新しくできた出版社kanoaからミロコマチコの新作「あっちの耳、こっちの耳」(3520円)が発売されました。

「あっちの耳」は、東北の人たちから聞いた野生動物にまつわる物語、「こっちの耳」は、その同じ物語を動物に立って作家が創作したお話。じゃばら式で、表に人間目線、裏に動物目線のお話が表裏一体になっています。「カモシカのおはなし」「クマのおはなし」「ウサギのおはなし」「とりのおはなし」「ヘビのおはなし」「コウモリのおはなし」の六つの話が、それぞれ一枚の紙に収まり、16㎝×13cmほどのサイズですが、じゃばら式なのでずずっ〜と広げると1メートル以上にもなり、6話が一箱に入っているユニークなスタイルの絵本になっています。

 

さて、「とりのおはなし」は、こんな風に始まります。

「あれは、何年まえかの夏だったかな。実家の庭にちっちゃい池があるんだけど、うちのじいちゃんとばあちゃんがそこでペリカンを見たっていうんだよね。わたしと母は、いや、それはないでしょうって言ったんだけど、」という、「むかしむかし、ある所で」みたいな感じで進みます。この話はオチが面白くて、ペリカンと思しき鳥は、実は池にいた金魚を丸呑みしてしまって、喉が膨らんだシロサギで、じいちゃんたちはそれをペリカンと間違えたみたいなのです。ミロコマチコは、おそろしく喉が膨らんだシロサギを描きこんでいて、思わず笑ってしまいました。

その裏側で展開するのは「赤いくちばし」という、著者の創作したシロサギ側から見た絵物語です。シロサギのおばあちゃんが、孫の鳥たちに同じ出来事の顛末を話しています。両面ともミロコマチコの鮮烈な色彩感覚の絵をふんだんに見ることができます。

6話全て楽しめるのですが、私は、「クマのおはなし」が最高でした。森林調査をしていた人が、森の中でばったりとクマの子に出くわします。「子グマは1メートルくらいの大きさで、木の根っこにまえ足をかけてこちらをじっ…..と見ている。」

近くにきっと母グマがいるはずだと思ってあたりを見回しますが、発見できません。ミロコマチコの描く、深い草むらの奥でこちらを見つめている母グマの顔がなんとも魅力的。全体をグリーン系で整えた世界に対して、裏のクマ目線の「ふしぎないきもの」では、クマから見た不思議な人間といういきものが、赤を基調にして描かれています。

紙芝居が始まるようなワクワク感に包まれます。動物を見た人たちの語り口は素朴で心地良く、画面から飛び出しそうなミロコマチコの躍動感あふれる絵が素晴らしい。オススメです。