小学校で読んだりする偉人伝。聖徳太子やら織田信長、そして伊藤博文辺りがポピュラーなところですが、女性が少ない。無いなら作ろうということで、韓国の出版社ボムアラムが作ったのが「夢を描く女性たち イラスト偉人伝」(タバブックス1870円)です。

国も時代もバラバラ、活動分野も様々な、女性たちが登場しますが、さすが韓国の出版社だけに、母国の方が多く入っています。そして、その女性たちが頭を上げて、前を見つめて放った真っ直ぐな言葉が、韓国の素敵な絵描きたちによるイラストと共に書き込まれています。

「刀を向けると怯えると思ったのか? 私たちは死ぬ覚悟でここに来ているのだ」

と勇ましい言葉を残しているのは、ブ・チュンファ。彼女は海女です。日本占領時代、海女たちが収穫した海産物を、彼女たちの管理者が搾取し、安い賃金で働かせていました。それに抗議したデモを実施。阻止しようとして刀を抜いた日本軍人に向かって放った言葉がこれです。

「女性の私に祖国などない。女性としての私は祖国がほしくもない。女性としての私の祖国は、全世界だ。」

とは、ヴァージニア・ウルフです。貧困と差別の渦中で苦しんでいたイギリス女性たちの苦しみを描き、彼女たちの解放を求めた作家です。20世紀初頭の作家にも関わらず、現代でも多くの女性たちに支持されているのは、ちっとも状況が変わっていないという事なのでしょうか。

頭から順番に読まなくても、パラパラとめくって、好きなイラストと言葉をみつけたら、読んでみる、という気楽な本です。

このひとを収録しているのか!と嬉しくなったのがいました。一人は動物学者のジェーン・グドール。ちょっと前にブログで紹介した、星野道夫の「アフリカ旅日記」に登場します。彼女はこう言っています。

「あなたがすることが変化をつくる。あなたはどんな変化をつくりたいのか決めなければならない。」

もう一人は、グレタ・トゥーンベリ。10代にして、世界の政治家を相手に気候変動問題を問いかけた環境運動家です。

「私たちは未来がほしくて、ストライキをしているのです。」

この世界をこれから生きていく若者たちの悲痛な意志が込められています。

日本版追補として日本からは三人、作家の石牟礼道子、女子運動家の田中美津、評論家の山川菊栄と、数人が追加収録されています。グレタ・トゥーンベリもその一人でした。追補分のイラストを描いているのは日本人女性です。

19世紀末イギリスの裕福な家庭に生まれて、文化人に囲まれて育ち、20代後半から作家活動を始め、新しい文学の旗手となって活躍し、59歳で自殺したヴァージニア・ウルフ。彼女の魅力を丸ごと一冊にまとめたミニプレスが入荷しました。タイトルがすごい!「かわいいウルフ」(1944円)ですよ!ヴァージニア・ウルフも「かわいい」で括られるか。研究者なら卒倒しそうなタイトルですが、これ、やわな内容ではありません。面白い!!

この本を企画した小澤みゆきさんは「ヴァージニア・ウルフは、かわいい」と宣言します。

ウルフの小説は、人の意識の揺らめきを流れるようにして描く作家です。また、動植物や、町の風景を執拗なまでに描きこみます。その描写力を小澤さんは、こう語ります。

「人物の言動や意識が実にチャーミングで、人間臭く、茶目っ気にあふれているかがわかります。シリアスさと同じくらい、ユーモアを大切にしていた作家が、ヴァージニア・ウルフなのです。そのシリアスとユーモアを行き来する様子を、私は<かわいい>と形容したいと思います。」

小澤さんは、さらに長編小説の<かわいい>を四つのきり口に分けています。それは、「おままごと」「異世界転生」「かくれんぼ」「演劇」です。そして、ここからウルフの長編小説に切り込んでいきます。ウルフ作品で、最もポピュラーな「ダロウェイ夫人」を「おままごとするウルフ」へ。また、最もポップで針が振り切れて、行き着くとこまで行っちゃった「オーランドー」を「魔界転生<生/性>ラノベ作家」とした小論など、そうくるかと感心しまくりです。

