅する女性は、住まいだけでなく、店もコンパクトにしてしまいました。確かに、お店は街に根を張った方が、都合のいいことが多いのに間違いありません。街がお店を育ててくれるからです。でも、共感してくれる人を探して動き出すというのも一つの在り方ですね。

創刊2号は、ガラリと特集は変わって「幸せな死に方」です。巻頭に、谷川俊太郎の「誰にもせかされずに」という詩が載っています。

「野生の生きものたちの教えにならって ひとりで 誰にもせかされずに死にたいから 誰もせかさずに私は死にたい 丸ごとのただひとつのいのちのままで私は死にたい」

幸せな生き方を巡って、様々な考え方がしめされています。ロックミュージシャンの和久井光司はデビッドボウイの死を引合に出して、ミュージシャンなら、それらしい死をセルフプロデュースすべきと論じ、こう言いきっています。

「神よ、どうか『おしまい』の演出権は本人に与えてほしい。そうしてくれるなら、大衆がミュージシャンの死をしゃぶり尽くすことも許そう。」と。

そして、この号の注目は「今、注目の個性派書店が選ぶ『死』を知るための42冊」という企画です。ほほぉ〜、こんな本を推挙するのかと興味深く読ませてもらいました。京都からは、誠光社、ホホホ座、恵文社一乗寺が参加されています。その42冊の中で、同じ本が違う店舗からそれぞれ推薦されているのが2冊ありました。

一冊はジョナサン・サフラン・フォアの「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」。テロで父を亡くした少年が、亡くなった父の謎を解くためにNYを歩き回る小説ですが、私はトム・ハンクス主演の映画を観ました。

 

もう一点は、もし私が選者なら入れたい谷川俊太郎/松本大洋の「かないくん」。(糸井重里事務所1550円)死ぬってことを少年の体験を通じて浮かび上がらせます。松本の絵が、谷川の文章の奥深くまで寄り添った傑作です。

 

帯広発の雑誌「スロウ」の最新号の特集は「馬の温もりと共に」です。カウボーイスタイルのおっちゃんと馬の顔の写真の表紙を見ただけで買いたくなるはず……..。

表紙をめくると、澄んだ目で前を見つめる馬の横顔。これ、森羅万象の不思議を思索する哲学者の横顔です。後ろ姿も、横顔もどれもこれも素敵な写真のオンパレード。

馬と一緒に森や海をトレッキングする牧場を営む奥川さんが、こう言い切っています。「馬術をやっている人の多くは『馬』を知らないままに馬に乗っている」馬に乗る技術は体得していても、動物として本来の馬について考えることが欠如しているとのことです。馬を楽しむなら、馬を知ることが必要不可欠なのだ。だから「馬に関わる人は、常に紳士で謙虚であるべき。そして馬と同じ、フラットな目線に立つ事」が大事とおっしゃっています。

この特集では、北の大地でがんばる牧場の姿だけでなく、馬具職人、装蹄師、駄鞍職人等の馬に関わる職人さんも登場してきます。馬具を直すことだけを専門とする工房、「ばんえい競馬」に出場するばん馬装蹄師、馬に荷物を載せて運ぶために作られた駄鞍作りの名人のお話は、めったに聞けない貴重なものです。

或は、治療と教育を兼ねたアニマルセラピーの一種「乗馬療育」で、障害者と向き合うホースコミュニティー、苫小牧で愛らしいポニーショーのインストラクター等等、馬と共に生きる人達の「人馬一体」の様々な人生模様を読むことができます。

仕事の相棒であり、親友であり、自分自身を見つめ直す存在、それが、馬だなんて、幸せなことですね。うま年の私は、もちろん買いました。

馬と言えば、沖縄発のミニプレス「馬語手帖」(1296円)、「ウマと話そう2ーはしっこに、馬といる」(1836円)も忘れてはいけません。馬と暮らす人生を選んだ筆者は、東京を捨て、与那国島に移住します。そこで、小さな出版社を立ち上げました。その事を二冊の本にまとめたもので、力まず、ゆっくりと、飾り立てずに馬と共に生きてゆくスタイルの魅力に満ちた本です。

 

