下着デザイナーで数々の著作で知られる鴨居羊子の、ホォ〜これは珍しいと思う本を入荷しました。

一つは、安岡章太郎著「ガラスの靴」(牧羊社/古書10000円)。限定500部A 4判型で、表紙にはポルトガル産のコルクシートを使用して、表紙を開けると、著者の直筆署名が入っています。そして、鴨居羊子による色彩画3点と白黒作品が16枚収録されています。犬が登場する絵が、たまらなく素敵なのです。この本の最終ページには、「1975 1.27 ガラスの靴第一号 鴨居羊子」と直筆の走り書きと自画像がサラリと描かれていました。限定本1番の本に記された鴨居のサインと絵なんてレアですね。

芥川賞候補にもなった安岡の小説は、ちょっと変わったお話です。アルバイトしている猟銃店の使いで米軍軍医の屋敷に行った僕は、一人で留守を守っていたメイドの悦子に出会います。彼女は退屈しているせいか、「僕」にお菓子を出したりして引き留め、ときどき遊びに来てくれるように懇願します。僕は悦子に魅入られていき危うさと哀しさが漂う二人の付き合いが始まります。二人の青春の脆さと無力さを、鴨居は犬を主人公にして描いています。

「何もきこえはしない。しかし僕は、それでも受話器をはなさない。耳タブにこすりつけてジット待つ。するとやがて、風にゆられて電線のふれあうようなコーンというかん高い物音が、かすかに耳の底をくすぐる。それは無論、言葉ではない。」

ラストの僕のモノローグには、死んでしまった犬を抱く青年が描かれています。

もう一点は「M嬢物語」(小学館/古書2000円)です。こちらは。写真とエッセイで綴られた鴨居の人形たちへの思いを綴った一冊です。

「私は小っぽけな人形を見ている間、ふっと黒馬物語を思い出していた。人形も黒馬と同じように、その流転は誰も知らず、こうして旅から旅へ、人から人へ、いつのまにかメキシコからまた日本へ。」と、流転してゆく人形への想いを文章にしています。鴨居のアトリエから生み出された多くの人形とともに、もちろん、素敵な彼女の絵がたくさん収録されています。

 

★レティシア書房年始年末のお休み 

12月29日(日)〜1月6日(月)

新年は1月7日(火)から通常営業いたします。ギャラリーは「本づくりへの願い 版木とともに」(by法蔵館)です。よろしくお願いいたします。

 

 

 

レティシア書房の3月は、2015年から毎年「棚からうさもち展」で春を迎えます。3度目となった個展も、初日からファンの方々で賑わっています。

うさもちさんは、お名前のとおり、羊毛でうさぎを作る作家さんです。感触がうさぎの持つもふもふ感にピッタリだというのは誰しも納得だと思いますが、その表現を追求していくのは容易な事ではありません。今回もうさぎへの愛情があふれた作品の数々が並びました。

アンティークレースの衣裳を纏って坐るうさぎさん(写真上)は、本屋のギャラリーに美しく静かな空気を運んできてくれました。思わず抱きたくなる白いうさぎ(写真右)は、体温までこちらに伝わってきそうにリアル。技術の高さ、確かさが、ただ可愛らしいというものから個性的な造形に飛翔していきます。どんなものでもそうでしょうが、一見可愛らしさだけが目を引く「ウサギ」も、きっと付き合っていると、そして観察していくと、キャワイイ!!って感じでは済まされない、生き物としての手強さがあると思います。今回初めて、小さな額縁の穴から、うさぎの「口」だけ、「目」だけが覗いている作品をみせていただきましたが、うさぎ作品の深さを感じました。

そして、昨年から新たに作りはじめてたという球体関節人形も初めて展示されました。クールな少女は、妙にうさぎの世界に溶け込んで白うさぎを枕に夢をみているようです。これからどんな世界が展開されていくか本当に楽しみです。

毎回人気のスクーターうさぎたち、卵の殻からちょこんと顔をだしている卵うさぎさん、いずれも残りわずかとなりました。楽器を手にしたうさぎたちは、前回からさらにパワーアップして演奏をしています。

うさもちさんの個展をして頂くまで、世の中にこんなに多くのうさぎファンがいらっしゃるとは知りませんでした。しかし、たまたまご来店になった中にも「実は好き」と言う方がおられたりと、けっこう表に出ない(?)うさぎ好きは多いようです。猫の次は、うさぎブームになるかも?

作品は、一部を除いて販売しています。コサージュも新しく加わりました。ポストカード(150円)も多くの種類が揃いました。ぜひあなたのうさぎさんを探しにお越し下さいませ。(女房)

棚からうさもち展「小さなうさぎの話」は4月2日(日)まで。最終日は18時まで。月曜定休日。

塗込められた壁から、顔と手指がわずかに出ている白いパネル。死と生の間で、想いを秘めているかのように静かに目を閉じています。

台にズラリと並んでいるのは、白い紙粘土で作られた、手足の長いひょろりとした裸体の人物。皆、仮面をつけています。生きているのか、死者の使いなのか、そして開けた口から吐き出されるのは、悦楽のため息か呪いか・・・妖しい沈黙は、標本のようです。映画「未知との遭遇」のラストに登場する宇宙人のような、ながい手足をだらりと伸ばしたまま浮遊しています。

顔の表情の面白さもさることながら、作品の後ろの壁に、投影された人形の影がまた面白く、かれらの思いを象徴しているようにも見えてきます。

 

作者の中西さんは、開店以来のお客様で、これが初めての個展になります。本についての深い造詣をお持ちの方で、週に一度は、当店の書架を眺めながら、いろんな本の話を聞かせてもらったことは、新米の古本屋にはとても有り難く、店の本の収集に役立たせていただきました。

それが、ある時から、パタッと来られなくなりました。久々に来られた際にお聞きしたところ、紙粘土での創作に励んでおられるというのです。毎週、大阪の古書店回りをされていたのも止めて、創作に専念とか。今回その作品の一部が並びました。

この人形たちが背負っている、業の深さや、哀しみや、ユーモアなどを感じるのは、作家の中に蓄積された膨大な本の森の奥から滲み出てくるものでしょう。

初めて創作された作品を、こうして眺められるのは、ギャラリーをしているものにとって、本当に幸せなことです。

★中西敦浩作品展9月22日(火)〜10月4日(日)最終日は午後6時まで