京都文化博物館で開催されている「小早川秋聲展」に行ってきました。「國之楯」(写真左)は、戦時下の絵画をテーマにした美術展で見たことがありましたが、衝撃的でした。従軍画家として中国戦線に出向き、沢山の作品を描いたのですが、本作品だけは日本軍が受け取りを拒否したということです。

そんな画家が、他にどんな作品を残していたのか興味があり、当店の近くの会場ということもあって出かけたわけですが、今回の作品展のサブタイトルに「旅する画家の鎮魂歌」とあるように、若き日、この人は世界を旅して、多くの作品を残していたことに驚きました。

小早川秋聲は、大正期から昭和期にかけて京都を中心に活躍した日本画家です。当時の日本人としては異例ともいえる程、海外へ出かけていきます。大正9年には3年間ヨーロッパを外遊し、インドやエジプトにも足を運んでいるのです。その数年後には、今度はアメリカに渡り、数ヶ月間過ごしています。会場には、外遊時代に書かれた作品がたくさん展示されていています。

飛行機もなければ情報も少ない時代に、よくぞここまで世界を回ったものです。異国の景色に日本的叙情を感じる作品の数々に、しばし足を止めました。ちなみに彼はヨーロッパ外遊中に結婚しています。外国にいることの不安や戸惑いが無い人だったのかもしれません。

日本軍の中国侵略とその後の日中戦争中、陸軍の依頼で従軍画家として中国、東南アジアに派遣され戦争画を描きます。愛国心を奮起するような勇ましい作品が多いのが戦争画ですが、彼の場合は、勇猛な突撃シーンなどはなく、戦場で疲れた兵士達の休息の時を描いたりして、静かな絵が多くあります。そんな中の一点が「國之楯」」でした。

黒一色で塗りつぶされた背景に、胸の前で手を組んだ日本兵が横たわっています。顔には出征兵士に送られる日の丸が覆いかぶさっていて、一人の兵士が戦場で死んだ事実が迫り、動かなくなった肉体の持つ重さに対面することになります。国のために死んだ兵士の姿としてみれば、日本軍ご推薦の作品になるはずだったのですが、哀しみを湛えた絵は厭戦の気分を盛り上げるとして拒絶されたのかもしれません。自分は戦犯になるかもしれない恐怖におののきながらも、戦後を生きぬき1974年、京都で生涯を閉じました。

 

⭐️本の紹介をZOOMにてさせたいただく「フライデーブックナイト」。次回は9月17日(金)です。

⭐️北海道のネイチャーガイド安藤誠さんのトークショーを今年も開催します。

10月24日(日)19時スタート(2000円)要予約