前、書店で「髪とアタシ」という雑誌が置いてあるのを見つけ、美容院向けの業界雑誌がなんで一般本屋にあるの?と思ったのですが、中身を見ると、「文藝誌」と名をつけているだけのボリュームたっぷりの内容でした。

先日、この「髪とアタシ」の編集長ミネシンゴさんがご来店。当店でも販売を開始することになりました。最新号の特集は「BAD HAIR」。パンクロッカーにモヒカン、ヤンキーという方々がズラリと登場。実は、私が最初に勤務したレコード店は、こういった方々ばっかの“楽しい”お店だったので、懐かしいです。

といってもこんな風体をBADと言っているわけではありません。編集者は断言します。

「髪にも『言葉』が内在している。喋らないが強烈なメッセージを発信している。心の奥底で眠っていたBADってヤツが社会や自分に対しても滲み出てきたのだ」

雑誌には、多くの理容師さんが登場します。例えば、大阪一のいちびりを選ぶ「なにわ大賞」で特別賞を取った「イソノ理容」さん。ここは店内に天守閣??がある理容室で、通称「小坂城」と呼ばれています。オーナーの磯野健一さんのインタビューは「ごつぅ、オモロイ」のです。こんな城作って、地震や火事で崩壊したらどうします?という質問に

「もし、この城が明日潰れるとしても仕方ないな。結局、生きるって、食べ物さえあったらええやろ。どないなっても人生やしね。その時はその時やな」

長年、積み重ねて来たものが一瞬で消滅する。それは仕方なし。でも、今という瞬間にこそ永遠が宿ることを店主は知っているのです。

或は、原宿で、何千何万という若者にリーゼントをしてあの「原宿ホコ天」に送り出した「バーバーショップエイト」の鈴木オーナー。70年代末から80年代初頭にかけて一斉を風靡した「竹の子族」のヘアスタイルもたくさん作った人です。今は美容院全盛ですが、床屋文化を愛し、BADHAIRに決めて、街に飛び出す若者が集まってくるみたいです。ちょっと昔の親分肌でヘビースモーカーの店主のもとへ、集まってくるヤンチャな若者は決して少なくないみたいですね。インタビューの終りに書かれた「素直なだけがいい子じゃない」とは、大人達が忘れてはいけないことかもしれません。

「若さをなめちゃいけない。内なるBADを自己表現した若者は、何十年経とうとも、そのマインドは心の奥に残っている」その通りですね。

髪とアタシ二刊「特集:拡張する美容師」(900円)/三刊「特集:考える髪」(1080円)/四刊「特集:BADHAIR」(1296円) すべて在庫しています。

 

 

 

 

 

 

Tagged with:
 

そのミニプレスの第1号を持って来られたのは、二年程前だったでしょうか。雑誌の名前は「房総カフェ」。う〜ん、房総のカフェ文化の本なぁ〜と悩んだのですが、わざわざ営業に来られたとあっては、置かないわけにはいくまいと思い、販売を開始したところ、あっ!という間にソールドアウトでした。

昨日、「房総カフェ」の方が、第2号の営業で、再び来られました。1号以上に、深く掘り下げた内容になっていました。巻頭に民芸運動の推進者、柳宗悦の言葉が引用されています。

「真の茶人たちは、物を日々の生活に取り入れて、使いこなしました。物を見ることから、用いることへと進んでいったのです。日常生活を美しく暮らすことこそ、彼らの大きな功績なのです」

「日常生活を美しく暮らすこと」をキーワードに、柳宗悦も一時住んでいた我孫子市と旧田沼南町に点在する様々なカフェを巡っていきます。2号では、情報誌的なカフェ紹介だけではなく、花屋、農家、パン屋等様々なお店が登場し、この地の文化、自然を見つめながら、日常生活を美しく豊かに暮らしてゆく街の姿が、浮き彫りにされていきます。

殺伐とした大都会の風景ではなく、ゆったりとした時間の流れる小さな町の風情と、漂って来る珈琲の香りに満ちた一冊です。最初に紹介されているブックカフェ「North Lake Cafe&Books 」のスタッフの笑顔と、お店の背後に広がる青空の美しさに心奪われました。「房総珈琲ツアー」なんて楽しそうですよ。