海外文学好きには外せないのが「ヴァージニア・ウルフ短編集」(ちくま文庫/古書950円)を翻訳した西崎憲へのインタビューです。この短編集に入っている、たった2ページの「青と緑」は、散文詩みたいな作品ですが、これ原本を横に音読したらきっといいと思います。

小澤さんは、ウルフの小説紹介だけでなく、「灯台へ」に登場する「牛肉の赤ワイン煮込み」を調理してレポートしています。さらに、ロンドン郊外のキュー王立植物園を舞台にした作品”Kew Garden”を翻訳し、深い理解力の一端を披露してくれます。この小説の冒頭は、極めてウルフらしい滑り出しです。

後半のウルフを巡る映画の話も、オタク的感性爆発で面白く読みました。ところで、昨年観た傑作「ア・ゴースト・ストーリー」が、ウルフの短編をモチーフにしていたとは知りませんでした。

ウルフファンだけでなく、小説大好きの方にオススメの一冊です。

 

★イベントのお知らせ

6月5日(水)より「世界ひとめぐり旅路録」展をされる小幡明さんが、14日(金)19時半より、FMひらかたパーソナリティー久保有美さんと一緒に「小幡明の旅の話アレコレ」と題したトークショーを当店にて開催します。(参加費1000円/要予約)


一人で、或いは仲間と一緒にミニプレスを発行してる女性が多くなってきました。京都なら「気になる京都」の太貫まひろさん、「台湾手帳」の田中六花さん、「APIED」の金城静穂さん、大阪なら「ほんと本屋と私の話」の宮井京子さん、岡山なら「おきらく書店員のまいにち」のいまがわゆいさん、東京の「1/f」(エフブンノイチ)の長尾契子さん。まだまだおられます。

その中で、様々な切り口で読者を増やしている「1/f」」のバックナンバーフェアを始めました。(6月中旬まで)

2015年に創刊し、7号まで発行されています。「ここちよい、ヒト、モノ、ストーリー探し求めるリトルマガジン」を標榜し、毎回「おやつ」「夜の時間」「ひとりの時間」「旅」などをテーマにしています。当店では、創刊号から取り扱っていて、創刊号の「草餅の作り方教えてください」という特集で、あっという間に完売しました。2号「光とくらし」、3号「祝いと食事」、4号「乙女の遊び」、5号「眠れない夜」、6号「一人の時間」、7号「手にひらサイズの旅」と、毎回違った特集で読者を楽しませてくれます。

毎回本が取り上げられている、ミニ特集のセレクションが渋い! 創刊号では、シャーロット・ブロンテの「ヴィレット」を取り上げ、その中に登場するシードケーキをテーマに語っていきます。5号では、タブッキの「インド夜想曲」が、眠れない夜にぴったりと取り上げられています。主人公ロショニルがインド各地を巡ってゆく物語で、イラストの地図を駆使して、この物語の世界が解き明かされています。6号では、「ひとり時間を過ごす女性たち」というテーマで、ブロンテ、林芙美子、アン・モロウ・リンドバーグ、オーバル・ウィットリーがピックアップされました。本好きには見逃せないものばかりですが、3号の「作品から見る『祝いと食卓』のかたち」で取り上げられた「バベットの晩餐会」を、特に面白く読みました。

今回のフェアでは、創刊号から最新号までに加えて、発行者の長尾さんが描いたイラストを元にしたポストカードセットも販売しています。創刊号から3号までは在庫僅少ですので、まだお持ちでない方はお早めに。(京都では当店とホホホ座浄土寺店のみの取り扱いです)

ところで、こんな本が手元に届きました。「かわいいウルフ」です。英国の作家ヴァージニア・ウルフをいろんな角度から読み込んだ文芸誌です。このタイトル、厳格な英国文学研究者なら、卒倒しそうなタイトルですが、中々奥深い内容です。発行人は、神奈川在住の小澤みゆきさん。また新しいミニプレスが登場しましたが、当店でも販売開始します。発売は5月上旬です。(ご予約受付中)

★勝手ながら、4月22(月)23日(火)連休いたします。よろしくお願いします。なお、ゴールデンウィーク中は通常通り営業いたします。(店主)