生態学者ってどんなお仕事?本書の著者伊勢武史は、こう答えています。

「特定の生きものではなく、多くの生きものにとって普遍性な法則を探すこと、生きものの『機能』に着目し、多くの機能がからみ合って動いている自然界の成り立ちを考えることである。」

何十時間もかけてゆっくりと変化してゆく森林生態系を、研究対象にしている著者の研究は時間のかかるものなのです。「生態学者の目のツケドコロ」(ペレ出版/古書1200円)は、著者が、生態学を学ぶ過程で身につけた知識や経験をもとに、目前で起こっている事象を説明してゆく、人間も含めた生き物と環境の関係を一歩引いたところから見つめるものです。だから、生態学の歴史やら、理論やら教科書的な部分は全くありません。

「そもそも生物に『よい生物』や『わるい生物』なんてないと僕は思う。人間がある目的のために自然を利用してやろうと考えるときに、その人にとって『役立つ生物』『役立たない生物』はいるかもしれないけど、根本的に生物の存在そのものに善悪なんてない。いま日本で猛威を振るっている外来生物にもふるさとがあり、そのふるさとで生活するぶんには誰からも批判されたりしない。ところが人間がその植物を日本に持ち込んでしまったため、『悪者』として駆除の対象になってしまったのである。」

こんな風に著者は、「人と自然の関係って何だろう」という哲学的ともいえる命題に向かっていきます。「レジ袋有料化は環境にいいの?」「コロナウイルスとの向き合い方」「里山ってなに?」という科学者らしい話題の一方で、「琳派の描く植物」やら「京都のおもしろさ」といったトピックスもあります。肩の凝らない、それでいてしっかりした考えが身につく本です。

「生物学者である僕は、倫理的に何が正しいか言う立場にはない。言いたいのはただ、環境が人を変えるということ。環境に合った思考と行動ができる者たちが繁栄する。そして人間も、生物としてそのような柔軟性を持っているのだと思う。」

生態学的な視点を持つメリットを教えてくれます。

 

⭐️本の紹介をZOOMにてさせたいただく「フライデーブックナイト」。次回は9月17日(金)です。

⭐️北海道のネイチャーガイド安藤誠さんのトークショーを今年も開催します。

10月24日(日)19時スタート(2000円)要予約