もう、一点、こちらは和歌山から初のお目見えです。発行元は当地で梅干し製造販売会社、東農園が発行する「つき草通りで」(324円安い!)です。

「見慣れた街の、見慣れた日常。いや、それだけだろうか。立ち止まり、足下に目を向けてみる。路傍に咲いた、青い鴨跖草。小さな温もり。日常こそが愛おしい。」と書かれていて、やはり、日々の何気ない暮らしの中にあるものを大事にしようというのがコンセプトになっています。先ずは、この雑誌と一緒に和歌山の日常を歩いてみましょうか。人気のないJR和歌山線 高野口駅の待合い室の、寂しいのだけれど、どこかのどかで、落ち着いた光景を楽しみましょう。

最後のページには東農園による梅を使ったお料理レシピも載っています。創刊号のお料理は「梅の海鮮丼ぶり」。

 

北海道発の、京都&北国の紹介プレスという、面白いスタンスの新聞スタイルのミニプレス「その界隈」(540円)の創刊号が届きました。

「阿闍梨餅は、加熱すると美味しい。マルセイバターサンドは、冷やすと美味しい。共にひとつから買える。100円強。なんだか似ているではないですか。対照的な土地のように思われているけれど、実は似ているところもあるのです。両方とも人気があって、観光客が多い。京都と北海道、一緒にしちゃうと面白いんじゃないか。」

という冒険的企画で始まったミニプレスです。そして、創刊後のトップを飾るのは、当店でも作品を販売してくれた「酒器 今宵堂」のお二人です。植物園近くの閑静な住宅街に工房を構える今宵堂さんは、昨年、北海道で「ほろ酔う器展」を開催されたそうで、個展に合わせて。20日程北海道を回られました。「仕事と生活の糧となるような風景を、私たちは北国でたくさん眺めることができました。」との事です。鞍馬口の「力餅食堂」の前のお二人の姿が、今宵堂の暖かい雰囲気を出しています。

「妄想の寺町」なんて企画の横には、「北海道ドライブイン紀行」が飛び出してきたりと、古都と北国の距離をひょいと乗り越える紙面作りが魅力的です。北海道に知り合いが多い私には、これから楽しみなちょっと気になるミニプレスです。

もう一冊、倉敷の古書店「蟲文庫」の田中美穂さん編集による「胞子文学名作編」(2808円)が目出たく再発されました。彼女は苔、羊歯、海藻、茸等が放出する胞子の特異な有り様に着目し、こう考えました。

「異質な存在であるがゆえに、わたしたちを固定する論理や常識にもたやすく穴をあけ、思わぬ世界を開いてみせる。菌糸や原糸体のひろがりは、一見してまるで無関係のものをむすびつけ、出現させます。かすかでひそやかで、そして大胆不敵。そのような『胞子性』を宿した作品を『胞子文学』と名付け、ここに集めました」

尾崎一雄、内田百間、宮沢賢治、太宰治、らの文人がズラリリストアップされている一方で、小川洋子、川上弘美などの「胞子性」溢れる??作家の作品も忘れてはいません。読み応え十分の一冊です

「田鼠の穴からぬつとつくし哉」なんて、ユーモラスな一茶の俳句もあって、コーヒーブレイクの時にでもお読み下さい。

★ライブ決定 世田谷ピンポンズ「COMEBACK FOLK」

                5月25日(水)19時30分  1500円(予約受付中)


 

 

先日、小冊子4点を携えて森田昇平さんという方がご来店。これがすべて、内容の異なる企画の本でした。

先ずは2013年製作の小冊子「切手小論」。岡山で同年開催されたZINE展に出品されたもので、「エピソード豊富な切手から、文化史や図像学、観光やシンボリズムが語れてしまう、優れものなのです。」というコピー通り、ありとあらゆる側面から切手を特集してあります。例えば、誰も思いつかないような「切手と映画」。切手がモチーフになる映画??オードリー・ヘップバーンの「シャレード」がそうでしたが、指摘されるまで思いだしませんでした。或は、「切手と文学」では、島尾伸三のエッセイ「月の家族」で島尾が切手少年として黄金時代を過ごしたことからスタートします。本好きには、興味津々。

