先日ご紹介した映画「アルプススタンドのはしの方」が映画人のセンスあふれる傑作とするならば、現在、京都国立近代美術館で開催中の、「京(みやこ)のくらし――二十四節気を愉しむ」は、美術館のスタッフのセンスの良さが光る展覧会だと思います。(9月22日まで)

季節の移ろいを、日本では二十四節気という季節の区分が用いられてきました。二十四節気は中国の戦国時代の頃に、季節を春夏秋冬の4等区分する暦のようなものとして考案された区分手法だそうです。1年を12の「節季」と12の「中気」に分類して、それらに季節を表す名前がつけられています。重要な中気である夏至・冬至の二至、春分・秋分の二分は併せて二至二分(にしにぶん)と言い、重要な節気である立春、立夏。立秋、立冬を四立(しりゅう)、二至二分と四立を併せて八節(はっせつ)と名付けています。

「本展では、この二十四節気に沿って、京都のくらしに息づく自然現象や草花、生物、祭や行事などを、当館コレクションから精選した美術・工芸作品に加え、映像資料によって紹介します。本展を一巡することで、一年を通してのくらしと自然そして芸術の豊かな関わりを体感し、自然・社会環境が激変する現代生活を改めて考えるきっかけとなれば幸いです。」

との美術館の解説通り、京都の一年間をぐるっと巡ることができます。暮らしにアートが密着していることの楽しさが堪能できます。もちろん河井寬次郎、竹内栖鳳、堂本印象、上村松園といった京都の画人だけでありません。私の好きな写真家、野島康三の昭和初期の作品にも出会えました。太田喜二郎という画家の「洛北の農家」(大正13年作)には、え?これ洛北?京都?って、まるでゴーギャンが描く南海の島の農夫みたいに明るいやん、と驚きました。

イギリスを代表する現代アートの巨匠デイヴィッド・ホックニーの「Kyoto 24 April 1993」も飾ってありました。おそらく龍安寺の庭だと思いますが、石庭を鑑賞する修学旅行生たちの後姿をカメラに収め、それを庭園とコラージュした作品でした。

京都の暑さ、寒さ、にわか雨、新緑に吹き渡る風の心地よさ、雪の美しさなどなど、日頃知っているはずの季節の変化が、作品から感じ取ることができて新鮮でした。

堂本印象の「冬朝」を観て、今まで敬遠していた金閣寺近くにある「堂本印象美術館」に行ってみようと思いました。

★お知らせ  勝手ながら8月17日(月)〜20日(木)夏季休業いたします。

 

 

数ヶ月ぶりに美術館に行ってきました。京都国立近代美術館で公開中の「チェコ・デザイン100年の旅」。

チェコといえば、私はチェコアニメがすぐ浮かびます。オーストリア・ハンガリー帝国からの独立、第二次世界大戦を経て、社会主義国家としての歩み。そして民主化への道、という激動の20世紀を経験したこの国の様々なジャンルのデザインの変遷を一気に見ることが出来る企画で、ずっと観たかった展覧会でした。

入館すると、先ず目に飛び込んでくるのがアルフォンヌ・ミュシャの有名なポスター「ジスモンダ」です。まろやかな曲線美の女性と、卓越したデザインの衣装。本好きには、カレル・チャペックの戯曲「ロボット」(1925年の初版)の表紙が魅力的。兄のヨゼフが作ったもので、フランスでキュビズムの影響を受けていたことのわかる作品です。

時代と共に変わっていくデザインに、この国独特のオリジナルティーを感じます。現代に至るまで、日用品やおもちゃ、工芸品、家具、書籍と多方面に渡っています。このバイクなんか、暫く観ていましたが、飽きて来ないですね。

民族伝統へ傾いた第二次世界大戦期以降も、社会・政治情勢の変遷と共に絶えず新しいものを創り出してきました。その100年間を見ることができる展覧会です。

 

美術館3階で行われている「日本・ポーランド国交樹立100周年記念ポーランドの映画ポスター」展も面白い。非共産圏の国から入ってきた映画ポスターって、全て国内でオリジナルとは全く違う形に作りかえられます。え?これがあの映画なの??というものばかりです。蛇が絡み合うグロテスクなポスターは、「ローズマリーの赤ちゃん」だったり、可愛らしいおもちゃの新幹線が描かれたものは、日本映画の傑作「新幹線爆破」だったり。「ゴジラ」のポスターもユーモラスでした。

「チェコ・デザイン100年の旅」は7月5日まで、「日本・ポーランド国交樹立100周年記念 ポーランドの映画ポスター」は12日まで開催されています。映画館や美術館に出向くのはやっぱり楽しい。

京都国立近代美術館で開催中の「丸山応挙から近代京都画壇へ」が15日で終わるので、散歩がてら行ってきました。ヘェ〜結構人が入っているんだ〜と感心しながら、鑑賞しました。

18世紀の京都。円山応挙は、実物写生に基づいた写生画というジャンルを切り開きました。精緻に描かれた応挙の写生画は、爆発的な人気を博し、円山派を形成します。私のような日本画に馴染みのないものにも圧倒的美しさで迫ってきます。小さく描かれた雀は、今にも屏風を突き破って飛び出しそうだし、「保津川図」に描かれた水の勢いは、4K、8Kの最新の映像技術の表現に負けない凄みがありました。

明治期の京都画壇を代表する一人、岸竹堂の「猛虎図」の虎なんて、咆哮が聞こえてきそうなぐらい臨場感に溢れていました。久々に来て良かったなぁ〜と思いながら、4Fのコレクションギャラリーに向かいました。

 

 

そこでは写真家野島康三の作品がズラリと展示されていました。かなり前でしたが、この写真家の作品を見て以来、特に女性のポートレイト作品に強く惹かれました。

野島康三(1889–1964)は、絵画を意識させる写真作品を数多く残しています。野島初期の「ピクトリアリズム」と呼ばれる写真は、ぼかしなどの技法を用いない「ストレートフォトグラフィ」が主流となると、絵画の模倣だとして批判の対象となり、下火になっていきます。しかし、独特の質感をもつ世界観を作品に投入した野島は、1930年代のドイツ新興写真に影響を受けながら、新しい作品を発表してきました。今回の展示には、モダンガールの素顔を捉えた「女の顔」も展示されていて、素敵な再会を果たしました。

ちょっと攻撃的で、アンニュイな視線をこちらに向ける女性を、ややローアングル気味で捉えた作品に、初めて出会った時は、そのクールな作品の佇まいに魅入ってしまいました。このまま、今のファッション雑誌にも使えそうな斬新な感覚だと思います。応挙の作品を見にきたはずが、野島の作品で頭がいっぱいになった帰り道でしたが、久々の近代美術館はやっぱり行って良かったです。

 

 

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