最近、京都市動物園に行かれたことは?古い動物園のイメージをお持ちの方、一度行ってください。素晴らしい場所ですよ!

京都市動物園は明治36年開園で、上野動物園に次いで古い動物園です。2008年、京都大学と連携をきっかけに、「共汗で作る新『京都市動物園構想』」を策定し、それに基づいて全面リニューアルしました。「いのちをつなぐ動物園」(小さな子社/古書1300円)は、生まれてから死ぬまで、動物達にとって住み心地の良い暮らしを模索する動物園の人たちの日々が詰まっています。

動物園の動物達がストレスなく、生き生きと暮らしてゆく環境を保持し、生活の質を向上させるのが動物福祉(アニマルウェルフェア)で、この考えは世界的な広がりを見せています。見る者が楽しければそれでいいという時代は終わりました。

2019年、京都大学と京都市動物園を舞台にして、第14回国際環境エンリッチメント会議が開催されました。環境エンリッチメントとは「動物達が心身ともに健康で暮らせるように、動物の生物学的な知見やライフヒストリーをもとに必要な要素を特定し、飼育環境や飼育管理手法に工夫を加える」ことです。その世界大会が京都で開催されたのです。

また、動物園で動物を飼育するということは、調査や研究と切り離せません。本書の様々なレポートの中に、身体障害を伴うチンパンジーの研究をしている櫻庭陽子さんのレポートがあります。京都市動物園には障害を持つチンパンジーはいませんが、彼女が研究してきた他の動物園のチンパンジーのそれぞれの障害の例を知ることができます。先進的なユニークな取り組みなども紹介されていて、収録されている写真から、彼らの日常を見ることができます。

最終章は、動物園の主役ともいえるゾウをめぐる物語です。現在、5頭のゾウが暮らしています。推定48歳の「美都」はマレーシアから、他の4頭は、ラオスからやってきました。この5頭の暮らし、そして世界のゾウの状況が語られていきます。

多くの研究者や飼育員達が、思考し、実践し、時には失敗しながらも、動物園に暮らす多くの動物達の幸せを守っている姿を知った上で、実際に訪れたら、また感じ方が変わるかもしれません。

すずきまいこさんの絵本「ぼく生きたかったよ」の原画展が本日より始まりました。

第二次大戦中、各地の動物園で、空襲で猛獣が逃げ出す危険を回避するために、クマやライオンが殺害されるという暗い歴史がありました。京都市動物園においても、ニコーとリコーというクマの親子が悲しい運命に晒されました。その物語を描いた絵本が「ぼく、生きたかったよ」(かりん舎1080円)です。今回は、絵本の原画すべて展示いたしました。

かつてクマの飼育員だったおじいちゃんが、孫のけんじ君に、ニコーとリコーを殺したことの一部始終を語るところから始まります。勝手に人間が引き起こした戦争という野蛮な行為によって、罪のない動物たちの命をも奪ってしまうという悲しい事実。銃で撃ったけれど、翌朝まで生きていたクマの首に、針金を巻き付けて殺害したというクマのエピソードは本当に辛いものがあります。

悲しいお話を聞いたその夜、やさしいおじいちゃんとクマの親子が、夢の中でけんじ君の前にあらわれます。そして、彼はそれから何度も動物園に通い、クマさんと向き合うところで終ります。誰も、もう二度とこんな辛い目に合わないようにという作者の祈りと、少年に未来への希望を託したエンディングです。

日本全国の動物園で行われた殺害を丹念に調査し、関係者にインタビューしていき、この本の原案をつくった研究者の三上さんは、昭和18年から敗戦の昭和20年までに殺傷処分を受けた猛獣は160頭以上いたと、絵本のあとがきに書かれています。そして、こう結ばれています。

「ニコーとリコーのように、銃や首を絞めたりして殺されたものもいましたが、毒や先端の鋭い刃物、高圧電流によって殺された動物もいました。飼育員は、我が子のように育てた動物たちを自らの手で殺すことになり、その心の傷は、戦後も癒されることはなかったのです。」

決して、楽しい明るい内容の絵本ではありません。しかし、リニューアルして、綺麗になり、楽しさも倍増した私たちの街の動物園にこんな過去があったことを知って、二度とこんな惨劇が起こらない世の中であってほしいと思っていただきたい願いをこめました。

この原画展開催につきましては、作者のすずきまいこさん、10年にわたり昔の動物園の資料を収集してこられた三上右近さん、北海道の出版社かりん舎さん、京都市動物園の坂本さん、そして、この絵本を携えてレティシア書房をお訪ねくださった札幌の本屋「花さき山」の道端さんにお礼申し上げます。このエピソードは昨年11月の店長日誌に書きましたので、よかったら読んで下さい。

個展では、絵本以外にもポストカード(各150円)も販売しております。(店長&女房)