並んでいるのは女性の顔。何を思うのか、表情からは心を察することはできません。むしろこちらの中身を覗かれているような、不気味な美しさを湛えています。

本日より「中西敦浩作品展」が始まりました。中西さんは、2015年、2017年と石粉粘土で製作した人形で、モノクロの妖しい世界を見せてくださいました。今回は、初めて絵に取り組まれたのですが、パステルを筆でぼかして描かれてた繊細な女性たちが並んでいます。輪郭線を残すのが嫌で、下絵もなしでいきなり描かれたとか。そのせいか心の赴くまま一気に描いた女性たちは、ふわりと異世界から出てきて、白い画面に音もなくいつの間にか存在していたようです。

2017年に作られた石粉粘土の人形たちは、うめき、嘆き、身をよじる表情を見せながら、体は虚ろでこの世のものではありませんでした。2015年の作品も生と死の間で想いを秘めているかのようで、いずれもとても魅力的でした。パステル画は色を使われているのですが、手を伸ばしても触れることのできない妖しさを感じます。いくつかの作品にある緑色の植物の葉が、彼女の鼓動を静かに刻んでいるかのようです。

膨大な読書量で本に対する造詣が深い作家の奥に、もしかしたら作家自身も気づかないうちに作家の中にずっと棲んでいて、いつの日かこうして姿を現す日を待っていたのかもしれません。そんな彼女たちをぜひご覧くださいませ。(女房)

中西敦浩作品展は、10月29日(火)〜11月10日(日) 12:00〜20:00なお、11月4日(月)は定休日です。

 

塗込められた壁から、顔と手指がわずかに出ている白いパネル。死と生の間で、想いを秘めているかのように静かに目を閉じています。

台にズラリと並んでいるのは、白い紙粘土で作られた、手足の長いひょろりとした裸体の人物。皆、仮面をつけています。生きているのか、死者の使いなのか、そして開けた口から吐き出されるのは、悦楽のため息か呪いか・・・妖しい沈黙は、標本のようです。映画「未知との遭遇」のラストに登場する宇宙人のような、ながい手足をだらりと伸ばしたまま浮遊しています。

顔の表情の面白さもさることながら、作品の後ろの壁に、投影された人形の影がまた面白く、かれらの思いを象徴しているようにも見えてきます。

 

作者の中西さんは、開店以来のお客様で、これが初めての個展になります。本についての深い造詣をお持ちの方で、週に一度は、当店の書架を眺めながら、いろんな本の話を聞かせてもらったことは、新米の古本屋にはとても有り難く、店の本の収集に役立たせていただきました。

それが、ある時から、パタッと来られなくなりました。久々に来られた際にお聞きしたところ、紙粘土での創作に励んでおられるというのです。毎週、大阪の古書店回りをされていたのも止めて、創作に専念とか。今回その作品の一部が並びました。

この人形たちが背負っている、業の深さや、哀しみや、ユーモアなどを感じるのは、作家の中に蓄積された膨大な本の森の奥から滲み出てくるものでしょう。

初めて創作された作品を、こうして眺められるのは、ギャラリーをしているものにとって、本当に幸せなことです。

★中西敦浩作品展9月22日(火)〜10月4日(日)最終日は午後6時まで