と、このシャツの名前を出しただけで、あそこのシャツか、とぱっと浮かんだら、お洒落な方かも。「モリカゲシャツ」で販売されているシャツは決して安くはありません。でも、楽しくなるのです。

何年も前、女房がこのお店を見つけて一着買ってくれました。前はボタンダウンの白のワイシャツ。しかし、背中の上半分にストライプが走っていて遊び心に溢れたシャツです。前から見るとフツウ、背後から見ると遊びに行こう感満杯の一着を今も大切に着ています。

北海道発の京都案内新聞「その界隈」最新号(540円)をめくると、大きくモリカゲシャツが特集されています。店主の森陰さんは、京都生まれの生粋の京都人。東京の文化服装学院からファッション関係の仕事の中で、大量生産、大量消費のバブル感に違和感を感じ、「作ってる人とそれを買って着る人の関係性が、もうちょっと近いところでできないか」と考えたあげく、オーダーメイドのシャツを作るお店を始めました。

大型書店にいた頃、大量に入ってくる本を、中身も見ずに販売し、大量に返本するシステムに違和感を持ち、本を書く人、売る人、そして読者の関係がこんなに離れていていいの?と思い、レティシア書房を始めたのと似ていると感じました。まだ、モリカゲシャツでオーダーメイドシャツをお願いしたことはないのですが、そろそろ作ってもらいに行きたいな。

「その界隈」で連載中の「その界隈的[博物誌]」の特集は落語「はてなの茶碗」です。上方落語の十八番であり、桂米朝、枝雀の名演があります。落語の舞台となった清水寺の音羽の滝やら、登場する茶道具屋がある衣棚通などが紹介されています。衣棚通は時々途切れたりする南北の通りですが、めったに紹介されません。

面白かったのは、「京都の自転車」という写真特集です。景観写真評論家の田中三光さんが、無造作に撮った市内各所に止めてある自転車と建物。どれも風情があります。あ、これ、あそこだ!とわかる所が何カ所かありました。皆さんもチェックしてみてはいかがですか。

 

ギャラリー開催中 町田尚子原画展「ネコヅメのよる」

ご当地サイン入の絵本「ネコヅメのよる」と、カレンダー「Charity Calendar2018」は完売いたしました。ありがとうございました。

オリジナルシール・ポストカード・手ぬぐいは、残り僅かになりました。

原画展は、21日(日曜日)まで。なお21日は18時で終了いたします。


 

レティシア書房のお客様、作家中村理聖さんの「小説すばる」新人賞受賞後第一作「若葉の宿」(集英社1728円)が発売されたので、平積み(!)中です。

「一年ぶりにハレの舞台に現れた橋弁慶山を見上げると、夏目若葉の心は重たくなった。会所の向いにある町家旅館・山吹屋は、若葉の実家である。町名の由来となった山を眺めていると、汗が噴き出し、不快感が増してゆく。祭りのざわめきが遠く感じられ、違う世界の出来事のように思った。」

という書出しのように、舞台は京都、祗園祭りの鉾町にある小さな旅館山吹屋。祖母とき子に幼い頃より厳しく育てられ、今は老舗の旅館で新米仲居として働く若葉が、小説の主人公です。京都を舞台にしたサスペンスものや、ラブストーリーものは、多数出版されていますが、それらの小説で展開されるようなドラマチックなお話はありません。静謐な筆運びで、旅館の日々と移り変わってゆく京の四季を追いかけていきます。

「祇園祭が終わって八月を迎えると、京都の夏は一段と重苦しくなった。」なんて、文章に出会うと、京都で暮らしている人は、そうそう、と納得してしまいます。こんな時期に京都観光によう来るわ、というのが偽らざる気持ちですが、この小説を読みながら、京都の季節感、その時々の感情を味わって下さい。

事情があって祖父母に育てられた若葉は、自分がこの旅館を継いでゆくことに疑問を持っています。私の人生、これでいいの?一方、古い旅館や、呉服屋さん等が集まる界隈にも、時代の波が押し寄せてきます。「若葉が暮らす中京区でも、小綺麗なホテルやお洒落なマンションが増えていた。近隣にあるマンションで、無断で民泊を始めた住人がいて、そこに泊った外国人たちが、騒音やごみ出しで問題を起こしたこともある。」

変わりゆく京都の街と、自分の生き方に確たるものが見出せない若葉の心の迷いが、巧みに描写されていきます。小説は後半、一気に進みます。その渦に巻き込まれてゆく若葉。自分の居場所を求めて若葉が辿り着いた結論は?