2014年製作の「毛物型録」は「髪の毛、髭、陰毛、その他、毛についてのエピソードを沢山もりこみつつ、密やかに強烈なイメージを発しつづける毛の世界を描く」という独創的一冊です。南方熊楠が芸者の陰毛を大事に保管していた話やら、乱れた毛に並々ならぬ執着をもっていた画家、伊藤晴雨とか。でも、マニアっぽい、知識やら情報の羅列に終始せずに、体系的に論じてあるので、フムフムと納得しながら最後まで読んでしまいます。

もう一点、同年製作の「cultural studies oF HORROR」はタイトル通りホラーの特集です。元々、岡山で開催された怪談トークイベントで配布されたものに修正を加えた一冊で、フランケンシュタインの物語を基軸に、様々なホラー文化の奥底に分け入っていきます。「閉鎖空間」を舞台とする小説、映画の紹介もあります。ここでロマン・ポランスキー監督、カトリーヌ。ドヌーブ主演の「反撥」が取り上げられています。思春期の苛立ちから狂気へと向かう女性が、閉鎖的なアパートメントで狂っていく話で、いやぁ〜怖かった。

そして2015年製作の「賭博夜学」は、サイコロや賭博にまつわるトークイベントで製作されたもので、これまたユニークな企画です。「賭博用語集」を読んでいると、今、日常的に使用している言葉の多くが賭博を語源としていることが分かります。「四の五の言うな」の「四の五の」も賭博用語だったんですね。なお、この号の最後には花札が貼付けてあります。本好きには「賭博表現史」は必読です。

いずれも、この本を発行している森田さんの博覧強記ぶりと情熱で、それぞれに楽しめます。各刊とも最終ページに参考文献、推薦図書のリストがありますので、さらに読んでみたいという方にもありがたい配慮です。この内容で、価格は500円!お買い得だと思います。

★連休のお知らせ 5月9日(月)〜11(水)までお休みいたします。

★ライブ決定 世田谷ピンポンズ「COMEBACK FOLK」

                 5月25日(水)19時30分  1500円(予約受付中)


発売初日に完売した1号に続き、しろうべえ書房「京都文芸 洛草2号」(648円)出ました!!

相変わらず、ディープなネタ満載ですぞ。「連続特集太秦ハリウッド」、今回は元東映の録音技師濱口十四郎氏の語る、映画全盛期の現場の話です。(これって、文化博物館の映画保存機関あたりが資料として持っているべきものです)

映画がらみの記事では、武智鉄二が監督しようと準備していた「三島由紀夫の首」のシナリオ。関西歌舞伎に新しい波を創り出し、市川雷蔵を映画界に送り出し、晩年はポルノ映画やら、スキャンダルに塗れ、毀誉褒貶の激しい人物でしたが、最近再評価されています。彼の幻のシナリオが公開されました。

「『俺は、三島由紀夫の胴体だ。俺の首はどこへ行った。』阻止しようとする警備員を踏み倒して、三島の胴体は去ってゆく。

ええっ〜どんな映画なん!?と開いた口がふさがらんシナリオですが、笑えます。

「死屍累々、第三機動隊を全滅させて、三島の胴体前進してくる」 もう、スゴい展開です。

ほかにも面白い読み物が続きます。京大吉田キャンパス裏手の吉田山(京都市民の方なら、ああ、あの辺りかと想像されるはず)がかつて神楽岡と呼ばれ、神の降臨する洛東の聖地で、今から百年前、奇妙な風体の少年が徘徊していました。その少年の名は、村山槐多。大正時代を代表する洋画家、詩人ですが、彼が日々、なぜ奇妙な行動を取ったのかが解明されていきます。明治末に、京都帝国大学が設立され、東京に対抗する革新的文化環境が形成されつつあったこの地域で、少年は大きな影響を受けていました。この時代から左京区は、そういうエリアだったんですね。

ところで、今号に台北在住の古書店店主チャーティー・モンなる人物が、自分の店に泥棒が入った顛末を書いた「嗚呼妄我」という短いエッセイを寄せていますが、なかなかいい味が出ています。衰えてゆく自分の叔父と、泥棒という非日常が交錯する短篇小説ですが、この作者、実は・・・?

なお「洛草」創刊号は1冊のみ在庫あります。お早めにどうぞ

Tagged with: