今江祥智/作、片山健/絵による「でんでんだいこ いのち」(童心社/古書900円)は、夏に読むのにピッタリの絵本です。

「あとひとけずりで おれのたいこのばちができあがる。この八月で十七になる、おれの手ェいっぱいのふとさのものだ。あとは、まっ白いふんどししめて、ぶたいにあがり、大だいこをうつだけだ。

心をしずめるために、目をつむる。と、おれの耳のおくから、みっつの音がゆっくりときこえてる…..。」

今、まさに祭りの舞台に上がろうとする少年の心に、遠い日の三つの音が蘇ります。一つ目は、北の海で漁師をしていたじいちゃんにまつわる音。じいちゃんは、入江に迷い込んだマッコウクジラを村人総出で解体します。その祝いの踊りの場で、持っていたクジラの骨を打ち鳴らします。

片山健が、迫力あるクジラたちの姿を力強いタッチで描いていきます。海岸から飛び上がるクジラの音が聞こえてきそうです。そのクジラたちに負けじとじいちゃんは骨を叩いているのです。

二つ目はとうちゃんの音です。花火職人だったとうちゃんは、戦争中、花火は打ち上げることはできません。繰り返される爆撃で、街は炎上します。その様にキレたとうちゃんは、爆弾が落ちてくる夜空に向かって、ありったけの花火を打ち上げました。とうちゃんなりの戦争への抵抗だったのかもしれません。その大花火の音が二つ目の音です。

三つ目の音は、でんでん太鼓の音です。6人兄弟の末っ子に生まれた、主人公の少年は、なかなかおもちゃも買ってもらえませんでしたが、ある夏祭りの日、そんな少年の手に、誰かがでんでんだいこを握らせたのです。

「でんでんだいこ、いのちーとおもうて、だいじにだいじにしとったもんな。いまも、ちゃあんともっとるとも。」

それら三つの音に背中を押されて、少年は舞台に上がります。

「ばちが、しあがった。ふんどしもしめおわった。ぶたいのまん中の大だいこだけが、あかりに、てらされてかがやいとる。」青年になった彼の凛々しい横顔。

絵本の最後を飾るのは、ふんどしを締めた少年が、今まさに大太鼓を叩こうとする後ろ姿です。クジラの音、花火の音、でんでん太鼓の音が重なり合って胸おどる音楽が聞こえてきます。みんなかっこいいです。大太鼓の音の高揚感を味わってください。

ところで、主人公にでんでん太鼓を渡したのは誰か? 胸がキュンとなりますよ。

★お知らせ 8月17日(月)〜20日(木)休業いたします。