女優で、書評家の中江有里さんは、この小説を「『心あらわれる』とはこういう読後感をいうのだ。」と高く評価されてますが、ページを閉じた時、祇園祭から始まって葵祭の五月で終わるこの小説の、爽やかな初夏の空を見上げた気分になりました。

NHKさん、朝の連続ドラマにいかがですか。

 

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「京都綾小路通は、平安京造営のときに開かれた古い路である」という京都案内みたいな文章が表紙に書かれていますが、吉岡秀明著「京都綾小路通」(淡交社500円/絶版)は、古都案内の本ではありません。

これは、今年5月に死去したフランス文学者で、エッセイストの杉本秀太郎の足跡を辿りながら、この人の生きた京都という町の風景を描き出した本です。杉本秀太郎は、いわゆる京都大学桑原武夫学派につらなる仏文学者ですが、専門のフランス文学に留まらず、日本の古典文学や詩歌にも造詣のある学者です。

そして、何と言っても、二百数十年の歴史を持つ杉本家の九代目として知られています。京都的に表現すれば

「寛永三年どしたさかいな。四条烏丸に呉服商としてお商売始めはってね。で、明治になって、こっちの方移ってきゃはりましたんえ。平安時代は、あの辺は、琵琶法師さんらの集まらはる場所で、ぎょうさん法師さんが来やはったみたいですなぁ〜。

杉本は昭和三年、京都綾小路通新町西入るにある、現在の杉本家に生まれました。旧制松原中学を経て京都大学に入り、桑原武夫の元でフランス文学を研究する。この大学時代に登場する人々が面白い。日本文学の高橋和己、フランス文学者の多田道太郎、エッセイストとして今も人気の山田稔等の文化人達です。

その後、京都女子大学で教職に就き、数十年在職しますが、60年代の学園紛争では、この女子大学でも火の手が上がります。大学は実力行使で封鎖解除を決定しますが、対話を主張する杉本は拒否をしました。蛇足ながら、封鎖解除の日、立てこもっていた女学生は教官の股間を蹴り上げて抵抗したみたいです。

私が杉本のことを知ったのは、エッセイ「洛中生息」(みすず書房900円)でした。みずみずしい文章で綴られて、「外から眺めた」京都への文章ではなく、「内に住んで」書かれた文章ばかりです。

「鞍馬口から東へ、加茂の堤に出るまでの数町を歩くとき、私はなにかしら昔の匂いといったものを鼻先にかぎあてる思いがする。それは豆腐屋の軒を湯気になって流れる匂いのようなものであるし、打綿に初秋の日が射して、ほのかに、かげろうのような舞い立つ綿の匂い、あるいは駄菓子屋を走り出した女の子のさげ髪の匂いのようである。」

という文章で始まるのは、個人的に思い出深い「上御霊神社」。

続編もあります。ゆっくり読んで、ふらっと古都の町を散歩してみてください。

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京都、出町柳。駅近くの鴨柳アパートを拠点に活躍する「もじゃハウスプロダクツ」が製作するミニプレレス「House”n”landscape」の第2号が発売(540円)されました。「家と緑と、もじゃもじゃ」をテーマに植物が鬱蒼と生い茂る家を訪ねて、オーナーに話を聴くユニークな内容で、当店では人気のミニプレスです。(1号も在庫しています)

今回、最初に取り上げられているのは、レティシア書房の近くにある「cafe mole」(御幸町二条下がる)です。クスノキが茂るビルの奥にあるカフェで、犬の散歩で、店先は通りますが、通りからは、植物の枝や葉っぱで覆い隠されて、よく見えません。この特集のおかげで、ちょっとうす暗い店内は、ゆっくりと時間が流れているみたいで素敵な雰囲気がわかりました。

編集長はこの店へ突撃取材を敢行。それが記事になっています。店内から外を撮影した写真が掲載されていますが、森の奥からちょっと外の世界を覗いている感じです。リラックスできそうです。

次のインタビューは、「ちょっとずつ、もじゃもじゃになってます」という方の、野生と化しつつあるお庭とご自宅拝見記です。

「せっかくここまで野生化している訳ですし、庭だと思わず、植物の生息圏、人間の生息圏って言う風に割り切って、もっともじゃもじゃに」

との編集長の言葉には説得力があります。

最後に、現在ミニプレスを研究中の女子大生と編集長のやり取りが載っていますが、彼女は、当店で熱心にミニプレスをチェックしてくださるお客様です。面白いのがあるよと、この雑誌をご紹介しました。こうして、お客様と作り手の交流が始まるのは、書店冥利。とても嬉しいことです。

「京都旧市内の方言(いわゆる京ことば)、御所ことば、職業集団語等2000語を収録、見出し語にアクセントを付け、文例を示し、意味用法の把握につとめた」という「京都語辞典」(東京堂出版 昭和50年発行1000円)が入荷しました。こんな感じです

「オトンゴ(名)末子『あの子オトンゴヤし、甘やかしてイヤハルわ』 八瀬方面ではオトーとも」

「オヤカマッサン 辞去のときのあいさつ語」

「ハシタナイ・カワワタリ・セントキヤス (慣用語)女を変えて、またはお茶屋や場所を変えて遊ぶ客をたしなめることば。」

という具合に京都言葉が網羅されています。井之口有一、堀井令以知共編となっていますが、いやこれだけよく集めたものですね。まぁ、この本持っていたところで、利用できるかと言われば疑問ですが、独特の意味合いを持つ京言葉の奥深さというか、嫌みさをひしひしと感じる辞典です。

前に「チョチョコバってたんや。」と言って、「チョチョコバル?って何?」と関東出身の友人に笑われたことがありました。もちろん「かがむ・しゃがむ」という意味ですが、ちゃんとこの辞書は解説してくれていて、ほっとしました。例文には「そんなとこにチョチョコバって、なんのエー(絵)書いタハルの。」などとありました。改めて聞き返されると、時々、自分の使う言葉に自信がないときがあるもんで。あるいは北山は地名かとおもいきや、これ「接吻」の意味を持っているとか。「北山の衣笠にいた巫女が死んだ人を呼び出したり、口寄せしたところから出た隠語」と解説されています。へぇ〜、ほぉ〜と楽しめる本でもあります。

一緒にこんな京都本も入荷しました

ナカムラユキ「京都文具探訪」(KTC中央出版900円)   

木村衣有子「京都の喫茶店 昨日・今日・明日」(平凡社1100円)

近代ナリコ「京おんなモダン・ストーリーズ」(PHP900円)

こちらは実用性の高い優れた本ばかりです

誠に勝手ながら、レティシア書房は9月1日(月)〜5日(金)まで臨時休業させて頂きます。よろしくお願いいたします。

6日から、新刊アートブックフェア開催です。

 

 

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「花咲いて思ひだす人皆遠し

窓越しに、つぼみがほころぶアモンドの木を見ていたら、ふっと正岡子規の俳句が頭に浮かんだ」

という文章で始るこの本の著者は、日本人ではありません。京都工業繊維大学大学院で学び、日本建築史、日本庭園史をご専門にされる京都在住のエマニュエル・マレスさん。フランス人です。彼が「縁側から庭へ■フランスからの京都回願録」(あいり出版1296円)を出版しました。

「私がこれから書こうとしているのは「失われた京都」や「誰も知らない京都」というものではない。またフランスの芸術家や知識人が書く様な才藻奇抜に日本文化を描いたエッセイでもない。さらに言えば、日本に住んでいる外国人の自己啓発、現代的なサクセスストーリーでもない」

では、専門知識を総動員した専門書かといと、違うんですね。縁側に興味を抱き、「縁側の近代化ー夏目漱石の文学を通して」という博士論文を執筆する話から始まり、庭の魅力に取り憑かれていく様を、専門知識を織り交ぜながら、わかりやすい日本語で書かれています。各章の始まりで、読者の好奇心をくすぐる様な書き方が絶妙です。阪急電車のあずき色の車体の話からスタートしたり、谷口ジローの傑作漫画「坊ちゃんの時代」のワンカットを提示して、漱石と縁側の深い関係性に誘ったり。或は、いきなり鴨長明の「無名抄」の引用から始まり、古文は苦手だけどこの古風な世界が好き、なんて文章に出会うと、どんどん読みたくなってきます。足利義政とナウシカが一緒に出てくる「第九章腐界にてー植治の庭」なんて、面白すぎです。

このどんどんページをめくりたくなる気分は、たぶん、不思議で、様々な美を醸し出す京都の庭に魅かれて、知的好奇心の赴くままに一直線に学んでゆく著者のワクワクする気持ちと一緒に、ワクワクする楽しさを体験させてもらっているからかもしれません。

知らないこと、知るって楽しいよね、という当たり前の事を教えてくれる一冊です。

エマニュエルさんとは、少しお話をさせていただきましたが、魅力的な方でした。またゆっくりお話を聴きたいものです。

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全国の市営施設探訪を敢行するミニプレス「しのそのへ」は5号となり、ついに京都府特集です。で、探訪したところはというと、

京都市 京都市動物園 ・福知山市 日本の鬼の交流博物館 ・京丹後市 網野郷土資料館 ・亀岡市 篠共同浴場

の四施設です。

京都市内の方なら動物園くらいは行かれたかもしれませんが、他は未体験の場所ではないでしょうか。

開園110年を迎えた京都市動物園。私も何度も訪れた施設です。飼育されている動物にとっては住み心地良く、来園者には動物本来の姿が間近に観ることができる園に向かってリニューアルされています。ここにある小さな観覧車が、現在日本では二番目に古いなんて知りませんでした。(地下鉄東西線蹴上駅・東山駅徒歩10分)

「日本の鬼の交流博物館 」これには、驚きました。今にも動き出しそうな、地表にそそり立つ巨大な鬼瓦をはじめとして館内は鬼、鬼、鬼です。全国各地の鬼にまつわる民間伝承、伝統行事あるいは芸能など、様々な視点から鬼に関する資料が揃えられています。身近な存在の鬼ですが、実は知らないことだらけ。ということで、ここでお勉強しましょう。(北丹後鉄道宮福線大江駅前から市バス)

「網野郷土資料館」1946年建設された木津小学校。その後、統廃合により廃校にされたものが77年に、現在の施設として生まれ変わりました。かつて、この地で使われていた様々な道具や品物が収蔵されています。(北丹後鉄道木津温泉駅から徒歩3分)

今年3月末で営業を終了した「篠共同浴場」は、1937年、篠村村営浴場として、スタートして59年に村が亀岡市に統合されたあとも営業を続け、市民の憩いの場としても大事な浴場でした。こういう公営浴場って、全国各地で廃止になっているんでしょうな。そう思うと、夕暮れ時の浴場の写真には物寂しさを感じたりもします。この建物取り壊された後は何ができるんでしょうか?

「しのそのへ」は若い女性二人が、毎号訪問する県を決めて、取材して出来上がるミニプレスです。価格は500円。毎号ユニークですが、この京都号は、あっぱれ!よう、やった!というおひねりのつもりでワンコイン投げてくださいませ。

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「うちらの若おした時分は、鞍馬からあっち、人がどうにか通れるほどの杣道しか、おまへなんだ。花背のほうの女子の人らが、そこを背負うて、峠越えして、鞍馬まで売りに来てましたんやさかい」

というはんなりした京都弁のおばあさんと若い女性のお風呂での会話で始まる小説「明るい夜」(文藝春秋500円)を読みました。書いたのは黒川創。61年京都生まれ、同志社卒業の京都人です。出てくる場所が、木屋町界隈だったり、鴨川べりだったりで、日々見ている風景ばかりなので、リアルです。ヒロインがアルバイトを始める出町柳のパン屋も、あ〜あそこかと、店の雰囲気まで思い浮かびます。

フワフワと流れる日々の情景を点描しながら、家族、故郷への不確かな思いが書かれていきます。クライマックスは広河原で行われる火祭り。そして、ヒロインが、その祭りの終わった後に向かうのは、

「最初、高野川べりの道を上流へと走り出す。すぐに川と別れ、大学のある丘を、北に向かって越えていく」

ハイ。京都バスですね。「大学」とは京都産業大学だと思います。ここから、道中を含めて延々と広河原のことが描かれていきます。特に個性的な人物が登場するわけではありません。老いた犬と老夫婦だけです。とても和めるシーンばかりです。

確かに存在する、生きることへの思いが、ゆらゆらと立ち上ってくる小説で、その立ち上り方が東京でもなく、大阪でもなく、京都でなければ描けなかったのだと思います。

黒川創には「若冲の目」という、やはり京都を舞台にした小説(近日入荷)もあります。こちらも、読んでみたくなる一冊です。

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1705年に烏丸二条にて創業したお香屋さん「松栄堂」。その後、現在に至るまでの約300年間、この地でお商売をされてきた老舗です。その松栄堂広報室が「香りの手帖」という本を出していました。1986年講談社より出版された「香りの本」が91年福武書店より文庫として「香りの手帖」と改題して出版されました。その文庫を入手しました。

第一部は香りの世界史とでも言える「香りの文化史」で始まります。続いて、「香料のふるさとと香り」では日本の香料の歴史にふれていきます。第二部「香りをまとう」は実生活での香料の使い方で、生活が豊かなになるかを実践的に解説し、最終の第三部では、「香りの作法」と題して、仏事の香り作法、香道へのお誘いまで述べられいて、これ一冊で「香り」すべてが理解できるようになってます。「さすがに、老舗のお香やはんやなぁ〜」という本です。

京都本に括られる本は無数にあります。ご他分にもれず、我が店にも色々と入ってきます。どうでもいい本が多いのですが、おっ!と思わせる本もあります。

美術評論家でもある作家、白崎秀雄「北大路魯山人」(文藝春秋900円)。伝記小説という形を取りながら、北大路の生涯を描いていきます。さすが北大路を世間に知らしめた第一人者だけあって、細部まで書き込まれています。

かなり専門的になりますが、昭和36年発行の「三千家の茶室」(茶室研究会発行500円)。各家元の茶室を写真、図面を駆使して解説したものです。滅多に出ない本みたいで、高値が付いていますが、書き込みがあるために低価格で出しています。お茶の嗜みのある方はぜひご欄下さい。

やや、固い本になりましが、こんな本もいいです。杉本秀太郎(文)+甲斐扶佐義(写真)コンビによる「夢の抜け口」(青草書房900円)。ご存知甲斐さんの京都の何気ない表情を捉えた写真に、いかにもの京都随筆に陥ることなく、写真に寄り添う杉本の文章が優れた美意識を作り出している本です。

 

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「出町柳」と言っても、京都i以外の人でどれくらいご存知でしょうか。京阪電車終着駅があり、京福電車始発駅があるフツーの町。しかし、面白い店の広がる左京区の始まるところとして捉えると、また見方が変わってきます。そこに着目してできた雑誌が「気になる京都 あの店・あの場所」(800円)です。

先週、金曜日の夜のこと。この雑誌を一人で切り盛りしている太貫まひろさんが、出来立てホヤホヤのこの本を持って来店されました。最初は、この手のお店紹介の本なら在京出版社が出してるから、どうかな?と思いました。しかし、違いました。置いた翌日の土曜日、日曜日であっ!という間に完売でした。ということで、慌てた店主は見本として置いていた一冊に齧りつきました。

こりゃ、売れるわ〜と180度方向転換(この辺の切り替えの早さは、自分で言うのもなんですが抜群です。というか、最初にきちんと見てへんのか、と突っ込まれそうですが)して、10冊緊急追加仕入れいたしました。

さて、内容のご紹介です。第1章「出町桝形商店街とその周辺」。私もかつて出町近辺に住んでいたので、良く歩いた商店街です。大手出版社の観光ガイドには、商店街入り口にある和菓子屋「ふたば」さんしか取り上げられませんが、こちらはフツーの商店街をくまなく歩き回り、細かくレポートしてあります。フツーにお店を営業して、フツーに生活している人々のフツーの顔が見えてきます。

続いて紹介されるのは「出町柳で珈琲めぐり」。へぇ〜こんなにたくさん珈琲屋さんあったんだ、と気付かされ、そして、この界隈のお店紹介へとさらに続きます。時間がゆったりと流れるお店と町。本には「叡電で行こう おさんぽMAP」(叡電というのは京福電車の愛称です)が付いていて、これを片手に楽しい散歩ができそうです。

大手出版社の作るお店紹介誌面とどこか微妙に違います。情報てんこ盛りの雑誌からは伝わらない「優しい風」が吹いているとでも言いましょうか。この町を愛してやまない太貫さんの気持ちがこもっているからでしょうね。「あとがき」をお読みいただければお分かりいただけますが、この本の売り上げの一部は、故郷の東北復興支援に回されます。出町柳から、東北の美しい梅へとやさしい風は吹き抜けていきそうです。

現在「気になる京都」は「ガケ書房」さんとレティシア書房だけの「独占販売」です。あくまで、今のところですが。

ぜひ手に取ってみて下さい。

 

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